リウマチ治療、外科と薬物連携

リウマチ治療、外科と薬物連携 リハビリ体制も充実

全国に約60万人の患者がいる関節リウマチは、しくしく痛む程度から関節の軟骨が破壊される重症のケースまである。
初期は薬物治療が有効だが、症状が進むと滑膜切除や人工関節への置き換えなど外科治療も必要だ。
日本経済新聞社が「日経メディカル」誌の協力を得て実施した「日経実力病院調査」では、内科と整形外科のチームで外科と最新の薬物治療を組み合わせ、リハビリテーションも充実させる施設が目立った。

 
関節リウマチは関節の「滑膜」と呼ばれる部分に炎症が起き、関節が腫れて痛む。
関節は骨と骨との間でクッションの役割を果たす軟骨と、それらを包み込む「滑膜」「関節包」と呼ばれる組織などで形成され、滑膜は関節液を分泌して関節の動きをなめらかにする役割がある。

手や指の付け根、手首、指の第2関節に起こりやすく、進行して慢性化すると炎症が軟骨や骨に侵入して関節が変形したり破壊されたりする。
主に40~50歳代の女性に多く、男女比は男性1に対して女性が5の割合といわれる。
自分の細胞を免疫細胞が間違って攻撃するメカニズムは分かっているが、その原因は未解明で、喫煙などの環境要因に加え軽い遺伝的影響もあるといわれている。

今回の調査で2010年7月から11年3月に関節リウマチの「手術あり」が全国最多の182例だった東京女子医科大病院(東京・新宿)。
設立から約30年がたつ膠原病リウマチ痛風センターは、膠原病痛風患者も通うが、主体はリウマチ治療。
患者数は7千人程度で全国の患者数の約1%にあたる。

同センターでは発症から、変形しすり減った関節を人工関節に置き換える関節置換術を受けるまでの期間が、10年間で3~4年延びて18年になった。
一方で、なるべく患者の関節を切除せず、変形を医療用シリコンで治療し元の位置に戻す手術が得意。
手足の指など小さな関節も、発症前と変わらない見た目を取り戻すよう心がけているという。

異常な働きをする免疫細胞を薬で抑えるほか、悪くなった膝や肘、手足の指などの関節を手術する。
桃原茂樹副所長は「早期に診断して早期に治療を開始することが、比較的良好な経過につながる」と強調する。

「手術なし」が661例と最多だった「甲南病院加古川病院」(兵庫県加古川市、4月から甲南加古川病院に改称)は患者の6割が関節リウマチ。
内科と整形外科のリウマチ専門医12人でチーム医療を行う。

関節リウマチと診断すれば、間質性肺炎感染症などの副作用を注意しながら免疫抑制剤「メトトレキサート(MTX)」を投与し、3~6カ月ほど症状を見る。改善がない場合は高額だが生物学的製剤(バイオ製剤)の使用を勧める。
バイオ製剤はMTXと併用すれば効果が極めて大きいが、これもツベルクリン反応や胸部コンピューター断層撮影装置(CT)、結核の確認などを行い安全な治療に細心の注意が払われる。

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同病院の塩沢和子リウマチ膠原病センター長は「バイオ製剤が効く患者は6~7割」と話す。
可能な限り薬で沈静化させるが、「炎症が治まっても関節破壊が進むケースもあり、手術が必要になることも多い」(中川夏子副センター長)。
手術後は、関節の変形を抑えるため院内で作業療法士が装具を製作し、理学療法士によるリハビリで日常動作の復帰を目指す。温水プールでのリハビリも行う。

「関節リウマチの治療は、ここ10年で投薬の考え方が大きく変わった」と、東邦大学医療センター大森病院リウマチ膠原病センター(東京・大田)の川合真一教授は話す。

以前は炎症を抑える薬などから始め、改善が少なければ免疫抑制剤などの副作用はあるが効果の大きい薬に切り替えていたが、それを見極める間に病気が進行するデメリットもあった。
しかし1990年代に「関節破壊は最初の2年間で急激に進む」との研究結果が広まり、免疫抑制剤などをすぐに使い、初期の段階から病気の悪化を強力に抑える治療方法が確立された。

11年2月にはMTXが治療の早い段階での使用を認められ、バイオ製剤も現在6種類が国内で承認されている。川合教授は「手術が必要になるほど進行する比率は大きく下がった」と話す。今後、薬物治療の比重は高まりそうだ。

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出典 日経新聞・朝刊 2011.3.29
版権 日経新聞




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(会期中に是非見に行きたいものです)


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