痛風対策

暑くなる季節は、足の親指の付け根などが腫れて激痛に襲われる「痛風」の発作が多くなる。
発汗などで体内の尿酸の濃度が高まるのが原因といわれる。
痛風は飲み過ぎや食べ過ぎ、食生活の欧米化などを背景に、若い男性に増えている。
食事や運動などに気をつければ痛風だけでなく他の生活習慣病の予防にもつながる。


痛風対策、生活改善で

飲み過ぎ・肥満防ぐ 遺伝子タイプで発症リスクに差
痛風の発作は「風が吹くだけで痛む」「骨折した際の痛みより強烈」などと形容される。
厚生労働省国民生活基礎調査による直近のデータでは国内患者数は約96万人(2010年時点)と推定されている。


患者の9割が男性
痛風は尿酸濃度が高い状態が続くと起こる。
徐々に尿酸が結晶化して関節にたまり、何らかのきっかけで結晶の一部が崩れると白血球が異物と認識し、患部で炎症が起きる。
初めて痛風に見舞われる人の70%以上は足の親指の付け根で起きる。

尿酸は男性ホルモンの働きで体内で増えやすいため、患者の9割以上が男性だ。
女性では女性ホルモンの影響で体内の尿酸濃度は低くなるが、閉経後は注意が必要となる。
中高年に多いとされてきた痛風だが、今は20~30代でも増えている。
食の欧米化のほか、飲み過ぎや食べ過ぎなどが影響していると考えられている。

遺伝子のタイプが発症しやすさに関係しているのも分かってきた。
4人のうち3人の割合で「ABCG2」という遺伝子に特定の変異があったという研究もある。

体外に排出される尿酸の約3分の2は尿を通じて体外に排出されるが、残りは腸管から出ていく。
この遺伝子は主に腸管での排出に関わっており、変異があると排出機能が弱まる。
発症リスクは排出機能が正常な人の3倍以上で、変異の中でも特に機能が低いタイプに限定すれば10倍。これを20代以下だけで計算するとリスクは約22倍になった。

研究チームによると、尿酸値が7ミリグラム以下の健常な男性約1900人では、正常タイプと変異タイプの割合はほぼ半々だった。
健常な人でも尿酸値が高まるような状態になれば、2人に1人は痛風になりやすい要因を持っている。

江戸時代以前、日本の痛風患者はゼロに近かったといわれている。
遺伝子タイプの割合も現代とほぼ同じだと考えられるが、伝統的な食生活などの影響で患者は出なかった。
食生活や肥満などに気をつければ、発症リスクの高い遺伝子変異を持つ人でも痛風の発症を避けられる可能性が高い。


水分摂取も大切
痛風では飲酒がよくないと昔からいわれる。
尿酸は「プリン体」という物質から作られる。
アルコールが体内で分解される際、プリン体の分解も進んでしまう。
ビールなら1日に中瓶1本に抑えるなど適量を守るのが大切となる。

飲酒の際にはむしろ酒のつまみに気をつける必要がある。
それは、アルコール摂取で食欲が増し、プリン体が多く含まれる食品をつい口にしてしまうため。
こういった食品の代表的なものは、鶏や牛などのレバー、マイワシやマアジなどの干物、カツオなど。

尿量と尿酸の排出量が増やすためには、水や茶などで十分な水分摂取も大切。

尿酸値を高める生活習慣は、高血圧や糖尿病などの発症リスクも上げる。
生活習慣を改善すれば、こうした病気を避けられる可能性も高まることを忘れてはならない。


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出典 日経新聞・夕刊 2014.5.30
版権 日経新聞