学校の窓「開けても放射線量変わらず」

東京電力福島第1原発事故による放射能漏れを懸念し、小中学校で授業中に教室の窓を閉める動きが進んでいるが、遠藤俊博・県教育長は21日の災害対策本部会議で「文部科学省の調査で開けても閉めても放射線量に大きな変化はなかった」と報告した。

調査は文科省が19日に福島県の福島、本宮両市で放射線量が高い小中高校や幼稚園など10カ所を選んで実施。教室内(窓際)の空間放射線量は、福島市立渡利中で窓を閉め切った際に毎時0・6マイクロシーベルト、全開して再測定しても同0・7マイクロシーベルトとほぼ変わらず、他校も同様だった。
全開の方が放射線量がやや低かったケースもあった。

遠藤教育長は取材に対して「科学的データが示された。地表の土が舞う強風時を除けば窓を開けても大丈夫ではないか」との見方を示した。
ただ、「今回は窓を開けた直後に再測定したが、一定の時間をおいてから再測定するなど精度を高めるよう国に求めたい」と注文もつけた。

また、窓閉めや扇風機の導入を進める市町村について、遠藤教育長は「安心の取り組みだろう。データや情報は提供するが状況は各校で異なる。一律の対応は難しい」と述べ、判断を尊重する考えを示した。

出典 産経新聞 2011.5.22 配信
版権 産経新聞

<私的コメント>
「科学的データが示された」ということですが「窓を開けた直後に再測定した」ということが科学的でしょうか。
何だか安心させるための恣意的な測定法のような気もします。
よく知りませんが、福島県の小中学校にエアコンはあるのでしょうか。
「エアコンがない」ないしは「節電目的」の「科学的」安全性の証明なら問題です。
もっともエアコンで被曝を防げるか、という問題もあります。

以前、「少量被曝の安全性を強調する(御用)学者ほど科学的根拠を持ち合わせていない」という記事を読んだことがあります。

<追加>
産経新聞 2011.4.26
■福島第1原発事故を受け、福島県は4月26日、県内55の幼稚園や小中高校などを対象に、教職員の代表に線量計を持ってもらうことで、園児や児童、生徒が学校にいる間に受ける放射線量を27日から継続的にモニタリングすると発表した。
文部科学省の要請を受けた措置。
■簡易型の線量計を教職員の代表が毎日身に着け、児童や生徒らが登校時から下校時までに受ける積算の放射線量を計測。週1回、文科省に結果を報告する。
調査は当面、夏休みが終わる8月下旬まで続ける予定。

産経新聞 2011.5.4
東京電力福島第1原発事故で、放射線量の総量「積算放射線量」が重視されるようになっている。
1時間当たりの被曝(ひばく)量が低い値であっても、数カ月、1年間と続けて浴びた場合、放射線量は累積されていく。
原発事故の長期化で、健康に与える影響を、1時間や1日当たりでなく発生以降の年単位で考慮せざるを得なくなったからだ。
■例えば1時間当たりの放射線量が10マイクロシーベルトだった場合、単純計算で年間の被曝量は87ミリシーベルトとなり、発がんリスク増加の可能性が高まる100ミリシーベルトに近い数値になる。
■ただ、放射線量は地形や風向き、地上からの高さなどで変わり、一律ではない。
福島県によると、福島第1原発から北西約30キロの浪江町の小学校で4月5日に計測された放射線量は、地上から高さ1メートルの位置で毎時21マイクロシーベルトだが、地表では30マイクロシーベルトと約1・5倍だった。
ちりなどに含まれた放射性物質が降下した影響とみられている。
■政府は事故発生当初、「数日間で50ミリシーベルト」というあいまいな基準で避難区域を設定していた。
■しかし、原発事故の収束が見通せる状況ではなくなったため、年間20ミリシーベルトという被曝量を基準に用いて避難区域を改めて設定。
計画的避難区域に設定された浪江町の1地点では、来年3月までの積算放射線量が235・4ミリシーベルトに上ると文部科学省が予想している。
<私的コメント>
原発事故の収束が見通せる状況ではなくなったため」「積算放射線量が235・4ミリシーベルト」と恐ろしいことが書かれています。
「収束が見通せない」のは最初からわれわれ素人でも分かっていました。
水素爆発の際に避難地域を大きく指定してその後、区域を縮小させるということは誰でも思いつくことだった筈です。

<自遊時間>
先週の週末に高校の同期会があって出席しました。
会の冒頭、ちょっと級友と話をしていたら壇上の幹事が「黙祷!」の一声。
急に会場がシーンと静まり返りました。
「亡くなった同期生のための黙祷?大震災の黙祷?」
考えながらの長~い1分間でした。
今までに、黙祷がこんなに長く感じたことはありません。


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