「糖質制限食」、是非巡り論争続く

糖質制限食 是非巡り論争続く

安全に懸念、筋肉量減らす
糖尿病・肥満の予防を期待
炭水化物の主成分「糖質」の摂取を減らす「糖質制限食」の是非を巡る論争が続いている。
ダイエットや血糖値の管理に生かす動きがある一方で、極端な制限は安全性に問題があるとする見方も根強い。
糖質制限食に統一した手法がなく混乱を助長しており、広く使われている「カロリー制限食」のように方法を確立する必要があると専門家は指摘する。

英米では部分容認
■血糖値が高くなったときの食事療法はカロリー制限が主流だ。
ただ、カロリーを計算する手間と空腹感が残るため長く続けにくい課題がある。
カロリー制限食の効果を認めつつも、より実行しやすい道として糖質制限食の積極的な導入を唱える医師もいる。

糖質制限食の基本は1日の糖質量を130グラム以下に抑えること。
1食あたり20~40グラム。
ご飯なら茶わんに半分弱、6枚切りの食パンなら半切れが約20グラムに相当し、おかずが多めになる。
イモ類や揚げ物の衣などにも糖質が含まれるので注意が必要となる。

■「1日130グラム以下」は糖尿病患者でもあった米国のリチャード・バーンスタイン医師が1970年代に始めた治療法が根拠となっている。

糖質制限食は当初、特殊なダイエット方法として否定的に受け止められていた。
海外で大規模な追跡調査が積み重ねられ、2年程度の短期間なら体重の減少や血糖値の上昇を抑える効果が徐々に認められてきた。
11年の英糖尿病学会に続き、13年に米糖尿病学会も糖質制限食を部分的に容認する見解を表明した。

■これに対し日本糖尿病学会は従来の考えを貫く。
13年には「糖尿病における食事療法の現状と課題」と題した提言をまとめ、糖質制限食の安易な利用に注意を呼びかけた。糖質を減らしてもカロリー摂取が増えれば効果に疑問が残るうえ、長期的な効果と安全性に科学的な根拠がない点を問題視している。

■糖質の不足から、筋肉のたんぱく質を分解して肝臓内で糖につくり替える反応が起き、筋肉が細くなっていく心配もある。
高齢者の場合、寝たきりや他の病気を引き起こすリスクが高まると指摘する専門家もいる。
国民全体の炭水化物の摂取量は頭打ちになっているのに、糖尿病患者数は増えている。
糖質だけを悪者扱いするのはおかしいという意見もある。

社会の関心は高い
糖質制限食を推進する医師らからは、個々の診療経験から反論するが、科学的な議論の対象となるようなデータをまとめて公表していないため、議論は水掛け論になりがち。
推進論と反対論が対立した状況が続いている。
背景にha、糖質制限食に定まった方法がない問題がある。
摂取量をどの程度に抑えるのが適切なのか、判断する材料が少ない。

■健康な人がダイエットで糖質制限食を試す点に支障はないが、糖尿病患者の場合には慎重な管理が欠かせない。

糖質制限食を巡る主な動き
スウェーデン社会庁
 糖質制限食の導入を容認(2008)
英糖尿病学会
効果と安全性の科学的根拠が乏しいものの、糖質制限食を選択肢の一つとして支持(2011)
日本病態栄養学
 糖尿病治療における低炭水化物食の是非について討論会を開催(2012)
日本糖尿病学会
「極端な糖質制限食は科学的根拠が不足し薦められない」とする提言を発表(2013)
米国糖尿病学会
 全ての糖尿病患者に適した唯一無二の食事パターン、炭水化物・蛋白質・脂質の理想的な比率を示す科学
 的根拠はないとする声明を公表(2013)
出典  日経新聞・朝刊 2014.1.26(一部改変)
版権  日経新聞

私的コメント
日本糖尿病学会」と「米国糖尿病学会」のどちらが正しいことを言っているか?
皆さんは、どう思われますか。
日本糖尿病学会 の 「極端な糖質制限食は・・・」はという文言。
「適度な・・・」ということには触れておらず官僚言葉です。
従来の「バランスのとれた」カロリー制限を頑(かたくな)に守ろうとする姿勢が明かです。
米国糖尿病学会の声明は、日本糖尿病学会(世界的にはガラパゴス化)に対する「当てつけ」にも感じられます。