免疫力を低下・突然死を招く感染症

タイトルからはどんな感染症って思ってしまいます。
この感染症はごくありふれた「歯周病」という口腔内の細菌(歯周病菌)によるものです。
この細菌は、実は数百種類もの細菌の総称です。

この歯周病の予防の落とし穴と注意すべきポイントについては、最近の「ためしてガッテン」でとりあげられました。


免疫力を低下・突然死を招く感染症

世界で最も患者数が多いとも言われる感染症
厚生労働省の調査によると、日本でも7割の人がこの感染症にかかっていました。

その感染症とは「歯周病」。
かつては「歯が抜ける病気」と思われていた歯周病ですが、それは大間違い!
近年の研究で全身に影響を及ぼすことが分かってきました。

特に糖尿病とは密接な関係があり、歯周病がある人は症状が良くならないばかりか悪化してしまう事も!
さらに歯周病菌が血管内に入ると血栓ができやすくなり、心臓病や脳梗塞のリスクを高めるという研究報告も相次いでいます。

番組で調査したところ「歯をしっかり磨いている」という人のなんと8割に歯周病が発見されました。


世界で最も患者数が多い感染症!?
世界で最も患者数が多い!?日本人の7割がかかっている!
しかも症状が悪化すると失明や足の切断、さらには突然死の引き金になるかも知れないといいます。
でも、そんな感染症あったっけ?。

その細菌を顕微鏡で観察すると、粒状の物やヘビのようにクネクネ動くものなど様々なタイプが無数に
うごめいていました。
研究者によると種類と数が増えるほど症状が悪化するといいます。

ありふれた細菌として見過ごされてきましたが、最近では研究者の間で様々な病気と密接に関わって
いるのではないかとの報告が相次いでいます。

中でも糖尿病は、細菌を減らす治療をしたところ、それまで良くならなかったヘモグロビンA1c
(過去1~2か月の血糖値の状態を示す指標)が劇的に改善した人もいるほどでした。
でも糖尿病は感染症じゃないはず。

その原因菌のニオイをかいでみると、ものすごくクサイ!
でもどこかでかいだことのある感じのニオイだったのです。
一体この細菌の正体とは?


仰天!味方が敵を増やす!?
この細菌の正体は「歯周病菌」。
実は日本人の7割がかかっている感染症とは「歯周病」の事だったのです。

歯周病は口の中の細菌により歯茎が炎症を起こす病気。
歯を支える土台の骨に影響が及ぶと歯はグラグラに!

一方、糖尿病は血液中にある物質が増えることで糖分を細胞にしまうインスリンの働きが弱くなります。
番組ではこの物質を「阻害君」と名付けました。

実は、歯周病で歯茎が炎症を起こすと阻害君が増えてしまう事がわかりました。
でもなぜ歯周病になると阻害君が増えてしまうのでしょうか?

そのカギとなるのがマクロファージ。
体内に侵入した細菌やウイルスと戦う免疫細胞です。
歯茎では歯周病菌とマクロファージが壮絶な戦いを繰り広げます。
この時、仲間を呼ぶためにマクロファージが出す物質が阻害君だったのです。

つまり、歯周病を放っておくと歯周病菌が増え、マクロファージが仲間を呼ぶために阻害君を放出。

するとインスリンの働きが阻害され糖尿病が悪化。
この状態が続くと体の抵抗力が下がり歯周病菌がますます増えるという悪循環に陥ってしまいます。

糖尿病の方が歯周病治療で良くなったのは、悪循環を断ち切ったためだったのです。


歯周病菌はズルくて賢い!?
手足の動脈が詰まり、ひどくなると手足の切断の可能性もある病気「バージャー病」。
このバージャー病の原因のひとつとして疑われているのが歯周病菌です。

バージャー病の多くの患者さんから血管内に歯周病菌の痕跡が発見されています。
研究者によれば、特にジンジバリスという歯周病菌は心臓や大動脈、静脈などで生息し、血栓の原因になっている可能性があるというのです。

ここで不思議な点がひとつ。
血液には酸素と鉄分が多く含まれています。
ジンの輔は鉄分は大好きなのですが、酸素は大嫌い。
それでも血管内に入り込み体内を移動していると考えられます。
でも大嫌いな酸素があるのにどうやって?

