乳がん急増、背景に少子化

乳がん急増、背景に少子化

乳がんの5年生存率は9割を超える。
ピークが30代の子宮頸がんとともに、乳がんは若い世代に多いがんの代表だ。

がんは加齢による細胞の老化といえる病気のため、年齢を重ねるにつれて患者数が増える。
ところが乳がんの場合、加齢以上にリスクを高めるのが女性ホルモンの存在
で、生理がある時期にリスクが高くなる。
40代から50代に乳がん発症のピークがあるのは、そのためだ。
 
国立がん研究センターによる2017年のがん罹患者数の予測値では、年間で約8万9100人の女性が乳がんと診断され、約1万4400人が乳がんで亡くなるとされた。
死亡者数はこの30年で3倍に増えた。
女性の11人に1人が乳がんになる計算だ。

乳がんが急増した背景には近年の少子化があると考えられる。
妊娠から授乳に至る約2年間は生理が止まるため、乳がんリスクが下がる。授乳が乳がんを予防する効果を持つことも確視されているから、子供を産み、母乳で育てる女性ほどリスクが低くなるといえる。
 
47都道府県で乳がんが最も多いのは東京都で、最低の鹿児島県の2倍以上だ。
東京の出生率が全国最低であることに関係があると思われる。
 
がんの早期発見のカギは定期的な検診で、乳がんは2年に1度のマンモグラフィーが基本です。
しかしそれ以上に大切なのが自己触診で、乳がんが発見される契機の半分以
上が自己触診といわれる。
これらのセットを欠かさないことが乳がんから身を守るために一番大切なことなのだ。

執筆 東京大学病院・中川恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2018.9.19