擦り傷は乾かさず治す 痛み抑え、早く治り、痕残りにくい
転んで擦りむいたら、消毒薬で傷口を殺菌し、ばんそうこうを貼る──。一定の年齢以上の人にとっては、ごく常識的な対処だろう。
しかし、今は、しみ出てくる体液を生かし、傷口を湿った状態に保つ「湿潤療法」が、広く知られるようになってきた。
痛みを和らげ、治りが早く、傷痕が残りにくいという。
傷口にガーゼを当てると、せっかくの滲出液を吸い取ってしまい、患部が乾いた状態になる。
患者は痛みを感じ、雑菌が繁殖しやすくなるという。
患者は痛みを感じ、雑菌が繁殖しやすくなるという。
まず、傷口を清潔に保つ。消毒薬を使う必要はない。
水道の水で、しっかりと砂などの異物も洗い流す。
水道の水で、しっかりと砂などの異物も洗い流す。
次に、傷口を清潔な布などで押さえ、水分をふき取り、止血する。
滲出液は透明で薄い黄色、さらさらしている。
これに対し、膿は黄色や緑色をしており、どろっと粘性がある。
患部が化膿(かのう)したときは、何よりも、ずきずきとした痛みが続く。
こんな状態のときは、病院へ行った方がいい。
これに対し、膿は黄色や緑色をしており、どろっと粘性がある。
患部が化膿(かのう)したときは、何よりも、ずきずきとした痛みが続く。
こんな状態のときは、病院へ行った方がいい。
米医薬・日用品大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人によると、湿潤療法のばんそうこうを、傷口にぴったりと貼るコツは、ばんそうこうを温めること。
傷口に貼る前、小分けの包装から取り出し、両の手のひらで挟んで1分間ほど温める。
湿潤状態を保護するための素材が軟らかくなり、皮膚になじみやすくなるという。
傷口に貼る前、小分けの包装から取り出し、両の手のひらで挟んで1分間ほど温める。
湿潤状態を保護するための素材が軟らかくなり、皮膚になじみやすくなるという。
傷口に貼ったら、その上から、手のひらを当てて、また温める。
こうして、傷口や周辺に確実に貼りつけられる。
こうして、傷口や周辺に確実に貼りつけられる。
◇ ◇
米国の大火で注目
湿潤療法が注目されるようになったのは、1942年の米国ボストンでの火災からだ。
ナイトクラブ「ココナツグローブ」の火災では、負傷者が数百人にのぼり、医薬品の供給が十分でなかったという。
湿潤療法が注目されるようになったのは、1942年の米国ボストンでの火災からだ。
ナイトクラブ「ココナツグローブ」の火災では、負傷者が数百人にのぼり、医薬品の供給が十分でなかったという。
当時、やけど・ケガは、患部の滲出液を乾かす治療法が主流だった。
しかし、包帯やガーゼが不足する中、やむなく病院関係者は、やけどの水疱(すいほう)をやぶれないようにし、患部を湿潤したまま保護する方法をとった。
しかし、包帯やガーゼが不足する中、やむなく病院関係者は、やけどの水疱(すいほう)をやぶれないようにし、患部を湿潤したまま保護する方法をとった。
結果、患部を乾燥させたときよりも、回復は早く、雑菌の感染もほとんどなかった。
このとき治療に当たった中心人物が、ハーバード大学の外科教授、オリバー・コープ博士。
コープ博士は、やけどの患部を乾かす治療方法に常々疑問を抱いており、「湿潤療法」の成果に自信を深めた。
このとき治療に当たった中心人物が、ハーバード大学の外科教授、オリバー・コープ博士。
コープ博士は、やけどの患部を乾かす治療方法に常々疑問を抱いており、「湿潤療法」の成果に自信を深めた。
その後、英国の動物学者、ジョージ・ウィンター博士が62年に「傷は滲出液を逃がさないようにした方が早く治る」という論文を発表。湿潤療法が欧米で広く知られるようになったという。
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