水虫、かゆくなる前に受診

水虫、かゆくなる前に受診 薬で完治も可能に

梅雨になり、温度や湿度が上昇すると、水虫を起こす白癬菌の動きが活発になる。
足の皮がただれたり、水疱(すいほう)ができたりしたら、医療機関を受診しよう。
治りにくいといわれてきた水虫だが、きちんと診断を受け、適切な薬を処方してもらえば、完治させることができる。

水虫は白癬菌というカビ(真菌)の一種が皮膚について起きる病気だ。
皮膚や爪のケラチンというたんぱく質を養分にしている。

温度18度以上、湿度80%以上になると、白癬菌が活発に増殖するため、高温多湿の梅雨から夏に水虫の症状を訴える人が増える。

水虫の原因となる白癬菌は自然界に普通に存在するため、不潔にしていたから、だらしがないから、水虫になるわけではない。
水虫にならないためには、靴の中などが白癬菌が好む高温多湿にならないようにすることだ。

具体的には、革靴など密閉型の靴を長時間履かない、靴下と靴は毎日履き替える、入浴したら足の指の間も洗い水分をきちんとふきとるなどだ。

かゆみを感じたときには、症状はかなり進んでいる。
かゆみは、白癬菌が皮膚の角質の下まで入り込み、炎症が起きたときに感じる。

このため、かゆみを感じる前に皮膚が赤くはれていたり、かさついたりしたとき、また、皮膚に小さな水疱ができているときには、何かにかぶれたのだろうか、などと思わず、すぐに病医療機関を受診する必要がある。

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軽視は大間違い
水虫かどうか……。
皮膚科で診療を受けると診断はすぐにつく。
白癬菌は数マイクロメートルの大きさなので、顕微鏡で見つけることができる。
受診すると、異変のある皮膚を少しだけ取り、顕微鏡で観察する。
白癬菌がいれば水虫ということになる。時間は10分ほどだ。

たかが水虫、かゆいぐらい我慢すれば、と軽視するのは大きな間違いだ。
水虫が進行し、そのほかの菌なども患部に繁殖するようになると、足の付け根のリンパ節がはれて、歩くことが困難になる場合がある。

また、糖尿病などで抵抗力が低下している場合、足が壊疽(えそ)し、切断しなければならないような症例になることもまれにはあるという。

水虫は文明病だ。
世界でも靴を履く習慣のない地域では、ほとんど水虫の症例が観察されないという。
日本でも、靴を履くことが一般的になった明治以降に急速に広がった。

水虫の人は自分が保菌者であることを自覚する必要がある。
人にうつる可能性があるため、自分だけのための治療ではない。
家族などまわりの人のためにも、完治させることが重要になってくる。

たくさんの塗り薬が販売されているが、適切な薬を塗らないと、かえって症状を悪化させてしまうことがある。


新薬使い殺菌も
「水虫を完治する薬を発明したらノーベル賞もの」などと言われたのは一昔も前のこと。
今では水虫は治る病気になってきた。
1990年代に、白癬菌を殺菌する新しい薬が使われるようになったことが大きい。
イトリゾール、ラミシールという内服薬が代表的なものだ。
どちらも、医師の指導や定期的な血液検査などを受けながら服用する。

これらの薬が使われるようになって、爪を侵して、その爪の内部で繁殖している白癬菌も殺菌できるようになった。
ただし、これらの薬は、数カ月続けて飲んだり、ほかの薬との併用に気をつけたりする必要があるため、購入には医師の処方せんが必要だ。

これらの飲み薬と同じ成分を含んだ塗り薬もあり、皮膚表面のただれや水疱などに効果がある。
こちらも医師の指示に従って、使いたい。
症状が治まると、塗るのをやめてしまう人もいるが、根気よく毎日塗り続けることが必要だという。

二足歩行を支える足を侵す水虫は重大な病(やまい)だ。
しかし、早く病院に行けばいくほど、治る病気でもある。

 ◇  ◇

爪水虫、運動能力落ちる
足の爪が白くにごったり、分厚くなったりしていたら、爪水虫(爪白癬)の可能性が高い。
かゆみなどを感じなくても、足に白癬菌がいるのだ。
かゆみなどの自覚症状がないため、そのままほおっておく人も少なくないようだ。
だが、爪の中で白癬菌は繁殖を続ける。
夏が来るたび、水虫が発症し、泣かされる原因になる。

夏場に、爪を露出するサンダルなどを履きにくくなるという外見上の問題に加え、別の大きな問題があるという。
運動能力が落ちるのだ。
爪は手足の指先に生え、軟らかい部分を守っている。
また、足の爪には踏ん張る力を地面に伝える役割もある。足の爪が白癬菌に侵されぼろぼろになってしまうと、踏ん張りがきかなくなる。

実際には、ゴルフの飛距離が落ちたり、走るときの踏み込みが浅くなって速度が落ちたりするといった悪影響が出るという。
健康で楽しい生活をおくるためにも「たかが水虫」という考えは捨てたいものだ。

出典 日経新聞 Web刊 2011.6.4(一部改変)
版権 日経新聞


<私的コメント>
最後の「二足歩行を支える足を侵す水虫は重大な病」「運動能力」について思い出すことがあります。
それは、70代の女性で「片足のウラのウオノメ(専門用語では「鶏眼」といいます)が痛くてよく転ぶ」という方がみえます。
現在、当院に通院治療中(当院は内科ですがウオノメも診療しています)です。
水虫でも生活に支障が起こることがわかり勉強になりました。



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