帯状疱疹、広がる選択肢

帯状疱疹、広がる選択肢 腎機能低い人ものみやすい新薬

痛みを伴い帯状に発疹や水ぶくれができる帯状疱疹
重症化すると、発疹が治まっても激しい痛みが続くこともある。
1日1回のめば良い新たな薬が昨年、承認された。
50歳以上には予防ワクチンの接種もできるようになり、治療や予防の選択肢が広がっている。

ある女性(57)は昨年12月、右頬に押さえつけられるような痛みを感じた。
口の周りに発疹ができ、頭痛もした。

別の病気で通院していた、某大学病院の皮膚科を受診すると、帯状庖疹と診断された。
医師は、抗ウイルス薬・アメナリーフ(一般名アメナメビル)を処方。
1日1回2錠を1週間のむと、 発疹は広がらずにかさぶたになり、10日ほどで治った。
「思っていたよりも早く治ってほっとした。薬も1日1回で楽だった」と女性は話す。

帯状態疹は、水痘帯状疱疹ウイルスによって起こる。
このウイルスに初めて感染すると水ぼうそうになり、全身に発疹ができる。
発疹が消えた後もウイルスは体内の神経の根元に潜み、加齢や強いストレス、疲労により免疫力が落ちると再び活発になり発疹などを引き起こす。

患者は50歳ごろから増え、60~70代が多い。
80歳までに3人に1人が発症するとされる。

水ぼうそうにかかったことのある人はだれでも発症する可能性がある。
 
発症すると胸や背中、顔など体の片側の一部にヒリヒリとした痛みが出て、数日後に赤い発疹や水ぶくれが帯状に出る。
治療には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を使う。    

従来の薬は、1日3回2錠ずつのむタイプで、成分が腎臓を通って尿から排出される。
腎臓の機能が落ちた人に使う際は薬の量を調節する必要があった。
 
女性がのんだアメナリーフは昨年7月に承認された新しい薬。
ウイルスが増える際に必要な酵素の働きを妨げて増殖を抑える。
1日1回2錠でよく、主に肝臓で代謝され便として排出されるので、腎機能が低くても薬の量を調節する必要はない。
腎臓の血流低下を起こすことがある痛み止めの薬との併用もしやすい。   

患者さんの負担が減り、のみ忘れも少なくなる。
高齢者は腎臓の機能が低下している人も多く、治療の選択肢が広がった。
 
発疹が治まっても、炎症によって神経が傷つき、痛みが慢性化することがある。
「帯状庖疹後神経痛」と呼ばれ、高齢者や皮膚の症状が重い人ほど痛みが残りやすい。
長いと1年以上続き、夜眠れないほどの痛みや服が肌に触れるだけで感じる場合もあるという。
 
早く治療を受ければ、重症化したり神経痛になったりしにくくなる。
体の片側に普段と違う痛みが続き、発疹が出てきたら早めに皮膚科を受診したい。

50歳以上 予防接種も
予防に向けた動きもある。
厚生労働省は2016年3月、主に子どもの水ぼうそう予防に使われてきたワクチンの効能に、50歳以上に対する帯状庖疹の予防を追加。
患者の多い50歳以上の人が、予防接種できるようになった。
 
専門家によると、大半の大人は水ぼうそうの予防ワクチンを打ったことがなく、自然に感染しており、ワクチンの効果が期待できるという。

同様のワクチンが販売されている海外のデータでは、ワクチンを接種することで、帯状庖疹の発症を半分ほどに抑えられる。
発症しても、後に帯状庖疹後神経痛になるリスクを6割ほど下げられるという。
 
ただし接種にかかる費用は自己負担で、1回8千~1万円ほど。
抗がん剤ステロイド免疫抑制剤をそれまでに使い、免疫が下がっている人には打てない。
 
ワクチンを打つことで、たとえ発症しても症状が軽く済む。
痛みや後遺症のことを考えれば、50歳になったら接種を検討したい。
 
ワクチンは、皮膚科や内科などの医療機関で接種できる。
希望する場合は、かかりつけ医に相談するとよいという。   

参考・引用
朝日新聞・朝刊 2018.2.14