1型糖尿病の血糖管理助ける新たな測定器

= 1型糖尿病、血糖管理助ける = 
血糖値を調節するインスリンがつくられなくなる1型糖尿病の患者は、インスリンを毎日注射して補う必要がある。
昨年、血糖値を下げる薬がこの病気の治療薬として承認された。
血糖値の変動をつかみやすい新たな測定器も次々と登場し、難しいとされる血糖値のコントロールに役立つと期待される。
専門家は、適切な使用を呼びかける。

注射と併用、新しい薬
茨城県に住む60代女性は2005年、1型糖尿病と診断された。
1日4回インスリン注射を続けたが、その直近1~2ヵ月間の血糖状態を示す「ヘモグロビン(Hb)A1c」は、日本糖尿病学会が定めた合併症予防の目標値(7%未満)より高い8%台が続いた。
 
女性は16年、血糖値を下げる薬「スーグラ」の治験に参加した。
インスリン注射とともに1日1回のんだところ、HbA1cは3~4ヵ月後に7%台になり、1年後には7.1%まで下がった。
「1日1回のむだけで負担が少なく、血糖も改善できてよかった」と本人はいう。

1型糖尿病は、本来自分を守る免疫が暴走するなどして膵臓のβ細胞が壊され、インスリンがつくれなくなる病気だ。
インスリンの働きがないと血液中のブドウ糖を肝臓や筋肉、脂肪などに取り込めず、高血糖になってしまう。
 
糖尿病患者の9割以上を占める2型糖尿病は、遺伝的要因のほか、肥満や過食、運動不足など生活習慣が影響することが多い。
1型はそれとは関係なく、突然発症する。
 
高血糖が続くと、網膜症や腎症、脳梗塞心筋梗塞などの合併症を起こす恐れがある。
防ぐには血糖値を安定させることが大切で、患者は食事前や朝晩などにインスリンを自分で注射して補う必要がある。
ただ、コントロールは難しい。
血糖値を下げるためにインスリン量を増やすと、意識障害を起こす重症低血糖になる恐れもある。
 
スーグラは腎臓が糖を取り込む働きを妨げて、尿として出すことで血糖値の上昇を防ぐ。
14年に2型糖尿病の治療薬として承認されていた。

治験をへて、昨年12月、成人の1型糖尿病の薬としても承認された
1型糖尿病患者に使えるのみ薬は、腸の糖吸収を遅らせるタイプがあったが、初めて腎臓に働くタイプの薬が使えるようになった。
 
血糖が改善することで、使うインスリンの減量にもつながる。
 
服用の際は注意も必要だ。
インスリン注射を中止や過度に減らした人、過剰な糖質制限をしている人などがのむと、意識障害に至る糖尿病ケトアシドーシスを起こす恐れがある。
スーグラはインスリンの代替薬ではない。

変動を知る測定器 医師の指導で
血糖値の変動の傾向をつかめる新しい測定器も、相次いで登場している。
 
17年に公的医療保険が適用された測定器「フリースタイルリブレ」は、小さな針のついたセンサーを腕につけて皮下組織の糖濃度を連続して測る。
センサーに読み取り機をかざすと、直近の血糖値と、変動の様子のグラフが表示される。
 
昨年12月に叫「リアルタイムCGM」という測定器が2種類、公的医療保険の適用となった。
わき腹につけたセンサーからのデータをもとに、専用端末やスマートフォンに常時血糖値を表示。
低血糖高血糖が予想されると、アラームが鳴る機能もある。
  
変動の傾向を踏まえてインスリンの量や注射のタイミングを調節することで、血糖値の安定につながる。
 
ただ、いずれの測定器も皮下組織で測るため、実際の血糖値とずれが生じる。
指先に針を刺して採血する血糖測定との併用が原則だ。
表示された数値を見て自己判断でインスリン量を変えると、かえって血糖値の変動幅が大きくなる恐れもある。
  
日本糖尿病学会は今年1月、リアルタイムCGMについて、低血糖のリスクが低く、血糖コントロールが安定している患者、医師の指導に従わずに指先に針を刺す血糖測定をしない患者らは適応外などとする使用指針を出した。

朝日新聞・朝刊 2019.2.27