乳がん早期発見、超音波活用探る

乳がん早期発見、超音波活用探る マンモグラフィーと併用で効果の報告

乳がんはごく早期に発見し治療すれば、9割程度は再発しないといわれている。
国はこれまでマンモグラフィー(乳房エックス線撮影検査)などを推奨してきたが、日本人は40代でも乳腺が発達している人が多く、マンモグラフィーでは見つけにくい例もある。
超音波検査との併用で発見率が上がるとの研究が報告されるなど新たな動きも出ている。 

がん検診への関心が高まっっている。
きっかけは、元女子プロレスラーでタレントのHさん(48)が今秋、乳がんを公表して手術を受けたこと。「違和感がある。心配になって」と検診を申し込んだ女性が増えたという。

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乳房は母乳をつくる乳腺と、母乳を運ぶ乳管、それらを支える脂肪などからなる。
乳がんの多くは乳管から発生する。
女性がかかるがんでは最も多く、毎年約8万人が発症する。
日本女性の12人に1人が生涯に乳がんを患うという。
30代から増えはじめ、40代半ばにピークを迎える。
50代半ばにも、もう一つのピークがあるという。
 
国は40歳以上の女性に対し、視触診とエックス線で乳房を調べるマンモグラフィー検査を2年に1度受けるよう推奨。
これをもとに各市町村が独自に乳がん検診を実施している。
マンモグラフィーは50代以上で死亡率の減少効果があるとされる。
一方、視触診は厚生労働省の専門家会合が2015年9月、有効性などの問題から推奨しないと提言した。
視触診を検診から外す自治体も増えつつあるという。

マンモグラフィーは乳房を斜めに挟んで薄くのばしてエックス線写真を撮る。
乳管の内側にできた「石灰化」と呼ばれる乳がんの早期の状態を見つけることができる。
ただ、この検査も万能ではない。
乳腺が発達した「高濃度乳腺」の人では小さながんが乳腺にまぎれて発見しにくいという。
 
特に乳腺が集まっている乳頭近くなどが見つけにくい。
日本人は40代でも高濃度乳腺の女性が多く、50代以上に比べると、有効性は十分ではないという。
宮城県のデータによると、マンモグラフィーのがんを見逃さず正しく診断する「感度」は50代が約86%なのに対し40代は約71%にとどまる。
 
こうしたマンモグラフィーの弱点をカバーする手段として注目されているのが、超音波検査(エコー)だ。微小な石灰化は見つけにくい半面、乳腺が多くても対応できるのが利点だ。
 
マンモグラフィーと超音波を併用すれば、早期乳がんの発見率が約1.5倍になるというデータもある。
この研究では、感度はマンモグラフィー単独が77%だったのに対し、併用群は約91%と高かった。
乳がん発見数も単独群が117人、発見率0.33%だったのに対し、併用群は184人、0.5%と上回った。
 
併用した場合、乳がんが乳腺にとどまっている「ステージ0」や、しこりの大きさが2センチメートル以下で転移がない「ステージ1」という早期乳がんの発見に有効だということも分かった。
一方、併用群では精密検査が必要な割合も高くなり、乳房に針を刺して組織を採取するなどの患者の「不利益」とされる例も増えた。

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この研究グループは大規模試験をさらに進め、死亡率の減少効果があるかどうか確認する計画を立てている。
減少効果がはっきりすれば将来、国が推奨する検診に超音波検査が導入される可能性はある。
ただ、不利益対策や検査態勢の整備状況なども検証する必要がある。
 
すでに茨城県つくば市など一部の自治体では超音波検査を併用している。
また、人間ドックや職場検診では超音波検査を望めば、受けられることが多い。
 
ただ、検診を定期的に受けていても、がんが途中で見つかる場合もある。
乳がんには、がん細胞の増殖のスピードが速いタイプもあるからだ。
たとえば、がん研有明病院の乳腺センターで検診と検診の間に乳がんが見つかったのは全体の約6%。その70%はステージ2以上の進行がんだった。
 
米がん協会は15年10月、これまで40歳から毎年受診することを推奨していたマンモグラフィーによる乳がん検診を、45歳からに引き上げる内容の新指針を発表した。
この指針に対し、「欧米では55歳以上で乳がんにかかる人が多いが、日本人は40~45歳で乳がんになる人が多いので、(この年代で)検診をやめるのはリスクが大きい」と指摘する専門家もいる。
 
乳がん検診を受けないまま、がんが進行してから見つかると生命に関わりかねない。
仕事や子育てなどの合間を縫って検診を受け、がんに備えることが重要だ。

 
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自己触診のやり方
● 閉経前…月経が終わって1週間後に
● 閉経後…毎月1回、日を決めて実施

① 目で見て
(鏡の前で、両腕を高く上げたり下ろしたりしながら)
・乳房の形や大きさの変化、ひきつれ、くぼみ、変色などがないか確認する

② 触れて
(入浴時やあおむけに寝た姿勢で)
・乳房やわきの下のしこりや、乳首からの血液混じりなどの分泌物がないか確認する
・指の腹で軽く押さえながら「の」の字を書くように、全体をまんべんなく


低い受診率 課題  セルフチェックも大切
乳がんは検診の受診率をどうやって引き上げるかも大きな課題だ。
日本の受診率は20~30%とされ、欧米の70~80%に比べて著しく低い。
経済協力開発機構OECD)加盟国の中でも最低レベルにあるという。
 
受診しない理由は「女性スタッフだけで検査してもらえない」「時間がない」「マンモグラフィーは痛い」など。
こうした声を受け、最近は女性に検査してもらえる施設も増えつつある。

検査日の工夫も大切で、月経が終わって1週間ほどたって受ければ、痛みは少ない。
 
日本では検診の推奨年齢は40歳以上。
マンモグラフィーは被曝の問題などがあり、あまり若いうちから受けるのは好ましくない。
セルフチェックも欠かせない。
「自己触診」と呼ぶ方法で「いつもと違う」という変化に気づいたら、医療機関を訪れるようにしよう。

参考・引用
日経新聞 2015.12.27


<関連サイト>
マンモで見つからない乳がんを救う「大事な質問」
http://style.nikkei.com/article/DGXMZO02184060R10C16A5000000?channel=DF090220166681&style=1&n_cid=SPTMG002