背骨の骨折、風船で治す

背骨の骨折、風船で治す つぶれた椎体に空間、セメント詰める

転倒などで背骨がつぶれたように折れてしまう脊椎圧迫骨折。
骨粗鬆症の患者に多く、閉経後の女性を中心に国内では推計で年間90万人近くが骨折しているという。
最近は入院期間を大幅に短縮し、痛みをすぐに緩和できる新しい治療法も広まってきた。

●手術翌日に退院可能
東京都の女性(63)が脊椎圧迫骨折になったのは、5年前のことだった。
転んで腰を強打し、第1腰椎の圧迫骨折と診断された。

3カ月ほど安静にしていると、何となく痛みは消えたという。
しかし、実際には偽関節になっており、1年後に再び激痛が走った。偽関節とは骨折した部分が、つかなくなる状態だ。

コルセットで固定したものの、1年たっても骨はつかない。
偽関節が神経を圧迫し始めており、脊椎の固定術を受ける決心をした。

固定術は自分の骨と金属で、脊椎を構成している椎体のうち、骨折している椎体を上下のものと固定する手法だ。
手術は5時間以上かかり、骨がつき始める3週間はベッドに寝たまま、身動きすら禁止された。

ところが、骨密度が低くて金属の固定が緩んだため、さらに3週間の寝たきり状態を強いられた。
「地獄でした。
もう、同じ手術は受けたくありません」

圧迫骨折は骨粗鬆症の患者に多い。
米国での統計では、一度経験すると、違う椎体で発生するリスクは5倍になるという。
この女性も第4、第3腰椎が次々と折れてしまった。

激痛に悩まされていた昨年1月、バルーン・カイフォプラスティ(BKP)という治療法を知った。保険適用されたばかりだった。

BKPは90年代に米国で開発され、X線で確認しながら骨折した椎体にバルーン(風船)を入れて膨らませる手法だ。
つぶれた椎体を元の形に近づけ、広げた空間に粘性の高い骨セメントを詰めて固定する。手術中に固まり、すぐに痛みが緩和されるという。

BKPの検査を受けると骨粗鬆症だったことが分かり、骨粗鬆症の治療を手術前から開始した。
BKPの手術では腰に5ミリの穴を2カ所あけただけで、抜糸の必要もなかった。

手術は1時間もかからずに終了し、その日のうちに歩くこともできた。
「手術した感覚がなく、お辞儀をしても痛くない。骨がつくまで我慢する必要がないのがいいですね」

高額療養費制度を申請すれば、1週間の入院で60代の自己負担なら10万円を下回る。
コルセットをつけることなく、早ければ手術の翌日に退院できるという。

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骨粗鬆症の治療重要
脊椎圧迫骨折の治療は、コルセットなどで固定するのが一般的だ。
3カ月ほど固定しても、1~2割は偽関節になるという。
そのままの状態だと神経に異常が出ることもあり、大がかりな固定術が必要になる。

自由診療の椎体形成術では粘性の低い骨セメントなどを骨折した椎体に注入するため、漏れて固まったものが神経に当たってしまう合併症も報告されている。
そこで、より安全性を高めたBKPが開発された。

BKPでは風船を膨らませて空間をつくるため、すぐに固まる粘性の高い骨セメントを詰めることができるという。
風船で圧縮された組織が壁になり、漏れにくくなるのも利点だ。

BKPの臨床試験を主導した浜松医大病院整形外科の戸川大輔医師は「多くの患者さんが痛みを安全に取り除き、自立した生活に早く戻れる。ただ、骨粗鬆症の治療をしっかり行わないと、圧迫骨折を繰り返してしまう」と指摘する。

鳥取大病院リハビリテーション部の萩野浩部長は「骨粗鬆症の骨折では圧迫骨折が圧倒的に多く、高齢になるほど高くなる。50歳を過ぎたら、骨密度や骨粗鬆症の検診を勧めたい」。

圧迫骨折にならないためには、骨粗鬆症の治療を早く始めることが重要だという。
骨折が治ったら背筋だけでなく、転ばないよう足腰の筋肉を鍛えることも大切だ。

出典 朝日新聞・朝刊 2012.3.27
版権 朝日新聞社


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フォート・デ・ルッシー
米軍が保有している緑豊かな公園。 公園の近くにはアメリカ陸軍博物館があります。
http://hawaii.navi.com/miru/147/

撮影 現地時間 2012.3.17 10:43