乳がん、子宮がん、卵巣がん 女性特有のがん

予防へ 正しい知識の啓発を

国立がん研究センター国立成育医療研究センターの集計によると、15歳から39歳までのAYA世代と呼ばれる層では女性のがん患者が非常に多く、特に20歳以降は約8割の患者が女性だ。

子宮頸がんや乳がんが若い世代に多いためだ。

 

3月、女性の健康情報サービス『ルナルナ』と一般社団法人シンクパールは「女性とがんの関係についての調査結果」を公表した。

 

乳がん、子宮がん、卵巣がんなど、女性特有のがんがあることは9割以上が知っていた。

しかし、20~30代のがん患者の約8割が女性であることを知っている人は2割以下という結果だった。

 

子宮頸がんの感染経路のほとんど100%が「性交渉」であることの認知率は6割で、4割の人が感染経路を理解していなかった。

がん予防のためにもより正しい知識を啓発する必要性を感じる。

 

また、子宮頸がんを予防するHPVワクチンについての理解も進んでいない。ワクチンが定期接種(公費助成)で受けられることを認識している人は約2割で、「どのように定められているかわからない」が4割強と最も多い回答だった。

自治体が行っているHPVワクチンの取組も約9割の女性が知らないという結果だった。

 

ワクチンを接種していない最大の理由は「ワクチンがあることを知らなかった」(37%)で、次いで「接種後の副反応が心配だから」(33%)だった。HPVワクチンの接種について正しい知識を持っておらず、判断できる環境にないことがうかがえる。

 

子宮頸がんの治療についても誤解があった。

欧米では、手術以上に放射線治療が実施されているが、放射線だけで治せることを知っている人の割合はたった1.7%に過ぎなかった。

 

子宮頸がんは30代に最も多いがんだが、早期に発見できれば治りやすいがんだ。

ワクチン接種でリスクは3割程度まで下げられる。

一時8割を超えていた接種率は今やほぼゼロ。

子宮頸がんの9割を防げる「9価ワクチン」も認可されたが、現在の日本の状況では、定期接種化にはもう少し時間がかかると予想される。

執筆 東京大学病院・中川恵一 准教授)

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・夕刊 2020.10.14