子宮頸がんワクチン 接種後も検診を

    

明けましておめでとうございます。
      平成二十三年 正月

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子宮頸がん ワクチン接種後も検診を 早期発見でほぼ100%回復

子宮頸(けい)がんは、性交渉で感染したウイルスが原因となるがんで、20歳代の若い女性にも起こることがよくある。
昨年末から国内でも感染を予防するワクチンが使えるようになり話題になっているが、たとえ発症しても検診で早期に見つかればほぼ100%治る。

埼玉県在住の主婦、Hさん(36)は、3年前に健康診断で子宮頸がんの前段階である「軽度異形成」と判定された。
軽度異形成だとがんに進行する確率は5%以下。
医師に「自然に治ることもある」と言われたため、それほど心配せず経過観察することになった。

出産後の昨年夏に受けた人間ドックの検査でも、結果は陰性だった。

ところが今年1月に市町村の集団検診を受けると、高度異形成になっていた。
この状態だとがんになる可能性が15~20%に跳ね上がる。
今は3カ月ごとに検査をして再び経過を見ている。
異形成からさらに子宮頸がんが見つかるまで数年~数十年かかるので、定期的に検査さえ受けていれば、がんになる前に見つけて取り除けるためだ。

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検査わずか10分
子宮の入り口(頸部)にできる子宮頸がんは、初期段階ではほとんど症状がない。
進行するにつれて血や褐色の粘液が出たり、いやなにおいがしたりする。がんが子宮の外に飛び出し骨盤内に広がり始めると、腰や下腹部に痛みがあり、最悪の場合、全身に転移する。

がんの成長がゆっくりなため早期発見できれば回復は期待できる。
社会保険相模野病院婦人科腫瘍センターの上坊敏子センター長は「少なくとも2年に1度検診を受ければ、一度見逃したとしてもがんになる前に見つけられ、死ぬことはない」と説明する。

前がん段階も含め、検査では子宮頸部の粘膜を綿棒で軽くこすって細胞を採取し、顕微鏡で観察する。
わずか10分程度ですみ、痛みもほとんどない。

「上皮内がん」と呼ぶ初期に見つかれば、ほぼ100%治る。
国内では子宮頸がんの約半数が上皮内がんで見つかるという。
検診のほかに、妊娠やほかの病気で婦人科で診てもらったところ、たまたま見つかるケースも少なくない。

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日帰り手術可能
上皮内がんの大半が子宮頸部だけを円すい状に取り除く処置で治る。
手術は10~20分で日帰りでも対応できる。手術後には妊娠・出産も可能だ。

ただ、がんが3ミリメートル以上粘膜の中に入っている場合は子宮を摘出することになる。
がんの広がりが大きければ子宮の周りの組織やリンパ節も取ってしまうので、排尿がしにくくなったり体がむくんだりするといった後遺症が出ることもある。
さらに進行すると放射線治療と化学療法を組み合わせる。高齢の女性では婦人科にかかる機会が少ないため、発見が遅れるケースが多い。

子宮頸がんの原因は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」で、性交渉で子宮頸部に感染し、ごく一部ががんを作る。このウイルスは男性にはほとんど病気を起こさない。
女性の8割が生涯に1度は感染するといわれるが、うち9割では感染から2年以内に体の免疫作用によって自然消失する。
1割の人は長期間感染が続くが、子宮頸がんを発症するのはそのうち1%以下とされる。

昨年12月にはHPV感染を防ぐワクチンが登場した。
約100種類あるHPVのうち、子宮頸がんの原因の6~7割をしめる16型と18型の感染を防ぐ。
性交渉前でまだ感染していない11~14歳くらいの女児に接種をすると効果的で、国内の12歳の女児全員に接種した場合、子宮頸がんの発症を7割以上抑えるといった研究報告もある。

ただ、ワクチン接種には5万~6万円かかり、普及への課題はつきない。
「子宮頸がん予防ワクチン接種の公費助成推進実行委員会」の共同代表を務める財団法人癌研究会の土屋了介顧問は「接種費用が高額だと接種できる人とできない人が出てきて不公平」と公費負担を求めている。

HPVの感染を防ぐもうひとつの手法がコンドーム。コンドームの着用でHPV感染の約8割が防げるという。

子宮頸がん対策では今後、HPV感染を防ぐ別のワクチンも発売される見通し。
選択肢は増えるが「ワクチンはすべてのHPVを防御できない。ワクチンを接種していても検診は欠かせない」(上坊センター長)。
性感染症に詳しい聖路加看護大学の堀成美助教も「子宮頸がんはワクチン、コンドーム、検診を組み合わせて防いでほしい」と話している。

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(長倉克枝)
出典 日経新聞・夕刊 2010.5.23
版権 日経新聞



どんなワクチンも「光と影」があります。

子宮頸がんワクチンで副作用、失神多発

子宮頸がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。

接種者の大半が思春期の女子で、このワクチン特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。
同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。

子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。
昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。
最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。
その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。

出典 YOMIURI ONLINE 2010.12.28
版権 読売新聞社

<私的コメント>
失神と意識消失の違いについて補足します。

失神とは
大脳皮質全体あるいは脳幹の血流が瞬間的に遮断されることによっておこる一過性の瞬間的な意識消失発作である。
通常は数分で回復し、意識障害などの後遺症を起こすことはない。
通常、失神が起こる前に、目の前が真っ暗になる感じや、めまい感、悪心などがあり、その後顔面蒼白となり、ついに意識が消失する。
http://ja.wikipedia.org/wiki/失神
http://www.webdoctor.ne.jp/cgi-bin/WebObjects/101adef4170.woa/wa/read/1029015dfd8/index.html%253Fpast=wdp.html
http://merckmanual.jp/mmhe2j/sec03/ch023/ch023b.html
http://www.aurora-net.or.jp/life/heart/saizensen/86/index.html
(このサイトでは『一時的に意識消失をし、自然に意識が回復するものを広義の失神と言います。その中で、一時的に脳に血液が十分いかなくて、意識消失するものが狭義の失神』と定義しています。)

「一過性に意識消失をきたす状態を失神(俗にいう気絶)」と定義するなら「意識消失」は「失神より長い時間意識のない状態」ということになります。
結局医学的な区別ははっきり出来ません。
「意識消失」はあまり医学用語ではないようです。
厚生労働省やこの記事を書いた記者はどのように区別をしているのでしょうか。
「意識消失」には重症例も含まれている可能性があり、このあたりが気になるところです。

他に「意識障害」という言葉があります。
この言葉は医学用語であり、「物事を正しく理解することや、周囲の刺激に対する適切な反応が損なわれている状態」すべてを指す総括的な表現です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/意識障害


他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
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「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
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http://blog.m3.com/reed/
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があります。