【放射線 正しく怖がるために】(下)

内部被曝、まず線量把握 検査は特殊な計測器必要

東京電力福島第1原発の事故から100日以上たった6月27日、千葉市放射線医学総合研究所(放医研)に1台のバスが到着した。
乗っていたのは計画的避難区域に指定された福島県浪江町の住民10人。
約200万人の全県民を対象とした健康調査の一環として、内部被曝の検査を受けるため、5時間かけてやってきた。

検査を受けた3人の子供を持つ男性(35)は「内部被曝の健康への影響がよく分からないから怖い。子供のことも心配だ」と不安を口にした。

被曝には、大気中や皮膚などに付着した放射性物質を浴びる「外部被曝」と呼吸や飲食を通じて放射性物質を取り込み、体内から放射線を浴びる「内部被曝」がある。

被曝すると放射性物質が遺伝子を損傷し、将来、がんを発症する可能性がある。
皮膚などに付着した放射性物質は洗い流せるが、内部被曝の場合はそうはいかない。
放射性物質が体内にとどまっている限り、被曝し続けることになる。

ただ、放射性ヨウ素は7~8日、放射性セシウムは70日程度で排泄などで体内から半減される。

 
◆特殊な計測器でしか
「知らない間に放射性物質を体内に取り込んでいるのではないか」。
通常よりも高い空間放射線量の検出が続く中、原発周辺の住民には不安が広がっている。

国際放射線防護委員会(ICRP)委員で大分県立看護科学大の甲斐倫明教授は「内部被曝に対する漠然とした不安が広がっているのは、測定が容易ではなく、自分がどのくらい被曝したかなどの情報がないためだ」と指摘する。

線量計などで簡単に被曝線量を測定できる外部被曝と異なり、内部被曝はホールボディーカウンター(WBC)という全国で100台余りしかない特殊な計測器や尿などの精密検査でしか測れない。

「私たちがWBCの存在を知ったのは事故から1カ月以上もたってから。随分のんびりしていたと思う」

こう振り返るのは計画的避難区域に指定された飯舘村の有志らでつくる住民団体「負げねど飯舘!」常任理事の愛沢卓見さん(39)だ。
同団体は5月以降、国や県に対し、村民へのWBCによる内部被曝検査を要望。
放射性セシウムが約70日で半減することを考慮し、事故から丸3カ月となる6月15日までの検査を求めてきた。

こうした県民の不安を解消するため、福島県は6月27日、県民全員を対象に行う健康調査の一環として計画的避難区域浪江町、川俣町山木屋地区、飯舘村の120人を抽出し、WBCによる検査をようやく始めた。

 
◆正確なデータなし
県の取り組みを待たずに、自ら内部被曝の現状を調べた市民団体もある。
「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」などが5月20~22日に福島市内の6~16歳の10人から採取した尿をフランスの民間団体に依頼して解析したところ、全員から微量の放射性セシウムが検出された。

この結果を基に、放医研が行った試算では、10人が70歳までに受ける線量は最大で8・9マイクロシーベルト。一般人の年間の被曝限度量1ミリシーベルト(1千マイクロシーベルト)の100分の1以下だった。

汚染の値は低かったが、低線量の放射性物質による内部被曝がどの程度、人体に影響を与えるのかを示すデータは存在せず、専門家の間でも意見が分かれる。
それでも、愛沢さんは「私たちが知りたいのは、正確な数値。数値があれば将来に向け、しっかりと予防と対策が取れると思うから」と訴える。

放射線を正しく怖がるためには、被曝線量の把握が前提だ。線量が高くなければ、過度に不安になる必要はない」。
甲斐教授はこう指摘している。

出典 msn.産経ニュース 2011.7.9
版権 産経新聞


<番外編>
牛肉とセシウム 2カ月で体外排出される
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110713/dst11071303270001-n1.htm
福島県南相馬市畜産農家が出荷した肉用牛から、暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された。一部がすでに消費されていることから不安が広がっている。
しかし、専門家によると放射性セシウムは、半減期が約30年で、筋肉に集まりやすい性質があるものの、代謝により約2カ月で大半が体外に排出される。
今回の検出量についても、厚生労働省は「健康に影響を及ぼすことはない」レベルだとしている。
チェルノブイリ原発事故の健康被害を現地調査した日本の研究者によると、摂取した放射性物質による人体への障害が確認されているのは放射性ヨウ素だけだ。

