血糖値の変動を測る 皮膚にセンサー

血糖値の変動を測る 皮膚にセンサー、糖尿病の投薬量調整

糖尿病患者が、1日の血糖値がどのように変動しているか測って、治療に役立てる持続血糖測定(CGM)が普及してきた。
皮膚に針を刺しセンサーで連続して測る。4月からはより小型で使いやすい機種も登場する。
ただ、欧米に比べて機器の選択肢が限られるなど課題もある。


●「体調良くなり就職」
東京に住む団体職員のKさん(30)は小学生だった1991年に1型糖尿病を発症した。
電池で動くインスリンポンプで、設定した量のインスリンを自動的に体に入れる。

2010年夏に都内の病院でCGMをうけた。
センサーで皮下組織でのブドウ糖濃度を連続的に測った。

3日連続で測定した血糖変動グラフと、測定中の自覚症状のメモを比べると、「血糖値と自覚症状が一致していた」。体がさび付くような疲労感を感じる時は、血糖値が急上昇。
おなかがすいてそわそわする時は血糖値が下がっていた。

測定結果をもとにポンプのインスリン量の設定を微妙に変更した。
血糖値が安定して、つらい症状が出ることが減り体調が良くなった。
「これならば責任を持って働ける」と自信がついて、その年の秋には今の職場に就職が決まった。

CGMが公的医療保険で使えるようになったのは10年4月から。
1型糖尿病患者を中心に、糖尿病を専門にする全国の医療機関で使われるようになってきた。
06年から装置を入手し研究を続けてきた東京慈恵会医科大糖尿病・代謝・内分泌内科の西村理明准教授は「点で見ているのと線で見るのでは全然違う」という。

インスリン注射が必要な1型糖尿病の治療では血糖の自己測定が普及している。
指などに針を刺し血液中の血糖値を測る。
現在の血糖値を知るためには有用な方法だが、1日に何度か測定しても血糖値は点でしか見えない。

CGMを使った例では食後の高血糖や、睡眠中の低血糖がわかる=
センサーにつながった装置に測定結果が記録される。
3日間連続で測った後、パソコンにつないで測定結果を見ることができる。

医療機関向けに装置を販売する日本メドトロニックによると、小型に改良した新機種を4月下旬に発売する。
防水タイプなのでつけたまま入浴できるという。

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●承認待たれる新機種
みながわ内科クリニック(横浜市栄区)の皆川冬樹院長は6年前からCGMを使ってきた。
「1型糖尿病患者では適切にインスリンを補充するために、メリットが大きい」と語る。
特にインスリンポンプを使う患者には、微妙な設定をするために活用している。 
ただ、一部の大病院を除き、一般の病院や診療所では患者への説明や指導の人手も十分ではないため、なかなか広がらないという。
インスリンポンプも機器が高価で、専門の医師が不足しているために使っている医療機関は限られる。 また、西村准教授は「患者が現在の血糖値を知ることができるリアルタイムCGMが日本では使えないのが問題」という。
いわゆるデバイスラグ(使える医療機器の国外との差)だ。 
日本で国の承認を受けているCGMは現在の血糖値は表示されない。
欧米では血糖センサーから電波でデータを飛ばし、現在の値が小型の装置にデジタル表示されるリアルタイムCGMが使われている。
高血糖低血糖を知らせるアラーム機能もある。これを使うと長期的に血糖値が改善されるという研究結果もある。 
西村准教授は「1型糖尿病はインスリンをきちんと補えば普通に生活を送れる病気だ。新しい装置で血糖値の変化が常にわかれば、生活の幅が広がる」と指摘している。

◆キーワード
<1型糖尿病> 膵臓(すいぞう)のβ細胞が壊されてインスリンが欠乏する病気。生活習慣病とされる2型糖尿病とは治療法が違い、インスリンを補充する注射が生涯必要になる。日本の小児で発症率は10万人あたり年間1・5人とされる。