帯状疱疹、高齢化で増加確実 ワクチン定期接種検討

帯状疱疹、高齢化で増加確実 ワクチン定期接種を検討

赤くて痛い発疹で知られる帯状疱疹は、高齢化で増加が確実視されている。
昨年承認された予防ワクチンについて、国は成人の定期接種の対象にするか検討を始めている。
この病気について今どんなことを知っておくべきか。
 
ぴりぴりする痛み
 東京の女性会社員(54)は2年前、額の右側に痛がゆい水ぶくれが複数でき「虫刺されかな」と皮膚科を訪ねた。
だが診断は帯状疱疹
抗ウイルス薬の服用と塗り薬を1週間ほど続け、痕も残らず治ったが「もっと年配の人の病気と思っていた。まさか自分がと驚いた」と振り返る。
 
ぴりぴり、ちくちくする痛みが続き、その後、頭部や腹部など、体の左右どちらかに赤い帯状の発疹ができる。
これが典型的な帯状疱疹
80歳までに3人に1人が経験するというが、症状は個人差が大きい。
 
原因は水痘・帯状疱疹ウイルス。水痘とは水ぼうそうのことで、感染すると水ぼうそうとして発症するが、それが治った後、ウイルスは神経節に潜んで休眠状態になる。

その後、加齢やストレス、疲労などで「細胞性免疫」と呼ばれる免疫力が低下すると、潜伏ウイルスが再活性化し、帯状疱疹として現れる。
全国統計はないが、香川県の小豆島で平成24年までに行われた大規模疫学調査によると、50歳以上で年間100人に1人余りが発症すると分かった。
 
細胞性免疫
帯状疱疹のリスクがある水痘の既感染者は成人の9割を超す。
細胞性免疫は50歳ごろから低下するため、高齢化が進めば患者はますます増加する。
 
帯状疱疹で厄介なのは、発疹は治っても神経の損傷が残り、帯状疱疹後神経痛(PHN)が少なくないこと。細胞性免疫が低下するとPHNになりやすく、症状も重いと分かった。
日本で今後、帯状疱疹が増えると予想される背景にはもう一つ要因がある。
26年10月から子供の水痘ワクチンが定期接種になり、それまで毎年約100万人発生していた患者が激減したのだ。
 
子供で水痘が流行していると、既感染の成人の免疫が刺激され帯状疱疹の発症が抑えられる、という有力な仮説がある。
実際、一部の研究で、水痘の患者が多い時期は帯状疱疹が少ないと報告されている。

これが全国的な傾向なら高齢化に伴い帯状疱疹はさらに増えるはず。
すでにその兆候はあるとみる医師もいるが、長期的には十分考えられるが今はまだ、そのために増えているとは言えないとする専門家もいる。
 
受診遅れで悪化
帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の登場で大きく進歩したが、早期の治療開始が不可欠。
発疹が出て3日以内の服用が望ましいとされるが、受診が遅れ悪化するケースも多い。
そこで「ワクチンで予防」という考えが出てくる。
 
水痘ワクチンは昨年3月「50歳以上の帯状疱疹予防」の効能が追加されたが、接種費用は自己負担。
米国で販売されている同等のワクチンでは、接種後少なくとも3年までは帯状疱疹を半減させたとのデータがある。
持続期間や、年齢による効果の違いなどが、定期接種導入への検討ポイントとなりそうだ。
 
参考・引用
産経新聞 2017.6.20


<細胞性免疫・関連サイト>
細胞性免疫と液性免疫
http://ruo.mbl.co.jp/bio/product/allergy-Immunology/article/Cellular-immunity-Humoral-immunity.html
・獲得免疫は、活躍するヘルパーT細胞の種類や作用の仕方によって、さらに「細胞性免疫」と「液性免疫」に分けられます。

体液性免疫と細胞性免疫の違い
http://benesse.jp/teikitest/kou/science/biology/k00629.html
体液性免疫…体液中の抗体がはたらいて抗原を排除する免疫
細胞性免疫…細胞が直接はたらいて抗原を排除する免疫