トランス脂肪酸 気にし過ぎ?

トランス脂肪酸 気にしすぎには慎重論も

動脈硬化との関係が指摘されているトランス脂肪酸
クッキーなどお菓子に多く含まれています。
健康への影響を調べてみました。

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脂肪酸は、「不飽和脂肪酸」と「飽和脂肪酸」に分けられる。
脂肪酸を作る炭素同士が二重に手をつないでいるのが不飽和で、一本の手だけでつながっているのが飽和。
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種だ。

牛や羊などの死亡や乳製品にも含まれて入るが大半は、マーガリンやショートニングなどを作る過程で生まれる。
だから、加工した油脂を使ったお菓子や、フライドポテトなどはトランス脂肪酸を多く含む。

世界保健機関(WHO)の報告によると、トランス脂肪酸は「悪玉」とよばれるLDLコレステロールを増やし、「善玉」とよばれるHDLコレステロールを減らす。
動脈硬化心筋梗塞のリスクも高める。
そのためWHOは、トランス脂肪酸の摂取を、1日1%未満に抑えるよう推奨している。

2008年度の食用加工油脂生産量を元に食品安全委員会が行った計算によると、日本人のトランス脂肪酸による摂取カロリーは、1日の総カロリーの0.7%と、WHOの推奨基準内に収まっていた。

だが、東京大などの研究では、30~40代女性の3割以上が1%を超えていた。
お菓子の摂取が原因とみられるという。
菓子好き40代女性の1人としては大変気になるので、ふだん口にするクッキーの表示をスーパーで調べてみた。
国産や欧州連合(EU)酸には、トランス脂肪酸量は表示がなかった。
米国製のクッキーは、脂質の合計量のほかトランス脂肪酸飽和脂肪酸の量も表示されていた。
だが、米国産はどれもトランス脂肪酸の含有量は「0」。
結局、菓子からどれだけを取っているのかわからなかった。
米国やカナダ、韓国、台湾は加工食品意トランス脂肪酸の含有量表示を義務づけているが、EUや日本などは義務ではない。

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日本では表示を検討する動きもあり、消費者庁は2月、表示対象とするトランス脂肪酸の定義など、表示指針を発表した。
しかし慎重論もある。
国立医薬品食品衛生研究所安全情報部の畝山智香子室長は「表示に必要な費用や手間と、効果のバランスを考える必要がある。
一般的に米国人と日本人の食生活は大きく異なる。
日本人はトランス脂肪酸より塩分の摂取量を控える方が健康への効果が大きい場合が多い」と指摘する。

米国人の脂質や肉類の摂取量は、日本人の2.5倍以上。
それでも、死亡原因としては喫煙や肥満、運動不足、高血圧、塩分摂取などよりは順位が低い=図参照。


日本人でもお菓子や揚げ物が好きな人はトランス脂肪酸にも注意が必要である。

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<参考>
食品安全委員会のサイト
http://www.fsc.go.jp/sonota/transfattyacids1902.html
トランス脂肪酸の解説や、食品に含まれるトランス脂肪酸の量の調査結果などがわかる)



出典 朝日新聞・朝刊 2011.5.21
版権 朝日新聞社


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