帯状疱疹 早めに治療

帯状疱疹

寒くなり、体の免疫力が落ちるこの時期、高齢者を中心に帯状疱疹に気をつけたい。
長年、眠っていた水ぼうそうのウイルスが再び悪さをし、体の左右どちらかに痛みを伴ってたくさんの赤いぶつぶつが出てくる。
抗ウイルス薬の投与で比較的楽に治るが、対応が遅れると痛みだけが長く残ってしまうケースもある。
発症頻度や病態など不明な点もあり、将来のワクチン導入に向け、専門家による大がかりな調査も進む。

香川県小豆島。
50歳以上の住民の8割にあたる約1万2500人が参加して、2年前に大規模追跡調査がスタートした。

参加者に対し月1回、「この1カ月、ピリピリ、チクチクした痛みのあるぶつぶつは出ませんでしたか」「周りで水ぼうそうにかかった人はいましたか」などの質問を電話でし、一部には、帯状疱疹に対する免疫の有無や、その程度をみる検査も実施する。

11月現在、確定診断ベースで発症率が年1.1%で、女性が男性よりも1.39倍発症しやすいことがわかった。
また、免疫の有無でみた場合、陰性者の発症リスクは陽性者の約5倍だった。


免疫力落ち発症
この追跡調査の代表者である医薬基盤研究所の山西弘一理事長は「発症率は米国のデータとほぼ同じだった。また、加齢に伴って免疫が落ちてきて、発症しやすくなるようだ」と話す。
さらに調査を続け、より詳細な分析結果を2012年度までにまとめる計画だ。

帯状疱疹は高齢者を中心に年間50万人前後がかかり、一生のうちに5~7人に1人が発症するともいわれている。
原因は水ぼうそうウイルスで、子どものころに感染し、ほとんどの人が持つ。
主に背骨近くにある神経細胞のかたまり(神経節)にじっと潜んでいるが、加齢や病気、過労などで体の免疫力が落ちてくると、再び活動を始める。
神経節の神経に沿って体の片側で皮膚や神経を攻撃する。

まず、体の左右どちらか一方に、痛みが出てくる。ひどい肩こりや腰痛を連想させる、睡眠を妨げるほどの強い痛みであることが多い。
しばらくすると痛みのある場所に、かゆくない赤いぶつぶつが発生、水ぶくれになって帯状に広がっていく。
たいていの人はこの段階でおかしいなと気づき、皮膚科にいく。

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放っておいても発症後1~2週間をピークに、1~2カ月で治る。
ただ、顔や頭にできると視力障害や顔面神経のまひが残ることもあるため、すぐに医療機関で診てもらう必要がある。

原因ウイルスが増えるのを防ぐ抗ウイルス薬を投与して治療する。
大半は内服薬を使うが、体全身に症状が出るなど重症の人には、入院して点滴をすることになる。

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東海大学の小澤明教授(皮膚科学)は「高齢化社会の進展とともに、今後も患者数は増えるだろう。治療法は確立しており心配はいらない。帯状疱疹にかかるのは体が弱っている証拠。風邪をひいたと思ってゆっくりと休息をとるのがよい」とアドバイスする。

まれに皮膚の症状が治まったあとも、帯状疱疹後神経痛といって激しい痛みだけが残る。
65歳以上の高齢者に多く、痛みが1年以上続くこともある。
赤いぶつぶつが出た後に72時間以内に抗ウイルス薬で治療をすれば、半年後の帯状疱疹後神経痛の発症率は半減するとの研究報告もあり、こうした後遺症回避の点からも早期の治療が欠かせない。


米はワクチン推奨
米国では60歳以上を対象にワクチン接種が推奨されている。
約4万人を対象とした比較試験で、帯状疱疹の発症を半減でき、帯状疱疹後神経痛も65%下げることができることが分かったからだ。

国内でも帯状疱疹に詳しい一部の医療機関に相談すれば、1万円前後で水ぼうそうワクチンを打ってもらうことは可能だ。

「ワクチン後進国」とやゆされる日本で、主に高齢者を対象にした予防接種はインフルエンザと肺炎ぐらいしかない。
欧米のように帯状疱疹もワクチン接種の対象にすべきだとする声はまだ小さい。

ただ、山西理事長は「帯状疱疹の治療費は結構高い。小豆島研究できちんとした科学的データを集め、ワクチン接種の是非を議論していきたい」と話している。
編集委員 矢野寿彦)
出典 日経新聞 Web刊 2010.12.17
版権 日経新聞




アルツハイマー認知症治療薬、2種を追加承認

厚生労働省の薬事・食品衛生審議会薬事分科会は24日、アルツハイマー認知症の治療薬として、新たに2種類の承認を決めた。

早ければ来春にも使用できる見通し。

追加されたのは、軽度~中等度の患者向けの「レミニール」(成分名ガランタミン)と、中等度以上の患者向けの「メマリー」(同メマンチン)。
国内にはエーザイの「アリセプト」(同ドネペジル)しかなく、患者や医療機関から早期導入の要望が出されていた。

<私的コメント>
この病気の方や家族にとっては久しぶりの朗報です。
アリセプト」は副作用として胃腸障害(吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛など)が多くて服用出来ない方もみえます。
3mgから始めて5mg、ないしは10mgと増量しますが、3mgは「ならし運転」の量です。
当院でも「3mgは服用できるが5mgは服用出来ない」という方がみえます。
厚労省は3mgでの継続は認めていないため、止むなく中止しました。
「改善はしないが進行を遅くする」というタイプの薬剤のため、著効したというケースは正直多くありません(個人的体験)。

ドネペジル:アリセプト
http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se11/se1190012.html
のサイト
には以下のように記載されています。
●軽度~中等度のアルツハイマー病の患者さん268人を対象とした二重盲検比較試験がおこなわれています。
実薬群116人(この薬を飲む人)とプラセボ群112人(にせ薬を飲む人)に分けて、効き目を検証する試験です。
症状が改善(「改善」以上)した人は、実薬群で20人(17%)、プラセボ群で14人(13%)でした。
また、悪化した人の割合は、実薬群で20人(17%)、プラセボ群で48人(43%)でした。
(私的コメント;これが「改善はさせないが進行を遅らせる」という薬効の根拠のようです)
認知症の進行度が中程度までなら20~30%ぐらいの有効率があるとされ、症状を数カ月~1年ほど前の状態まで回復できます。




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