食品からの被曝「相当小さい」 厚労省審議会が見解
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2011071206940.html
福島第一原発事故による放射性物質を含んだ食品を1年間摂取した場合の推計被曝線量を、厚生労働省の審議会が12日公表した。
全年齢の平均で約0.1ミリシーベルトで、食品からの年間許容量(放射性セシウム5ミリシーベルト、放射性ヨウ素2ミリシーベルト)を大幅に下回った。
■審議会は「食品からの被曝は安全性の観点から相当小さいものにとどまる」との見解を示した。
<私的コメント>「食品からの年間許容量」をわれわれは信用していないからこそ、「年間許容量を大幅に下回った」といわれても却って不安がつのるのです。

汚染食品「健康に影響するレベルでない」
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20110712102.html
■国の定める暫定基準値は、基準値レベルで汚染された食品を1年間継続的に摂取しても問題のない数値で設定している。
食肉の場合、汚染された同じ牛を繰り返し食べ続けることは考えにくいため、厚生労働省は「健康へ影響を及ぼすことはない」としている。
立命館大の安斎育郎名誉教授(放射線防護学)によると、1キロ当たり500ベクレルの放射性セシウムが検出された肉を200グラム食べると、被曝(ひばく)線量は0.0016ミリシーベルトになる。今回最も数値が高い牛肉(3200ベクレル)で換算すると0.01ミリシーベルトだ。安斎教授は「毎日食べている食事にはカリウム40という天然の放射性物質が含まれており、人はカリウム40で年間0.2ミリシーベルト被曝している。0.01ミリシーベルトはこの20分の1。何回か食べても、放射線が目に見えて健康に影響するレベルではない」と話す。
■ ただ、「消費者にとっては、行政が定めた基準値が守られていなかったということが深刻な問題。安全だといわれるほかの食物も汚染されているのではないかと不安になる」とも指摘。

<私的コメント>正直言って医師の私自身も内部被曝についてよくわかりません。以前何かに「安全だという専門家に限って科学的根拠を持ち合わせていない」と書いてありました。
チェルノブイリ原発事故という前例があるわけですから、今回の福島第一原発事故との比較検証(類似しているところと違っているところ)を徹底的に行って欲しいものです。
私達は、「大丈夫といわれていたことがそうではなかった」ことがあまりにも続いたものですから、「何も信じられなくなっている」のです。


<中国新幹線 その2>
中国の新幹線 海外で特許取れるの?
http://www.nikkei.com/life/family/article/g=96958A96889DE1E3EAE6E2E2E5E2E2EAE2E5E0E2E3E385E2E0E0E2E3;df=2;p=9694E0E3E2E0E0E2E3E2E6E7E2E3
日経新聞 Web刊 2011.7.9 「子どもニュース」)
■お父さん 
中国版新幹線は、日本の新幹線の技術をもとに、中国で新しく造られたんだ。
「独自の技術もたくさん使っているから日本の新幹線とは別物です」というのが中国の言い分。
だから、いろんな国にこの技術の特許を認めてほしいとお願いを出しているよ。
■お父さん 
詳しくはわかってないけど、中国は、車両の土台や先頭車両の先端を造る技術など21件の特許を希望しているそうだ。
そのひとつひとつを審査して、その技術が簡単には考え出せない画期的なものなら認められる可能性がある。
逆に日本の技術の延長線上で、ちょっとだけ変えただけなら難しいな。
■お父さん(審査は誰がするの?) 
特許のルールは国ごとに決めていて、各国の機関がそれぞれ審査をして判断する。
日本の審査機関は特許庁だよ。
■お父さん 
「発明王」のエジソンも、実は特許にうるさい人だったんだ。
エジソンは映画の装置を発明したといわれてるけど、彼はその特許をとり、ライバル会社を次々に「特許技術を勝手に使っている」と訴えたんだ。
■お母さん 
当時、映画は米国東部のニューヨークやシカゴで作られてたけど、エジソンに反発した人たちは目の届かない西海岸にまで行って映画製作を続けたのよね。それが、後に映画産業の中心地になるハリウッドの始まりよ。
■お父さん 
今も特許を巡って裁判で争うことは多い。
でも、お互いの特許技術を自由に使える契約を会社同士で結ぶ方法もある。
その方が新しい製品をお互い自由に開発できるしね。


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