目的に沿う適切な「がん検診」を

目的に沿う適切な検診を

福島第1原発の事故から9年が経過した今、県民の被ばく量が非常に低いことが分かっている。

しかし、子供の甲状腺がんが200人を超えて増えつづけている。

もともと子供たちが持っていた「無害な」甲状腺がんを、精密な検査によって発見している「過剰診断」が起こっていると思われる。

コメント;

執筆者は、原発事故が起こった直後から、近隣住民の被ばく量が非常に低いことを唱え続けて来られました。

このことが批判されたこともありました。

 

甲状腺がんの過剰診断は韓国でも問題になった。

予防医学を重視する韓国政府の方針で、乳がん、・子宮頸がん、大腸がん、肝臓がんを対象にした政府主導のがん検診が1999年から始まった。

このとき、乳がん検診のオプションとして、3000~5000円程の追加料金を支払えば、超音波による甲状腺がん検診も受けられることになった。

 

乳がん検診は専用のレントゲン撮影装置であるマンモグラフィーで実施するのが基本だ。

しかし、韓国では、乳がん検診で超音波検査を使う医療機関も多く、そのついでに甲状腺も検査するというものだ。

 

がん検診のプログラムが始まると甲状腺がんの発見が急増しました。

2011年にはがん検診開始前の93年に比べて約15倍にまで増え、12年には女性のがんの約3分の1が甲状腺がんとなりました。

甲状腺がんが女性に多い傾向は日本でも同じですが、甲状腺がんは女性のがんの3%にも満たない少数派です。

 

一方、韓国の甲状腺がんによる死亡率は、発見数の急増に反して、下がらなかった。

もともと、このがんで亡くなる人がほとんどいないからだ。

しかし、韓国では、この「過剰診断」に対する科学者の警鐘をテレビや新聞が大きく取りあげ、「アンチ過剰診断」キャンペーンといった動きが進みんだ。

その結果、甲状腺がん検診の受診者数はピーク時から半減し、高齢化の要素も加味した「年齢調整罹患率」も激減している。

甲状腺がんの年齢調整罹患率は、ピークとなった12年は99年の12倍に上ったが、16年ではピークの6割まで急降下した。

まさに、ジェットコースターのようなアップダウンだ。

 

がん検診の目的はがんによる死亡を減らすこと。

「早期発見=善」ではないということを韓国に学ぶべきだろう。

(執筆 東京大学病院・中川恵一准教授)

 

参考・引用一部改変

日経新聞・朝刊 2020.3.18

 

<関連サイト>

http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-adcf.html

 

http://www.u-tokyo-rad.jp/data/twittertoudai2.pdf

 

http://www.enercon.jp/topics/7944/?list=article

 

http://agora-web.jp/archives/1615965.html

 

https://www.iwanami.co.jp/book/b265959.html

 

https://www.youtube.com/watch?v=zsp69QImZbc