メタボ対策

メタボ対策 体質を見極め、効果的に病気予防
最近、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を中心に、病気にかかりやすさと体質には深い関係があることが分かってきた。
個人の体質を考慮した健康づくりの可能性について専門家の話を聞いた。

生活習慣病が恐ろしいのは、初期段階では無症状なのに全身の血管を少しずつ痛めつけ、やがて失明、腎不全などの病気や動脈硬化を発症するからだ。
最近では、これらの病気の発症には、糖や脂肪などのエネルギー代謝にかかわる体質が関与していることが分かってきた。
健康なときに病気になりやすい“メタボ体質”かどうかチェックすることで、効果的な生活指導を行う試みが進んでいる。

この背景には、多くの生活習慣病で、生活改善に取り組んだ「遺産」の効果が明らかになったことがある。
筑波大学付属病院内分泌代謝・糖尿病内科の島野仁教授は「糖尿病や高コレステロール血症では初期の積極的な治療や生活改善で一定期間改善した患者は、その後、管理が緩んだとしても心筋梗塞など合併症を遅らせる効果は残る」と話す。

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合併症リスク減
しかも、この大切な「遺産」は健康な時から貯金できるという。
糖尿病に非常になりやすい体質の人でも若いうちから生活習慣を改善すれば、万一、発症しても合併症のリスクを下げられる。
逆に「まだ病気じゃないから」と暴飲暴食をくり返していると、発症後、ツケがまわって急速に病気が悪化するという。

メタボ体質の判定法に関する発見も相次いでいる。
筑波大学虎の門病院(東京都港区)の研究グループは、人間ドックを利用した人で糖尿病でない6241人を5年間追跡調査したところ、血中のブドウ糖の濃度を調べる空腹時血糖値検査で「正常高め」だった人が糖尿病を発症した割合は9%だった。
これに対して、過去1~2カ月の平均的な血糖状態を調べるヘモグロビンA1c検査も「正常高め」だった人では、38%が糖尿病を発症した。

両方の検査を行えば、未病段階で糖尿病になりやすい人を探せる可能性がある。
同グループでは、20歳のときから体重が10キログラム以上増えたことのある人もメタボ体質である可能性が高いことなどを明らかにしている。

親族に生活習慣病を患っている人がある場合は、メタボ体質の可能性が高いため、かかりつけ医に相談したい。
現在では、空腹時血糖値だけでなく体内の糖や脂肪の代謝を調べる検査方法が用意されているので、体質に合った生活改善方法を見つけ出すことにもつながるという。

島野教授は、動物実験で体質が生活習慣病の発症に関与する基本的なメカニズムの解明にも取り組んできた。
そして、マウスの臓器で作られる脂質である脂肪酸の性質を変化させると糖尿病や動脈硬化になりにくくなることがわかった。

島野教授は「EPA(エイコサペンタエン酸)など不飽和脂肪酸動脈硬化を防ぐことはよく知られている。生活習慣病の予防効果を決める秘密が脂肪酸にありそうだ」と話す。
将来は、食品や薬などで体質を改善する方法を解明したいという。

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家系よりも環境
また、体質というと気になるのはがんだ。
私たちの会話でも「うちはがん家系だから注意しなければ」などと話すが、がん体質は存在するのか。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部の津金昌一郎部長は「世界中で行われた、がんになりやすさを調べる調査や一卵性双生児の研究を見ても、がんと体質との関係は一般に思うより強くはない」と話す。

若くして発症した大腸がんや乳がんでは、遺伝的な要因の可能性を示す研究報告はあるが、その場合でも喫煙、肥満、飲酒といった環境要因リスクよりは小さい。

津金部長は「正確に言うと喫煙習慣や飲酒量は体質と関連しているが、どちらも努力次第で改善できる要素。がん家系を気にするよりも、家庭内や職場などで受動喫煙を防止する対策の方がはるかに効果的だ」と話している。 (ライター 荒川 直樹)


がんリスク、数値化の試み
体質を含めたがんリスクは、生活習慣によって判断できる。
津金部長は世界中の調査を統計学的に解析し、個人ごとのがんリスクの数値化を試みたシステムを開発、予防研究部のウェブ上で公開している。
http://epi.ncc.go.jp/riskcheck/index.html

システムでは年齢、体格を入力した後、喫煙歴、飲酒量などを入力するだけだ。
津金部長は「食道がんなどがんの種類によってはリスクを高める環境要因が明らかになっているが、これらは他のがんに比べて患者数が少ないので、現段階では数値化のメリットが少ない」と話す。

出典 日経新聞・朝刊 2011.8.13 日経プラスワン
版権 日経新聞



<新聞切り抜き帖>
見えぬ敵は空を飛び、雨粒に紛れ、飲料水に忍び込んだ。
えたいが知れないゆえに、放射能はその恐ろしさを百倍にも千倍にも膨らます。
たばこに酒と、過ぎると体に悪いものはほかにもいくらもあろう。
取り越し苦労もまたしかり。
どうか、賢く怖がりたい。
 朝日新聞・朝刊 「天声人語」 2011.3.24


<自遊時間>

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南蛮屏風3億4千万円、米で落札 被災者に一部寄付へ
ニューヨークの競売大手クリスティーズで3月23日、桃山時代に活躍した狩野内膳の工房が制作したとみられる「南蛮屏風」が420万ドル(約3億4千万円)で落札された。
同社によると、日本絵画の落札価格としては史上最高という。
出品者は、落札額の一部を東日本大震災の被災者に寄付する意向という。

落札者は不明。250万ドルで始まったオークションは数度の競り合いで一気に跳ね上がり、日本美術としては2008年に1400万ドル超で落札された「大日如来像」に次ぐ価格をつけた。

屏風は、ポルトガル人らが長崎で地元の人と交流している姿を描いた約400年前の作品で、関西地方の個人宅で昨年見つかった。


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