テレビには要注意

テレビの見過ぎは寿命を短くさせる

テレビの視聴に1日平均6時間を費やす人は、テレビを見ない人よりも寿命が5年短いとの報告が、英医学誌「ブリティッシュ ジャーナル オブ スポーツ メディスン(スポーツ医学)」オンライン版に8月15日掲載された。
25歳以降でテレビ視聴時間が1時間増えるごとに、寿命は22分ずつ短縮されるという。

オーストラリア、クイーンズランド大学(ハーストン)で行った今回の研究は、「オーストラリア糖尿病・肥満・生活習慣研究」に参加した25歳以上の男女1万1000人のデータを用いたもので、調査内容には1週間のテレビ視聴時間が含まれていた。
また、国民人口・死亡率データも用いられた。

その結果、2008年には、オーストラリア成人全体で98億時間をテレビ視聴に費やしており、このうち最も多い1日6時間以上視聴する人が1%を占めていた。
統計から、テレビの見すぎは、喫煙や運動の欠如と同様に平均余命を短縮させる危険性のあることが示された。
例えば、喫煙は50歳以降の平均余命を4年間縮めることになる。
つまり、たばこ1本ごとに11分縮めることを意味するが、これは30分のテレビ視聴に一致するという。
研究者らは、テレビを視聴しない場合には、男性で1.8年、女性で1.5年平均余命が長くなると推定している。

研究者らは「今回はオーストラリア人のデータを用いたが、長時間のテレビ視聴と疾病パターンの類似を考えると、他の先進国や途上国でも影響は同様であると考えられる」と述べている。

米エール大学(コネティカット州)医学部予防研究センター長は今回の研究について、「テレビの視聴が早期死亡の原因となるというのではなく、長時間視聴と寿命短縮に関連性があることが示されているだけである」と述べている。実際にはテレビの害は間接的なものだという。
一般的にテレビの視聴が長いと、無意識に物を食べることに時間を費やし、視聴が短いとより活動的になる。
「多食で運動が少ないのは、肥満リスクが高くなることを意味し、糖尿病、心疾患、がんなどの慢性疾患につながりやすくなる」と指摘している。
また他の説明としては、「テレビを見過ぎる人は、孤独あるいは孤立感、抑鬱感を抱くことになり、これらの状態が早期死亡をもたらす可能性がある」と付け加えている。

http://health.nikkei.co.jp/hsn/index.aspx?id=MMHEb1001022082011
いきいき健康 世界の健康最前線 2011.8.22(一部改変)

出典 Health Day News 2011.8.15
版権 Health Day

<私的コメント>
30分のテレビ視聴はたばこ1本と同様に11分寿命を縮めることになるとのこと。
1本たばこを吸いながら30分テレビを見れば22分の寿命短縮ということになります。
しかし、テレビが悪いのではなく肥満リスクが高くなるといった間接的な理由という腰砕けの結論のようです。
テレビ番組の内容(バカ番組か教養番組やニュースなど)にもよるでしょうが、テレビ視聴による認知症の発生頻度はどうなんでしょう。
「テレビばっかり見ているとバカになるよ」と日頃言っている立場として本当にバカになるとも思えません。
それにしても「24時間テレビ」ってちょっとクサくありませんか。
えっ。
私もちょっと見てました。
24時間見た方は528分、つまり9時間近く寿命を縮めたことになります。



<長寿 関連記事>

長寿には健康的な生活以上に遺伝子が強く関与

95歳以上まで生きられるかどうかを決める因子は生活習慣(ライフスタイル)ではないようだ。
長寿の人の多くは、一般の人に比べ健康的な生活を送っていたわけではないことが新しい研究で明らかにされた。
アルバート・アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)の研究者は、「もちろん生活習慣は重要だが、極めて長寿の人には遺伝子がさらに強く関わっているようだ」と述べている。

今回の研究では、老化防止研究において注目されている極めて高齢の人々に焦点を当てた。
自立した生活を送る95~109歳の高齢者を対象に、70歳時点での身長、体重、アルコール摂取、喫煙および運動の習慣のほか、当時低カロリー、低脂肪、低塩分の食事を摂っていたかどうかをたずねた。
被験者はいずれも遺伝的に類似するアシュケナージユダヤ人であった。
さらに、1970年代に調査した3164人(その当時に今回の被験者と同年代であった一般集団)の回答と比較し、長寿の人が一般集団と異なる生活をしていたかどうかを検討した。

その結果、概して長寿の人は特に健康的な食事を摂っていたわけではなく、喫煙や運動についても差は見られなかった。
例えば、95歳以上の男性で定期的に適度な運動をしていたと回答したのは43%であったのに対し、対照群の男性では57%であった。
しかし、95歳以上の人では男女とも過体重の比率は一般集団と同程度であったが、肥満の比率は有意に低かったという。

長寿の人が現在も喫煙などの不健康な習慣を続けているかどうかは明らかにされていない。
長生きの理由は何かとの質問に対し、3分の1が長寿家系を挙げたのに対し、運動の効果と回答したのは20%であった。
その他の回答としては、前向きな姿勢(19%)、多忙で活動的な生活(12%)、喫煙や飲酒を控える(15%)、幸運(8%)、宗教的または霊的な理由(6%)などがあった。
生活習慣因子が長寿に大きな影響を及ぼさないとはいえ、そのような遺伝子の恩恵のない人は、当然体重に注意し、喫煙を避け、定期的な運動をすべきであると研究グループは強調している。

イリノイ大学シカゴ校教授は、この知見で寿命における遺伝子の重要性が強調され、「特に長生きするチャンスがあるとすれば、出生時に遺伝子のくじに当たることだ」と述べている。
しかし、健康に関する選択の内容が他の人よりも早く死に導くことになる。
「われわれが自分の寿命について唯一コントロールできるのは、寿命を縮めることだ。われわれはそのコントロール(寿命を縮めること)を絶えず行っている」と同氏は指摘している。
この知見は、米国老年医学会(AGS)誌「Journal of the American Geriatrics Society」オンライン版に8月3日掲載された。

http://health.nikkei.co.jp/hsn/index.aspx?id=MMHEb1001012082011
いきいき健康 世界の健康最前線 2011.8.12(一部改変)

出典 Health Day News 2011.8.3
版権 Health Day


<私的コメント>
いささかショッキングな発表です。
ライフスタイルの改善が余り役に立たないということです。
しかし、この論文から学ぶべきことがあります。
それは、「われわれが自分の寿命について唯一コントロールできるのは、寿命を縮めることだ。」という言葉が示すように、体に悪いことを避ける、という生き方です。
具体的には、健康食品に飛びつくのではなく、禁煙や減塩や運動の欠如そしてテレビを見過ぎないといった悪いことをしないように励むといったことなのでしょう。
あれっ?
でもこれって、ライフスタイルの改善かも!


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2011.8.21 午前9時30分 撮影 「JR大阪駅 サウスゲートビルの植栽」


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