血中コレステロールの高い方に、念のために

日野原重明が書かれた医療記事です。
コレステロール値が高いと言われた方は必見(必読)です。


最近はメタボリック症候群という言葉が流行し、太りすぎないように食事制限をしたり、体重測定や血中コレステロールを測定したりするよう勧められている。
体重測定は家庭で行うことができるので、体重計はどの家庭にも必需品である。
体重計と体温計と血圧計は、健康上の「三種の神器」ともいわれている。
体重は朝と晩とでは少し違うので、測定は朝か晩の一定の時間に決めておくべきである。

医師の診察時に、採血して血中コレステロール値を検査することはよく行われているが、医師から「コレステロール値が高いから脂肪の多い食事をとらないように」との注意を受けている人は少なくないと思う。

私が経験した例に次のようなものがあった。

50歳の女性で、ご主人の駐在先であるロンドンで長年暮らして日本に帰国したが、健診を受けたところ、「血中のコレステロール値が高いから脂肪の多い食事、バターなどは食べないように」と注意された。
そう言われた彼女は、英国風の食事は日本食より脂肪が多いためだと思い、帰国してからは日本食に切り換え、3か月後にもう一度血中のコレステロールを測ってもらったが、医師からは「相変わらずコレステロール値が高いので、もっと食事に注意し、コレステロールを下げる薬を服用するように」と言われた。

彼女は「私の診察を受けたい」と言ってこられたので、私は毎日食べた食事内容と体重表を持参するように言った。
血中コレステロールの非常に高い人は家系的に高い人もあるけれども、甲状腺機能亢進症またはバセドウ病の人によくあること。
彼女を診察したところ、これらの病気に特徴的な眼球突出はなく、首の甲状腺に触れても異常はなかったけれども、念のために甲状腺ホルモンとしてT3、T4を測ったところ、明らかに甲状腺ホルモン値が低下していることがわかった。

そこで私は彼女に、「あなたは甲状腺機能低下症なので、甲状腺ホルモン剤を毎日服用してください」と言って甲状腺ホルモン剤のチレオイド錠を処方した。そして「あなたは体が冷えるようなことはありませんか」と質問したところ、「実は私は冷え症なので熱いお風呂に1日2回は入っています」と言われたので、それも甲状腺機能低下症の症状の一つであると話した。

そのほか甲状腺機能低下症の人の中には、夜間十分に睡眠をとっていても、昼間も眠くなり、よく居眠りをすることがあるので、彼女にもそれを質問すると、「確かに自分もそうです」と答えた。

彼女に甲状腺剤を処方した1か月後に再診したところ、彼女はずっと元気になり、食事は普通にとっていても血液中のコレステロール値は正常になり、それまでの冷え性もなくなり、「家族からも最近とても元気になったと言われる」と話してくれた。

私のこの記事を読んだ方で、血中コレステロールの値が高く、医師から抗コレステロール薬を処方されているが一向に効果がないという人は、主治医のところへ行って、「私の高コレステロール血症は甲状腺機能低下によるものではないでしょうか」と尋ね、もしそうだとすれば、今までの治療法を改められることを忠告したいと思う。


出典 YOMIURI ONLINE ypmi.Dr. 2010.11.24
版権 読売新聞社

<私的コメント>
日野原先生の指摘は確かに、医師として忘れてはならないことです。
甲状腺疾患は女性に多い疾患です。
しかし、コレステロールの治療をする患者さんは、男女を問わず一度は甲状腺検査をしておくべきですね。
その他に尿に蛋白がたくさん出る「ネフローゼ症候群」も血中コレステロールが高くなることで有名です。

さて、文中に
「血中コレステロールの非常に高い人は家系的に高い人もあるけれども、甲状腺機能亢進症またはバセドウ病の人によくあること。」とあります。
しかし、これは明らかに間違っています。
甲状腺機能亢進症では血中コレステロールは低くなります。
要するに甲状腺機能低下症と逆になるわけです。

「彼女を診察したところ、これらの病気に特徴的な眼球突出はなく、首の甲状腺に触れても異常はなかったけれども、念のために甲状腺ホルモンとしてT3、T4を測ったところ、明らかに甲状腺ホルモン値が低下していることがわかった。」
という文章まで書かれているわけですから、日野原先生が明らかに間違っている(勘違いしている)ことを意味しています。
この内容からは、考えていたことと逆の結果が出て偶々(たまたま)甲状腺機能低下症が発見されたということになってしまいます。

著明な先生だけに残念です。



<自遊時間>
今朝のNHKテレビ「あさイチ」で「驚きマル秘パワー!”干し野菜超活用法”」を放送していました。
診察前の時間に少し観ていたのですが、ちょうど便通の話をしていました。
司会のアナウンサーが「べんの先生に解説していただきます。」と紹介したので思わず聞き耳を立ててしまいました。
登場した先生は「辨(べん)野」という先生でした。

<辨野先生 関連サイト>
うんち研究室 - 辨野先生に聞く!(第1回)
http://www.toilet.or.jp/iiunchi-labo/unchirsch200805.html

うんち研究室 - 辨野先生に聞く!(第2回)
http://www.toilet.or.jp/iiunchi-labo/unchirsch2008052.html


辨野特別研究室をヤクルトなど7社の資金により開設
http://www.riken.go.jp/r-world/info/info/2009/090331/index.html



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
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があります。