前立腺がん その2(2/3)

PSA検査は前立腺がんを発見するための血液検査です

PSA検査とは、前立腺がんを発見するための血液検査で、PSA値が高いほど前立腺がんが疑われます。
PSAとは、前立腺で特異的に作られるたんぱく質の一種で、健康な人の血液中にも存在します。
しかし、前立腺の病気になると血液中に流出し、PSAが増加するため、前立腺がんの可能性を調べるとともに、早期発見のための指標として用いられています。

PSA検査はごく少量の血液があれば測定が可能で、通常の血液検査と合わせて簡単に行うことができます。

前立腺がん検診の最近の研究結果から、PSA検診の受診により前立腺がんで死亡する危険が低くなることがわかりました。

前立腺がんは、初期症状も少ないため発見が遅れがちですが、早期に治療すれば完治も十分に可能です。
とくに、50歳を過ぎた方は、ご自身の健康管理のために、是非、前立腺がんに関心を持ち、定期的にPSA検査を受けることが、前立腺がん対策の第1歩として大切です。

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PSA検査は、
1)住民検診(約70%の市町村が実施;2009年度調査)、
2)人間ドック(約90%の施設が実施;2007年度調査)、
3)一般医療機関(何らかの排尿に関する症状があるなどでがんが疑われる場合には、ほとんどすべての医院・病院などの医療機関で実施が可能)
で受けることができます。

PSA検査の住民検診での対象年齢は、50歳以上が一般的ですが、人間ドックや、排尿に関する症状があり一般医療機関で検査する場合には、40歳からPSA検査を受けることをお勧めします。


PSA検診の受診で前立腺がん死のリスクが低下します
PSA検診の受診によって前立腺がんによる転移、そして死亡のリスクが低くなることが証明されました。

欧州の大規模研究では、9年の間に死亡率が20%下がることが報告され、検診開始から20年ほど経過した、オーストリアの研究では、60%以上も死亡率が低下しました(2010年米国泌尿器科学会での発表)。

米国では、1980年代の後半からPSA検診が普及し、現在は50歳以上の国民の4人のうち3人がPSA検査を受けているといわれています。
検診の受診とその後の適切な治療によって、米国の前立腺がん死亡率は1992年から2006年の間に39%も低下しました。

日本では、依然として前立腺がん死亡数は上昇しており、年間約1万人の方が前立腺がんで死亡しています※が、適切な間隔で定期的にPSA検査を受ければ、進行がんや転移がんでみつかる危険性が下がり、前立腺がんで死亡する危険が低くなることは間違いありません。

※平成21年人口動態統計月報年計(概数)の概況:第6表 死亡数・死亡率(人口10万対)、
 死因簡単分類別:http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai09/toukei6.html

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PSAが高かったときはどうしたらいいのですか?
PSA検査の基準値は0.0-4.0ng/ml、あるいは年齢階層別PSA基準値(64歳以下:0.0-3.0 ng/ml、65-69歳:0.0-3.5ng/ml、70歳以上:0.0-4.0ng/ml)を用います。

PSA検査を受けると、約8%の方が基準値を超え"がんの疑いあり"となりますが、全員ががんであるわけではありません。
(がんと診断される可能性はPSA値が高いほど高く、4-10ng/mlであれば約30%、10~20ng/mlでは50%程度です)

PSA値が基準値を超えた場合、前立腺がんと肥大症・炎症などの良性の病気を鑑別する必要がありますので、泌尿器科専門医のいる精密医療機関を受診してください。
精密検査では、PSA値再検査、経直腸的超音波検査(エコー検査)、直腸診などを行います。

超音波検査は、前立腺の形や大きさを調べるだけでなく、がんの部位や大きさがわかる場合があります。

直腸診では、医師が肛門から指を入れ、直腸の壁越しに前立腺に触れて診察します。
前立腺の大きさや硬さ、表面の性状などの様々な情報から、前立腺がんの可能性を探る検査です。

これらの精密検査で、前立腺がんが疑われる場合には、確定診断のため前立腺針生検が必要になります。

また、PSA検査では、約90%の方はPSAが陰性になりますが、今後も前立腺がん検診を継続的に受けていただくことが大切です。
PSA値が1.0ng/ml未満であれば、次回の検査は3年後、PSA値が1.0ng/ml以上であれば毎年の検査をお勧めします。

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【監修】九州大学病院 泌尿器科 教授  内藤 誠二先生
【協力】群馬大学病院 泌尿器科 准教授 伊藤 一人先生

出典
ブルークローバー・キャンペーン
http://www.blueclover2011.jp/about/

<関連サイト>
前立腺がん その1(1/3)
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2011/08/10




<番外編>
前立腺がんのPSA検査法、生みの親が有用性を疑問視
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2710177/5502805
前立腺がんの早期発見法として最も一般的なPSA(prostate specific antigen、前立腺特異抗原)検査を開発した米国の教授が、この検査法の有用性は小さく保険財政を圧迫していると指摘したことで、議論が起きている。

この意見を米紙ニューヨーク・タイムズNew York Times)に寄せたのは、約40年前にこの検査法を開発した米アリゾナ大学(University of Arizona)のリチャード・アブリン(Richard Ablin)教授。

米国がん協会(American Cancer Society、ACS)は、90年代から前立腺がんの標準的な検査法になっているPSA検査を推奨はしていない。
前年に米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された2つの研究の予備的な結果を受け、PSAのリスクと限界について患者に説明するよう医師たちに強く呼びかけている。

同協会によると、PSAは治療介入が必要な進行の早いがんと進行の遅い腫瘍を区別することができない。
後者の場合は、患者の年齢にもよるが、死因にはならない可能性がある。

さらに、PSAでは誤診の可能性もあるという。
PSAレベルは前立腺腫瘍が大きくなると跳ね上がるとされるが、患者の年齢とともに前立腺が自然に肥大した場合も値が上がるのだという。 

アブリン教授によると、米国人男性のうち前立腺がんと診断される割合は16%だが、その大部分は進行が遅く、死に至るのはわずか3%だという。

教授はまた、PSAの年間費用は少なくとも30億ドル(約2700億円)にのぼっていると指摘している。


<自遊時間>
警戒区域>年積算最高508ミリシーベルト文科省推計
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110820-00000002-mai-soci
文部科学省は19日、東京電力福島第1原発事故で警戒区域(半径20キロ圏内)に指定された9市町村のうち8市町村の50地点について、事故発生から1年間の積算放射線量の推計値(1日8時間屋外にいた場合)を初めて公表した。
最高は原発の西南西3キロの大熊町小入野の508.1ミリシーベルトで、一般人の人工被ばくの年間許容線量の500年分に相当する。
35地点が20ミリシーベルトを超え、原発周辺地域の除染作業の困難さが浮き彫りになった。
<私的コメント>
さりげなく書かれた記事ですが、もうこの地域では生活できないということを意味しています。
国土の喪失が起こっているのです。
それでも、原発再稼動といっている人達がいるのです。
原発容認派の賛成理由は見え見えですが、ここでは触れません。


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2011.8.13 撮影 山梨県笛吹市の果樹園にて



他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
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があります。