2014.3.10

糖尿病薬、選択肢多様に―効果、個人差大きく 「自分に合う処方」相談を

疑いのある予備軍も含めると2000万人以上いるとされる糖尿病で様々な薬が使えるようになってきた。ここ10年あまりで種類が増え、うまく組み合わせて適切に使い続ければ血糖値をコントロールできる人もいる。
ただ薬の使い方が複雑で、効き方は体質や生活習慣による個人差が大きい。

血糖値を管理・調節
■個別にきちんと薬の指導を受けた人は受けなかった人に比べて血糖値が下がりやすく、そのまま維持しやすい。

■主に専門の看護師がマンツーマンで血糖値に合わせた服薬の指導や生活状況の相談に応じる糖尿病透析予防指導を月に1度ずつ受けた30人の患者と、受けない患者を比べると明らかだという。
糖尿病薬は種類が増えたので、現在の薬が自分に効果があるかどうか不安に思っている患者も多い。
効果をきちんと評価することが、薬を切り替えたり、服薬を継続するためにも大事だ。

■日本人は欧米人より血糖値を下げるインスリンの分泌が半分程度と少ない傾向にある。
加えて脂肪の多い食事の増加や運動不足で膵臓が疲弊し、十分に分泌されなくなったり、インスリンの効き目が低下したりして発症しやすくなっている。

■初めは症状がほとんどないが、放置すれば確実に進行する。
健診を受けて糖尿病の疑いがあると言われたら、まだ大丈夫だと思わずに、できるだけ受診して治療を始めるのが血糖値のコントロールには効果的だ。

■治療の基本は食事療法と運動療法
血糖値が上がらない食事量や献立を探ったり、運動してインスリンの効き目を良くしたりする。
3ヵ月以上改善がない場合には薬物療法を始める。

日本糖尿病学会は最初にどの薬を使うとよいのかを示していないが、医師が処方する薬はいくつかのタイプに大別できる。
1つは肝臓などに働きかけてインスリンの効き目を良くするタイプ。
ビグアナイド薬が代表例で、過去2ヵ月の平均血糖値を示すHbA1cが6~7%程度(日本独自の値JDS)の軽い糖尿病の人でも使える。
私的コメント;現在はJDSではなくNGSPという国際基準値が使用されます。
NGSP値はJDS値に0.4%を加えた値となります。

■日本では副作用を恐れて処方を控える医師もいるが高齢者や腎機能不全の人を除き低血糖も起こしにくく非常によく効くため欧米では最初に推奨される。

■最近種類が増え、よく使われるのがDPP4阻害薬やGLP-1受容体作動薬などのインクレチン関連と呼ばれる薬。
インクレチンは消化管のホルモンで、膵臓に働いて血糖値が高いときだけにインスリンの分泌を促す。
インクレチンを分解してしまう酵素のDPP4の働きを抑える飲み薬と、DPP4に分解されないように加工したGLP-1を注射する薬がある。
インスリンの分泌が不十分な人に効きやすい。
特に食事や運動療法ができている患者にも有効な場合が多い。
GLP-1は注射薬だが、食欲を抑えるため体重が増えにくい。
血糖値が下がりすぎる低血糖も起こりにくい。

未知の副作用も
■最近は1週間に1度の注射で済む薬もあり認知症などで訪問看護を受ける人や毎日勤めに出て平日は注射が打てない人にとっての選択肢が広がった。
ただ日本で使えるようになったばかりで、長く使ううちに未知の副作用が出る恐れがある。

■古くから使われるスルホニル尿素(SU)薬も効果は高い。
ただ体重増加のほか、低血糖を起こしやすいので注意が必要となる。

■血糖値がコントロールできない場合は、1つの薬で量を増やすよりも作用の異なるいくつかの薬を併用する場合が多い。
組み合わせが決まっている。
食事療法や運動療法も進めながら同じ薬(併用薬も含む)で原則2~3ヵ月効果がなければ薬の変更もあり得る。

■糖尿病は血糖値を適切にコントロールできるかどうかにかかっている。
うまくいかないと進行し、合併症を起こす恐れが高まる。

出典 日経新聞 2013.12.27 (一部改変)
版権 日経新聞