心臓弁膜症カテーテル治療普及 高齢者も可能に

心臓弁膜症、広がる治療対象 カテーテル普及、高齢者も可能

心臓にある弁に異常が起きる「弁膜症」。年齢とともに増え、国内では200万人ほどの患者がいるとの推計もある。最近では外科手術のほか、カテーテル(細い管)を使った治療が広がっている。今年、13年ぶりに治療ガイドラインが全面改定され、カテーテル治療も盛り込まれた。

 

カテーテル普及、高齢者も可能

70代の女性は、今年6月下旬、カテーテルを使った治療を受けた。

心臓の左心室の機能が落ちて拡大しており、左心房との間にある2枚の弁で

できた「僧帽弁」が閉まりきらずに、一部の血液が逆流する「僧帽弁閉鎖不全症」になっていた。

治療後は、左心室から全身に送り出される血液の量が倍近くに増え、動いたときの息切れも少なくなった。

 

治療では、太ももの付け根からカテーテルを血管に入れ、僧帽弁をクリップで挾む。

国内では2018年からできるようになった方法だ。

 

僧帽弁閉鎖不全症には、弁自体に問題があるものと、心筋が悪く結果的に弁が閉まりにくいタイプがあり、女性はこちらだった。

 

治療には主に開胸を伴う外科手術と、カテーテル治療があるが心筋が悪い場合には開胸手術のリスクが高く、外科手術で僧帽弁だけ治療しても良くならないことが多い。

カテーテル治療が主体になる。

 

外科手術はカテーテルよりはるかに歴史が古く、傷を小さくして短期間で社会復帰できるよう進化してきた。

 

ただ、術中に心臓を止めることもあり、特に高齢者では手術に耐えられないカテーテル治療は、基本的に外科手術が困難な患者さんが対象になる。

 

心臓弁膜症の中で僧帽弁閉鎖不全症とともに多い大動脈弁狭窄症は、左心室の出口にある大動脈弁の開きが悪くなり、血液の流れが妨げられてしまう病気だ。

この病気でも、太ももの付け根などからカテーテルを入れ、大動脈弁の位置で風船を膨らませ、人工弁を入れる経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)が広がりをみせている。

 

日本循環器学会のデータでは、14年のカテーテル治療は855件だったが、18年には6819件となっている。

従来の外科手術の件数が減ったわけではない。

学会のデータでは大動脈弁狭窄症による弁置換手術の件数は、15年に1万385件、18年に1万1500件だ。

 

治療法が新しく加わったことで、今まで治療適応とならなかった手術リスクが高い方が治療を受けるようになったと考えられる。

 

ガイドラインでは80歳以上がカテーテル、75歳以下が外科手術と大まかな目安を示した。

個々人で体力の違いが大きいことから、幅をもった数字になっている。

実際には、75~80歳でもカテーテル治療を希望する患者が増えている。

 

ガイドライン全面改定 日本人の体格に合う指標示す

ガイドラインには、日本人の体格に合わせた、カテーテル治療や外科手術の時期を決める指標も盛り込まれた。

これまではデータが多い欧米の患者の情報をもとに決めていたが、体格が小さい日本人に合った指標になっている。

 

例えば、大動脈弁狭窄症の治療時期を決めるには、心臓から血流が出て行く出口となる「弁口面積」が指標のひとつだ。

通常の1.0平方センチメートルと併せて小柄な患者向けに、「体表面積」で割った値を参考値として示した。

 

僧帽弁閉鎖不全症や大動脈弁閉鎖不全症でも小柄な人に合わせた参考値を示している。

従来より早く治療の時期を見極めることになる場合もある。

適切な治療のタイミングを逃さないために体格に応じた指標を示すことは重要だ。

 

弁膜症は初期に自覚症状が少ないままに進むのが特徴だ。

坂道や階段を上るときの息切れが、同年代の人よりひどいようであれば要注意だ。

聴診や、心エコーで検査できる。

無症状でも、機能の低下は進む。

治療の時期を逸さないよう、フオーローすることが必要となる。

 

参考・引用一部改変

朝日新聞・朝刊 2020.9.2

 

 

<関連サイト>

弁膜症とカテーテル治療のイメージ

https://wordpress.com/post/aobazuku.wordpress.com/1576