女性は乳房の自己触診を
乳がんは自分で見つけることができる病気だが、「自己触診」の重要性は意外と知られてない。
乳がんの約8割はゆっくり進むタイプだが、残りの2割は急激に進行する。
進行が速い場合、年単位で行う検診では追いつかない。
その点、いつも触診していれば、しこりを察知し、それが大きくなる様子も分かる。
触診で大事なのは、自分の乳房の自然な状態を知っておくことだ。
閉経後の女性は毎月の日にちを決めて、生理のある人は出血が終わって4、5日ほどたった後に触診するとよい。
ベッドに寝た状態で、指の腹で乳房をまんべんなく触り、異常がないかを調べる。
入浴中にせっけんを手につけ、滑りをよくしてから行うのもよい。
脇の下のチェックも忘れないようにしよう。
乳がんができやすいのは左右とも脇の下に近い「外側上部」で、全体の約半分がこの位置にできる。
場所を問わず、がんが進行しても痛みはない。
がん細胞は分裂する速度が非常に速いため、細胞の密度が高くなる。
がんを英語でカニやかに座を意味する「キャンサー」と呼ぶのも、古代ギリシャの医聖ヒポクラテスが、進行した硬い乳がんをカニの甲羅になぞらえて「カルキノス(カニ)」と名付けたことに由来する。
レントゲンなどがなかった江戸時代は、がんといえば目で見て触れる乳がんで、「乳岩」と表記されることもあった。
早期の乳がんは触るとパチンコ玉、やや進行すると大きめのビー玉のように感じる。
直径5ミリメートル、同1センチ、同2センチと大きさの違う木製の玉で乳がんの硬さと大きさを表す啓発用ツールもある。
乳がんのため34歳で命を落としたフリーアナウンサー、Kさんのブログにもこうつづられていた。
「息子と遊んでいたときのこと、何気なく、胸元から手を入れて、左の乳房を触りました。どきっ。いきなり本当にパチンコ玉のようなしこりに触れたのです」
Kさんの場合、病院に行くのが遅れ、がんが進行してしまった。
もし気になる感触があったら、すぐに専門医を受診する必要があるのは言うまでもない
執筆 東京大学病院・中川恵一 准教授
参考・引用一部改変 日経新聞・夕刊 2018.9.26