免疫力アップでがん予防

免疫力アップでがん予防

戦前と戦中、日本人の死因のトップは結核だった。
しかし、2016年の死亡数は1889人で、死因順位では28位に過ぎない。
結核による死亡が減ったのは「ストレプトマイシン」のような抗生物質が普及したからではない。
栄養状態が改善して免疫力がアップし、結核にかかる人が激減したことが主な原因と思われる。

私的コメント
このことについては異論も多いかと思います。

結核に代わり、戦後しばらく日本人の死因のトップだった脳卒中も1970年代以降は減少に転じる。
これも、喫煙率の低下、減塩などの他、十分な動物性タンパクの摂取によって血管が強くなったことが背景にあると思われる。

私的コメント
このことについても異論が多いかと思います。

結核脳卒中は「途上国型」の病気といえるだろう。
 
一方、がん死亡は戦前から現在にいたるまで一貫して増え続けている。
81年には死因のトップに躍り出て、16年の死亡数は37万2986人と、85年の約2倍になった。
現在、がんは死因全体の3割を占め、2位の心疾患の約2倍、3位の肺炎の約3倍にも上る。
 
がんの急増の理由は急速な高齢化にある。
がん細胞は遺伝子の「経年劣化」によって、正常な細胞が不死化したものだ。
毎日体内に発生するがん細胞は年齢とともに増えていくが、免疫細胞が未然に撃退している。
これを「免疫監視機構」と呼ぶが、免疫力も年齢とともに衰えていく。
サッカーに例えればキックオフとともに相手の選手の数が増え、見方の守備力が疲弊していくようなものだ。
がんは一種の老化といえる病気だから、年齢とともに急増する。
 
男性は生涯でがんになる人の割合は6割を超えるが、55歳までは5%程度にすぎまない。
しかし65歳までだと15%、75歳まででは3割以上となる。
定年前後からがんのリスクが急増する。
 
国民病ともいえるがんだが実は、年齢構成をそろえた「年齢調整死亡率」は90年代後半から減り続けている。
もっとも人生100年を見据えて長く働く時代だから、「高齢化の影響を除けば、昔よりがん死亡は減っている」といってもナンセンスだ。
 
昔より遠くなったセカンドライフをハッピーにするためにも、がんを防ぐことが大事になっている。

参考・引用
日経新聞・夕刊 2018.5.23
(執筆 東大 中川恵一准教授)