お笑いによる免疫力や痛みの改善

お笑いで免疫力や痛みが改善

大阪市は喫煙率が高く、検診受診率は低いという問題を抱えている。
実際、肺がんの死亡率は男性で全国平均の1.3倍、女性では1.4倍だ。
肝臓がんも男女とも全国平均の1.5倍にのぼるなど、「あきまへん」状態が続いてきた。

私的コメント
大阪市の特殊性が浮き彫りになっています。

そんな大阪のがん対策の要が、昨年春から場所も名称も一新した「大阪国際がんセンター(旧大阪府立成人病センター)」だ。
同センターでは、最先端のがん治療を行う傍ら、大阪らしい取り組みも進めている。
 
センターの研究グループはがんの患者に「お笑い」を見てもらうことで、免疫力や症状などに改善がみられたとして、5月末に記者会見を開いて成果を発表した。
 
センターで治療を受ける40歳以上65歳未満のがん患者57人が研究に参加した。
吉本興業などの協力で、桂文枝さんやオール阪神・巨人さんらの落語や漫才を隔週で計4回見た患者のグループ(27人)と、見なかった患者のグループ(30人)で、免疫の働きや精神状態、症状などに違いがあるかを調べた。

私的コメント
2つのグループをどのように分けたかが書かれていません。
希望者で分けたとすれば、普段から「お笑い」が好きな人ということになってしまいます。

その結果、お笑いを見なかったグループは、がんを攻撃する役割を持つ免疫細胞「ナチュラルキラー(NK)細胞」の割合に変化はなかったが、お笑いを見たグループでは1.3倍に増えた人がいるなど、NK細胞の割合が増える傾向が確認された。
さらにお笑いを見たグループでは、免疫を高めるサイトカインという物質が平均でおよそ30%増えていた。
 
緊張、抑うつ、怒り、混乱、疲労、活気など精神面でも改善がみられた。
さらにがんの痛みが軽くなり、認知機能の改善もみられたという。
緩和ケアの観点でも非常に意義のある結果だと思われる。
 
別の研究で、大阪ミナミの演劇場で漫才や新喜劇を見た後はNK細胞の働きが高まったというデータもある。
国立がん研究センターの最近の研究でも、長期にわたるストレスで発がんリスクが高まることが示されているから、がん予防の点でも笑いは重要だといえるだろう。
 
まさしく「笑う門には福来たる」だ。

執筆
東京大学病院・中川恵一准教授

参考・引用一部改変
日経新聞・夕刊 2018.8.15