実はこの歯周病菌。
巧妙な作戦を練っていたのです。
なんと血液に含まれる血小板の中に入って血管の中を移動していました。
しかも歯周病菌が出す毒は、血小板や赤血球を集めて塊にしてしまう事が実験でわかりました。

これが心臓の近くで起これば心筋梗塞、脳の近くで起これば脳梗塞となる可能性があり、突然死の引き金になる事も考えられるのです。


歯を磨いても歯周病のナゾ!
歯が抜けるだけではなく、全身の病気に関わる事がわかってきた歯周病
予防には何よりも歯磨き。
しかし番組で「歯磨きに自信がある」という20代から50代までの男女を調査したところ、1日2回以上歯を磨いているという皆さんでも8割の方に歯周病の初期症状が見つかりました。
実は歯周病予防には3つの落とし穴がありました。

その1・磨き方
毎日歯磨きをしていても歯周病になってしまうのは細菌の塊、歯こうが落ちていないため。
歯ブラシを大きく動かす「ゴシゴシ磨き」だと、歯と歯のすき間に毛先が届かず歯こうがたまってしまうのです。
磨き残しを防ぐには歯ブラシを小さく動かす「クシュクシュ磨き」がおすすめ。

その2・生活習慣
タバコを吸うと煙に含まれるニコチンなどによって歯肉が酸素や栄養不足になります。
酸素が大嫌いな歯周病菌にとっては繁殖しやすい環境になってしまいます。

その3・歯に自信がある人
むし歯になった事がない、歯に自信がある、という人は歯科医に行く機会が少ないため、歯周病がいつのまにか進行している場合が多いのです。
歯が痛くなくても年に1回は歯科医へ行く事が歯周病の早期発見・予防の近道です。


今回のお役立ち情報
最近の研究で歯周病が進むと歯が抜けるだけでなく全身に影響を及ぼす事がわかってきました。
歯を支える骨や歯肉に炎症が広がってしまうと元の状態に戻すことは困難です。
自覚症状がない初期の歯周病を早期発見して予防することがとても大事です。

★自分で出来る歯周病チェック
下記の9問のうち、自分が当てはまると思う項目の点数を合計して下さい。

歯肉がピンク色で引き締まっている・・・0点
歯肉が赤色や紫色になっている・・・・・5点
歯肉がむずかゆく、歯が浮く感じがする・5点
歯磨きすると血が出る・・・・・・・・・5点
起床時、口の中がネバネバする・・・・・10点
歯肉が赤く腫れブヨブヨしている・・・・10点
何もしないのに歯肉から血が出る・・・・15点
歯がぐらついて物がかめない・・・・・・15点
冷たい水がしみる・・・・・・・・・・・15点


合計点数が
0点・・・歯肉は健康
5~25点・・・軽度の歯周病かも知れません
30点以上・・ 重度の歯周病の可能性あり


歯周病予防3つの落とし穴
その1・磨き方
毎日は磨きをしていても歯周病になってしまうのは細菌の塊、歯こうが落ちていないため。
歯ブラシを大きく動かす「ゴシゴシ磨き」だと、歯と歯のすき間に毛先が届かず歯こうがたまってしま
うのです。
磨き残しを防ぐには歯ブラシを小さく動かす「クシュクシュ磨き」がおすすめ。

その2・生活習慣
タバコを吸うと煙に含まれるニコチンなどによって歯肉が酸素や栄養不足になります。
酸素が大嫌いな歯周病菌にとっては繁殖しやすい環境になってしまいます。

その3・歯に自信がある人
むし歯になった事がない、歯に自信がある、という人は歯科医に行く機会が少ないため、歯周病がいつ
のまにか進行している場合が多いのです。
歯が痛くなくても年に1回は歯科医へ行くことが歯周病の早期発見・予防の近道です。

出典 NHK総合テレビためしてガッテン」2011.6.22(一部改変)
版権 日本放送協会


歯周病 関連サイト>
菌が体内侵入、多様な病気の引き金に 歯周病
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/35659876.html
虫歯と歯周病菌99・99%死滅
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/archive/2011/06/05
歯間ブラシやフロスを使って 歯周病
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/archive/2011/06/03
歯磨きで進行を防ぐ 歯周病
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/archive/2011/06/03
喫煙が環境面で最大の危険因子 歯周病
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/archive/2011/06/03
自覚症状ないまま進行 歯周病
http://blogs.yahoo.co.jp/herojjjhero/archive/2011/06/03



<自遊時間>
「日本一低い山から富士山頂へ480キロ」という記事が新聞に出ていました。

日本一低い山起点に、富士山登頂 沼津の実川さん
http://www.at-s.com/news/detail/100040695.html
富士山登頂の千回達成や富士宮口―山頂間連続8回登山などを成し遂げてきたアマチュア登山家の実川欣伸さん(67)=沼津市若葉町=がこのほど、日本一低い山といわれる天保山大阪市港区、標高4・53メートル)を出発し、東海道を踏破してからの富士山登頂に成功した。約480キロを8日間かけて歩き続け た実川さん。
「普段の登山以上のつらさがあったが、周囲の支えで乗り越えられた」と喜びを語った。


この日本一低い山ってどの山でしょうか。
誰でも気になるところです。
さて、その山は大阪市港区にある天保山
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」にも登場します。
築山で、頂上に二等三角点があり、標高4.5メートルだそうです。
いい勉強になりました。


天保山山岳会
http://www5.ocn.ne.jp/~tenpo45/
(山岳会まであるようです)




読んでいただいて有難うございます。
コメントをお待ちしています。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
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井蛙内科開業医/診療録(3)
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