髪にもあった「曲がり角」

髪にもあった「曲がり角」 ピーク年齢に驚きの男女差

男性は20歳、女性は35歳が髪の毛の“曲がり角”――。
毛髪の加齢には男女差がある。
図1は日本人の毛髪の太さ(直径)の平均値を年齢層、男女別に調査した結果である(花王調査。対象は男性1177人、女性18262人)。
それによると、髪の毛が最も太くなるピーク時が男女でかなりずれていることが分かる。
男性のピークが10代後半から20代前半なのに対し、女性は30代後半。
つまり、男性の方が女性より15~20年も若い段階から髪の毛が細くなり始めるというわけ。

しかも、毛髪が細くなるペースにも大きな男女差があるという。

イメージ 1



グラフを見ると、女性の髪の太さは30代後半をピークにほぼ左右対称の緩やかな山型のカーブを描き、変化の範囲も0.075~0.085ミリで比較的安定している。
ところが、男性の髪の太さは20歳前後を過ぎると一本調子でドンドンと細くなり続ける。
10代後半から50代後半までの約40年間に実に3割ほど細くなってしまう計算なのだ。

男性の方が毛髪が細くなる時期が早く、しかもそのペースも急速。
そのため、若い時期に薄毛になったと感じるのは圧倒的に男性に多い。

さらに毛髪の密度も、若い時期にはそれほど急速には減らないが、30代を過ぎたころから男女ともほぼ単調に低下する傾向がある(男女差は今のところ確認できてない)。
このため、30代以降の男性にとっては「細くなる時期」「細くなるペース」「密度」の“トリプルパンチ”で一層、薄毛を意識しやすくなるらしい。

では、なぜ男性の方が早く薄毛になるのだろうか?

これはホルモンの分泌が関係しているそうだ。

男性は、男性ホルモンの分泌が増えると、平均4~6年とされる1本の髪の毛の成長期が短くなり、細くて短いままで抜け落ちることが繰り返される。
個人差はあるが、数カ月~1年ほどに短くなる事例もあるそうだ。
だから、男性の方が若い段階から薄毛になりやすい。

一方、女性ホルモンには毛髪の成長期から退行期・休止期への移行を抑える働きがある(さらに妊娠中の女性は女性ホルモンのレベルが高いために脱毛しにくい)。
こうした影響で、女性の方が毛髪が細く短くなる時期が男性よりも遅くなるのだ。

実は女性の髪のツヤも35歳前後を境に低下する。
髪の毛が細くなり始める時期とほぼ重なるのだ。

図2は女性の毛髪のツヤと年齢の関係を示したグラフ(花王調査。対象は女性230人)である。
頭部後ろ側を撮影した画像データから特殊技術で明度を解析し、最も明度の高い“天使の輪”とその周辺部との差を「ツヤ値」とした。

イメージ 2



グラフを見ると、たしかにツヤ値は30~34歳までにピークを迎え、それ以降は急速に下がっている。
実際、意識調査などでも30代を過ぎたころから髪の毛の変化を感じる女性層が多いらしい。

では、何が髪の毛からツヤを奪っているのだろうか?

犯人は髪の毛の「うねり」だという。

図3は毛髪のうねりの発生頻度を年齢層別に調査した結果(花王調査。対象は女性230人)である。
頭頂部付近から毛髪10本を採取し、カール半径(うねりの半径)が2センチ以上4センチ以下の毛髪を「弱いうねり」があるとし、さらにカール半径が2センチ以下の毛髪を「強いうねり」があると判定した。

「強いうねり」と「弱いうねり」を合わせた割合は10代が36%。
それが20代で40%、30代で49%、40代で49%、50代で64%、60代で75%と加齢とともに上昇している。

うねりがない髪は、流れがそろっているので反射光が“天使の輪”のように並んでツヤが出やすい。
しかし、逆にうねりが多い髪は、流れがそろわず、反射光がちらつく。だからツヤが出にくいのだ。

イメージ 3



写真4は各年齢ごとの女性の毛髪のツヤとうねりの代表例である。
加齢に伴い、髪のツヤが失われ、うねりが多くなっている状態が読み取れる。

年を取ると髪の毛にうねりが生じやすい理由は、髪の毛を再生するプロセスが加齢に伴い不安定になってくるからだ。
研究によると、毛髪の内部の約9割を占めるコルテックス細胞には「繊維が平行に並んだ細胞」と「繊維がスパイラル状にねじれて並んだ細胞」の2種類があり、これらの分布が偏るとうねりが生じるのだという。

イメージ 4



日本人の髪の毛は平均で約10万本。
1日あたり50~100本程度の髪が抜けるが、これは自然な生理現象で、この程度の抜け毛なら薄毛を心配する必要はない。
しかし、通常よりも細くて短い抜け毛が増えてくるようなら、薄毛になりかけている恐れがあるので注意が必要だという。

ちなみに髪の毛は1日に0.3~0.5ミリ程度伸びる。
1カ月だと1.2センチ程度、1年だと15センチ程度伸びるのが平均だそうだ。
髪の寿命が約5年だとすると、通常、75センチ程度、つまり腰まで伸びたあたりで寿命がくることになる。

こまめに洗髪するなど清潔に保ち、頭皮をマッサージするなど血行を良くしたり、ストレスを避けるなど努力を続ければ、髪の毛の加齢スピードを落とすことは十分に可能。
髪の毛には様々な美しさのメカニズムが隠されている。
髪を大切にしてほしい。

出典 日経新聞 Web刊 2011.2.25(一部改変)
版権 日経新聞


他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログです)
「井蛙」内科メモ帖 
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログです)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」のイラスト版です)
があります。