痔にならないためには

痔にならないための生活習慣とは

ひそかに痔の悩みを抱える人は少なくない。
日本人の3人に1人は痔になった経験があるという試算もあり、実はごく一般的な不調である。
痔にならないための生活習慣のポイントにはどんなものがあるのだろうか。


■男女の差なく発症
痔は男性の病気と思っている人が多いかもしれない。
しかし、実際には男女差はほとんどなく、幅広い年齢層で発症する。

昔は女性が受診しにくい印象があり、女性が少ないと思われていたが、最近では女性も気軽に受診できるようになってきた。
実際、ある診療所では患者の8割は女性で、その7割が20~40歳代だという。

そもそも痔とは、肛門にかかる様々な負担が原因で肛門の内側、外側にある「クッション」の部分が大きくなってしまったり、肛門の外に出るようになったりする病気のことだ。

主に3つの種類がある。1つ目はいわゆる「いぼ痔」で「痔核」といわれ、痔の5~6割を占める。
2つ目が「切れ痔」ともいわれる「裂肛」で女性に多い。
3つ目がお尻に膿(うみ)のトンネルができる「痔ろう」。
男性がなりやすい。

予防や悪化を防ぐには、肛門にかかる負担を軽減する必要がある。
最大の負担原因が便秘や下痢などの排便異常だ。

便秘になると長時間、くり返しトイレでいきむため肛門に強い圧力がかかり、クッション部分がうっ血しやすい。
またクッションを支える組織が緩んで大きくなり肛門の外に出る脱出を起こす。
さらに、硬い便は肛門を傷つけて裂肛を起こす原因にもなる。
下痢の場合には便が勢いよく肛門を通過したり、何度もトイレでいきんだりするのが負担となる。

イメージ 1



■しっかり朝食とり、胃腸の働き活発に
排便異常を防ぐには、生活習慣の見直しが不可欠だ。
まず便秘予防には、しっかり朝食をとり胃腸の働きを活発にして「起きたら出す」習慣を身につける。
加えて「便意を感じたらすぐに排便することも大切。
せっかくの便意を逃すことこそが便秘につながる。
特に女性は家族の世話や仕事で、行きたいときに行けないことが少なくない。
朝に時間の余裕を作ってほしい。

無理なダイエットによる食事量の少なさや、水分の摂取不足も便秘を招くもと。
暑さで水分が奪われるこれからの時期は十分に水分をとりたい。
一方、アルコールの多飲は下痢につながるので控えたい。

もう一つのポイントが、トイレでの過ごし方。
痔の手術が必要だった人の排便時間は20分以上が多かったが、手術までは必要なかった人は5分以内だった。
いきむ時間や回数が多いほど肛門に負担がかかる。
排便時間は3分以内にし、無理に出し切ろうとしないことが大切だ。


■排便後は温水で洗浄
おしりを清潔に保つことも重要だ。
排便後は温水で洗うといい。
紙で拭くだけでは便の残りを肛門のしわの中にすり込むことになり、それが刺激となって炎症を引き起こす可能性がある。

ただ、温水便座を使う場合に「温水をお尻の中に入れてあたかも浣腸のように使う人がいるが、それは間違い。
習慣になってしまうとそれなしで排便しづらくなったり、後から水分が流れ出てきて不潔な状態になることがある。

温水はやさしくかけ、洗い終わったら紙をこすらず、押し付けるようにして水分を拭き取り、十分に乾燥させる。

おしりを清潔に保つには入浴も有効だ。
体が温まり、血行も良くなる。

同じ姿勢を続けないこともおしりをうっ血させないコツ。
座り仕事や立ち仕事が多い場合には途中で体を動かすようにする。
肛門付近をキュッと締めてから力を抜く、おしりエクササイズを数回繰り返すといい。

イメージ 2



◇            ◇

手術不要の注射治療も
患者数が多い痔核。
初期は排便時に出血する程度だが、症状が進むと排便時に痔核が肛門の外に出る脱出を起こす。
それが指で押さないと戻らないようになり、さらには指で押しても戻らなくなる。
以前は半導体レーザーで痔核を小さくしたり、痔核を手術で切り取ったりしていた。
しかし、最近では手術なしで治す方法が出てきた。

これは、ALTA療法といわれるもので、肛門の内側にできた痔核(内痔核)が脱出した場合の治療が可能だ。
痔核に直接薬液を注射して血液の量を減らすため、徐々に痔核は縮小。
伸びていた組織が元の位置に戻って脱出が治る。
通常、治療後数日から1カ月で脱出がなくなる。
切除しないため肛門が狭くならないので肛門機能も維持できる。
治療にかかる時間は10~15分。
施設により日帰り可能で、翌日から仕事ができるという。 (ライター 武田 京子)

出典 日経プラスワン 2012.6.16(一部改変)


読んでいただいて有り難うございます。
コメントをお待ちしています。

他に
井蛙内科開業医/診療録(4)
http://wellfrog4.exblog.jp/
(H21.10.16~)
井蛙内科開業医/診療録(3)
http://wellfrog3.exblog.jp/
(H20.12.11~)
井蛙内科開業医/診療録(2)
http://wellfrog2.exblog.jp/
(H20.5.22~)
井蛙内科開業医/診療録 
http://wellfrog.exblog.jp/
(H19.8.3~)
(いずれも内科専門医向けのブログ)
「井蛙」内科メモ帖
http://harrison-cecil.blog.so-net.ne.jp/
http://harrison-cecil-lobe.blog.so-net.ne.jp/
(「井蛙内科開業医/診療録」の補遺版)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
http://blog.m3.com/reed/
(循環器専門医向けのブログ)
「葦の髄」メモ帖
http://yaplog.jp/hurst/
(「葦の髄から循環器の世界をのぞく」の補遺版)
があります。