早期大腸がんを尿検査で発見

早期大腸がんを尿検査で発見 従来の方法より高感度

尿検査でがんを見つける方法を、東京都臨床医学総合研究所とバイオベンチャーのトランスジェニック(本社・熊本市)などの研究グループが開発した。
早期の大腸がんで6割以上の高率で見分けることができた。
血中のたんぱく質をはかる従来の検査に比べて感度が高く、体への負担もないという。
すでに特許を取得し、国内のメーカーと共同でがん検診用キットを開発している。

同研究所の川喜田正夫博士らのグループが開発したのは、尿に含まれる化合物「ジアセチルスペルミン」の量を抗体検査で調べる方法。
この化合物は細胞の増殖に関係している。
増殖する細胞で分泌されると、血液中をめぐって尿と一緒に排出される。がん細胞は増殖能力が高いため、体内にあると尿にこの化合物がより多く含まれるということは知られていた。

研究グループは、マウスの免疫細胞からこの化合物を特異的にとらえる抗体を作り出すことに成功。
この抗体を使って尿にある化合物の量を調べ、早期がんでも見分けられることをがん患者で確かめた。

その結果、大腸がんでは248人中75.8%をがんと判別。
粘膜や大腸壁にとどまる早期の段階でも6割以上のがんを見分けられた。
国内のがんによる死者の中で大腸がんは女性で最も多く、男性は3番目に多い。
大腸がん検査は、便の中に血が混じっていないか、血液中のたんぱく質CEA」の量を調べ、さらに内視鏡で確認する。
しかし、CEA検査はがんが進行しないと見分けにくく、早期がんを見分けるのが難しかった。
この検査方法は乳がんなどにも使えることがわかっている。
今後、ほかの早期がんの検査に使えるかどうかを調べる。
がんの治療後の経過観察や再発の有無などを確かめる検査にも使える。

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川喜田さんは「ジアセチルスペルミンはどんながんでも尿中で増える。
検査値が高いのに内視鏡検査で大腸がんが見つからない場合は、ほかの臓器にがんがある可能性がある。そうした検査への応用もできるだろう」と話す。
                              (坪谷英紀)
出典 asahi.com 2010.12.8
版権 朝日新聞社


<番外編>

唾液を調べ、がん発見 慶大研究所などが新技術開発

唾液に含まれる成分を調べ、がんを発見する技術を、慶応義塾大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)と米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)が共同で開発した。
唾液の検査は、X線や血液の検査より患者の負担が小さく、実用化されれば症状が出にくいがんの早期発見につながる可能性がある。

UCLAが、膵臓がん、乳がん、口腔がん患者や健常者ら215人の唾液を集め、慶応大がそれぞれのがんに特徴的な物質を探した。
検出された約500種類の糖やアミノ酸などのうち、膵臓がん患者はグルタミン酸の濃度が高いなど、健常者に比べ濃度が高かったり低かったりした54物質を特定した。

これらの物質の特徴を組みあわせた解析で、がん患者を対象に、がんが判別できる精度を調べた。
この結果、膵臓がんの99%、乳がんの95%、口腔がんの80%を見分けられた。
年齢や性別、人種の差は、あまりなかった。

膵臓がんは、早期段階では特徴的な症状がない上、他の臓器に囲まれているため見つけにくく、進行して見つかる場合が多い。
実用化のためには、がんと診断されていない人を対象にした試験や、唾液の状態による影響、早期がんの患者にも有効なのかの確認など、さらにデータの蓄積と検証が必要になるという。

この分野に詳しい静岡県立静岡がんセンター研究所の楠原正俊医師は「唾液のような液体に含まれる物質を一度に何百種類も分析できる方法自体が画期的。既存の血液による検査方法では早期がんの検出は難しい。早期がんが発見できるかに注目していきたい」と話す。
(岡崎明子)
出典 asahi.com 2010.6.29
版権 朝日新聞社




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