心臓手術の死亡率公表

心臓手術の死亡率公表 学会、データベースを分析 治療成績、底上げ図る

心臓や大動脈の外科手術の種類ごとの死亡率や合併症の発生率が、全国の医療機関から集まるデータを基に公表された。
医療の質の向上を図るためのデータベース事業の成果で、死亡率が高い施設に技術的な助言をするプロジェクトも始まっている。
施設ごとの治療成績の開示が検討課題となりそうだ。

公表されたのは、心臓血管外科学会内の日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)に集まった症例を分析したもの。
2003年に本格的に始まった事業で、17年は成人の手術は578施設が参加。
患者の情報など1人あたり約300項目を登録する。
 
今回の対象は、13~14年に行われた手術の治療成績。
例えば、心臓に血液を送る冠動脈が狭くなった患者へのバイパス手術(約3万2千件)の死亡率(術後30日以内もしくは入院中に死亡した患者の割合)は待機手術で2%、緊急・準緊急手術で8.2%だった。また、合併症の発生率は、「出血」が待機手術で1・6%、緊急・準緊急手術で3.1%、「脳梗塞
」が同じく1.5%と2.9%だった。
 
当初からデータベースづくりに関わってきたJCVSD代表幹事は全体の治療成績について、「同様のデータベースがある欧米と比べて遜色はなく、胸部大動脈の手術に関しては優れている」と話す。
 
施設間でばらつきがある治療成績の底上げを図り、心臓血管外科学会は13年から「医療の質向上プロジェクト」を始めた。
 
死亡率は、手術チームの技量だけでなく、患者の状態や緊急手術の割合にも影響される。
全国平均に比べて高いからと単純に「成績が悪い」と決めつけることはしない。
JCVSDに蓄積された約47万人の成人患者のデータから、患者の年齢や重症度を考慮して施設ごとの予測死亡率を算出。
これに比べて実際の死亡率が「2・5~3倍」高い施設から指導対象を選ぶ。
 
当初は学会の役員らが施設に出向いて検証し、助言していた。
対象施設を増やそうと16年からはウェブ上でのやりとりに変更。昨年は26施設で実施した。
 
プロジェクトの流れは・・・。
診療態勢について施設から報告を受けた学会側の助言者が、手術実施の判断や手術方法などについて聞く。ウェブ上の意見交換を経て、施設は改善計画を作り実施。
アドバイスを受ける。
自分たちの問題点を理解して対策を立てることで、治療成績を向上させている施設がある。

■'''施設別の開示「慎重に検討」
一方で、治療成績に施設間でどの程度の差があるかは、公表していない。
数字が一人歩きすることを避けるためだ。施設ごとの死亡率や合併症の発生率も公表されていないため、患者やその家族が、個別の病院の成績を知ることはできない。
 
学会は今後もデータの収集、分析を円滑に進めるため、施設ごとの治療成績の公開はしない方針という。
海外では、情報公開で心臓血管外科医を目指す医師が顕著に減少しているという指摘もあり、慎重な検討が必要だという。
 
遺族の立場で客観的なデータに基づくリスクの十分な説明などを病院に求めてきた人がいる。
この人は、全国の治療成績の公開について「一歩前進」と評価しながら、「データの見方やどのような要因が成績を左右するか、わかりやすいかたちで情報提供してほしい。最終的には、各施設が治療成績を開示することを患者は望んでいる」と語る。

参考・引用
朝日新聞 2018.1.17


<関連サイト>
心臓手術はどれほど「安全・安心」ですか?
http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/heart/pamph51.html

[PDF] 非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に 関するガイドライン(2014 年改訂版)
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2014_kyo_h.pdf