酸の強い飲み物に注意

酸蝕(さんしょく)症という症状がある。
炭酸飲料や果物などが含む酸で歯が溶け、冷たいものを食べた時などに歯がしみる知覚過敏が起こる。
さらに歯のエナメル質が変化して透明度が増したり、エナメル質が溶けて、その下の黄色い象牙質がむき出しになったりし、歯の色が黄ばんでいく。

一度溶けた歯を元には戻せない。
東京医科歯科大教授の田上順次さんは、「歯は毎日の食事で酸にさらされ、ある程度の酸蝕は仕方がありません。酸性の強い飲食物でも、そのとり方を工夫すれば、症状の進行を緩やかにできます」と話す。

まず、控えたいのは「ながら飲み」。
仕事や運転をしながら、だらだら飲み続けるのは、歯が常に酸にさらされていることになり、歯が溶けやすくなる。
ジョギングなど運動後の水分補給も注意したい。口の中が乾いて、口の中を中性に戻す唾液(だえき)が出にくい状態では、さらに酸蝕されやすくなる。

エナメル質が溶けだすのはpHが5・5より低く、酸性度が強くなった時。

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酸の強い飲食物をとった後、すぐの歯磨きは控えた方がよい。
酸にさらされた直後の歯は軟らかい。
ここで、歯を磨くと、さらに表面が削れやすいからだ。
歯磨きの目安は唾液の働きで口の中が中性に戻るまで、食後30分程度おくこと。
この間、唾液が含むカルシウムやリンが、溶けた歯を元に戻す再石灰化の働きもしてくれる。

田上さんは、「酸性の強い飲食物をとったらすぐ、お茶や水で口の中を中和させるのも有効です。赤ワインにチーズ、紅茶に牛乳など、再石灰化を促すカルシウムが豊富な乳製品を合わせるのも良いかもしれません」とアドバイスする。

出典 YOMIURI ONLINE yomi.Dr. 2010.1.21
版権 読売新聞社


<関連サイト>
歯磨きは食後10分たってから
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=47006
■食べ物は酸性のものが多く、アルカリ性のものはほとんどありません。
歯の表面にあるエナメル質は、酸性度をあらわすpH(ペーハー)値が5.4以下になると溶け始めます。
酸性に近いものを続けて食べると歯はそのまま溶けてしまう。
食べ物はほとんど酸性であるという認識を持っていただき、食後の予防に生かしていただきたいと思います。
■極端に酸性度が高いものというのは、食べて酸っぱいものですね。
酢の物、果物など、体にいいと言われているもの、おいしいと言われているものには気をつけなければいけません。
“うまみ成分”もほとんど酸性です。
■どっちが酸蝕歯になりやすいでしょう?
第1問
A 炭酸飲料
B コーヒー
(答えは炭酸飲料。読んで字のごとく、炭“酸”が入っています。)

第2問
A 豆乳
B ヨーグルトドリンク
(答えはヨーグルトドリンク。ヨーグルトの原材料に使われている牛乳は、pH値が約4.5以下にならないと固まらない。そのもの自体が酸性度の高いものです。体にいいと言われる乳酸菌は糖を原料として乳酸を出します。そういう意味でも歯にとっては非常に不利な食材です。)

第3問
A ワイン
B ビール
(答えはワイン。ビールは炭酸なのでもちろん酸性ですが、強い酸とはいえない部類に入るんです。一方、ワインは平均でpH値が3.8なので、飲み方によっては気をつけなければいけない飲み物です。味わってちびちび飲むような飲み方だと、非常に歯への接触時間が長くなるので不利です。白と赤ではどちらかというと赤の方が酸性が強いですが、どちらも酸性が強いという傾向は変わりません。)

■予防は食後の“うがい後10分”
もともと口の中のpH値は6.5の中性に近い状態ですが、食後はpHが下がって酸性に近くなり歯の表面がもろい状態になっていますので、そんなときに歯ブラシでゴシゴシこすってはいけません。
できれば食後は口を水でゆすいで中性に近づけて、10~15分たってから、やわらかめのブラシで傷つけないように磨くことです。



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