椎間板ヘルニア、薬で痛み緩和

椎間板ヘルニア、薬で痛み緩和 浸透

足や腰に痛みやしびれが起こる腰椎の椎間板ヘルニア
日常生活が送れなくなるほどの苦痛を取り除くために手術することもあるが、以前に比べて手術件数は減っているといわれる。
1~3カ月間、様子をみれば自然に回復してくることから、薬を使って痛みを和らげる治療が浸透している。

痛みは突然やってくることが多い。
記者(37)は、くしゃみをした瞬間やソファから立ち上がろうとしたときなどに痛みに襲われた経験がある。
今秋には、椅子から立ち上がったときに突然左足の裏から尻にかけて激痛が走って立てなくなり、救急病院に駆け込んだ。

再発率は約1割
椎間板ヘルニアは、背骨と背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板がつぶれて神経を圧迫し、足や腰に痛みやしびれが生じる。
患者は20~40代に多い。
つぶれた椎間板の場所によって圧迫される神経が異なり、痛みやしびれる場所は変わる。
足や足の指などに力が入らなくなるほどだと重症だ。

治療は消炎鎮痛剤などの薬物療法が基本。
これに、神経を圧迫している部位に麻酔剤を注射する「神経ブロック」や、腰を安定させるコルセット着用を組み合わせることも多い。
しかし、痛みが激しくて日常生活もままならない時などは、手術で神経を圧迫する部位を取り除く。

ただ、手術をしても生涯にわたって万全というわけではない。
再発率は約1割といわれ、同じ椎間板を傷めることもある。
記者は10年以上前に手術をしたが、このほど磁気共鳴画像装置(MRI)で椎間板の状態を調べると同じ場所を傷めていた。
一度手術をすると癒着が起こり、神経と周りの組織を区別するのが難しくなる。
手術の難しさは10倍以上になるという。

「昔に比べてヘルニアの手術件数は減っている」と指摘するのは大阪厚生年金病院脊椎外科の細野昇部長だ。
椎間板ヘルニアは何もしなくても1年経過すると7割の患者は回復する。
飛び出したヘルニアを体内の貪食細胞と呼ばれる細胞が食べるからだ。
「1~2年後の回復状況は手術の有無にかかわらずほとんど変わらない」(細野部長)。
発症直後の1~3カ月の激しい痛みを薬で耐えられれば手術を回避できる場合が多い。

最近は、痛みを抑える薬も増えている。
その一つが「プレガバリン(商品名リリカ)」。
もともとは帯状疱疹に伴う神経痛の薬だったが昨年10月に適応拡大された。
細野部長は「大幅な改善がみられる患者もいる。従来の治療の考え方を大きく変える可能性もある」と期待する。

麻薬系の薬もある。
今年4月に承認された経口薬「オピオイド(商品名トラムセット)」だ。
吐き気や眠気などの副作用があり、慎重に処方する必要があるものの、こうした腰痛治療に使える薬に対する現場の医師の期待は大きい。

投薬で日常生活を送れる程度までに痛みを緩和できた後に考えたいのが、悪化や再発を招きにくい体のつくり方。
大阪労災病院の小田剛紀・脊椎外科部長は「急性期ではなく症状が落ち着いたら、痛みを誘発しないように気をつけながら、ストレッチなどをしていい」と話す。

一度痛い目にあうと運動するのが臆病になりがち。
それだと筋肉が固まり、また傷めやすくなる。
関西労災病院勤労者予防医療センターの理学療法士、高野賢一郎氏は「耐えられる痛みならば、体を動かすことを恐れない。安静にしない」と訴える。
痛みがひいてきたらゆっくりとしたウオーキングから始め、徐々に早くする。
体によいといわれる水泳を取り入れる人も少なくないが、初心者などは泳いでいるときに腰を反ってしまい、かえって悪化させる場合があるので注意が必要だ。

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椎間板ヘルニアに限った予防法はない」と大阪労災病院の小田部長は話す。
対策は一般的な腰痛予防と変わらない。
基本は姿勢。
背筋を伸ばしてあごを引き、肩の力を抜く。
背骨を自然なS字形のカーブに維持した姿勢を保つ。
腹筋のなかでも特に重要なのが内臓を支えている「腹横筋」。
腰痛予防では腰ベルトを巻いて腹圧を高めて腰への負担を減らすが、腹横筋はこれと同じ役割を果たす。「下腹に力を入れて引っ込めて姿勢を維持する。歩行や立っているときでも全力の2割の力を維持してほしい」(高野氏)

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股関節の柔軟性を高めることも大切だ。
体を回す動きをする際は腰椎は旋回方向にはほとんど動かず、股関節が対応することで補っている。
ストレッチで股関節の柔軟性を高めると腰椎の負担を減らせるという。

腰痛は午前中に発生しやすい。
同じ姿勢を続けるのも悪化要因。適度な運動をするといった基本に立ち返って日々過ごすことが激痛を避ける最善策だ。 (松田省吾)

出典 日経新聞・夕刊 2011.11.25
版権 日経新聞

<私的コメント>
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これは記事の中の腰椎MRIの写真です。
整形外科、特にこの設備を持たない無床診療所では単純写真だけで椎間板ヘルニアの診断をしていることがしばしばです。
設備がなくても、病院などへ紹介すれば済むだけの話です。
患者さんで、腰痛でたとえ整形外科へ通院中であっても腰椎MRIを撮っていない場合には私はこの検査をお薦めしています。
写真でわかるように骨の写真だけでは椎間板ヘルニアの診断は困難だからです。


<番外編>
新種豚インフル3人感染確認 米、人から人への感染疑い
米中西部アイオワ州で子ども3人が新種の豚インフルエンザウイルス(H3N2型)に感染していたことがわかった。
いずれも豚と直接接触していないことから、米疾病対策センターCDC)では、人から人に感染した疑いがあるとみている。

3人はいずれも軽症で、すでに回復している。

見つかったウイルスは、2009年に新型インフルエンザとして世界的に流行し、現在は季節性インフルエンザになったH1N1型の遺伝子の一部を含んでいた。

出典 asahi.com 2011.11.26
版権 朝日新聞社

<私的コメント>
感染した3人は生後11カ月と2、3歳の男女児。
米国では7月以降、同ウイルスへの感染がこのほか7人報告されていたのですが、豚との接点がないのは今回が初めてということです。
今のところ3人以外の感染は確認されておらず、CDCは「広がりは限定的」とみています。
しかし、どういうことが新種豚インフルが見つかるきっかけとなったのか不思議です。


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