リンパの滞り

体の中をめぐっているリンパは、不要な脂肪やたんばく質などの老廃物を回収し、健康を維持する大事な役割を担っている。
この流れが悪くなれば、むくみの症状も出やすくなる。
リンパの流れをよくするには普段、′どんなことを心がけたらよいのだろうか。
 

リンパの滞り、どう改善?

リンパ管は、排水管にたとえて考えると分かりやすい。
手足の筋肉、まめこ動かす
「排水管」の役割
動脈を流れる血液は、その成分の一部が血管の外に漏れ出る。
細胞に酸素と栄養分を届け、代わりに老廃物を受け取って、心臓に戻っていく。
このときに通る「排水管」の一つがリンパ管だ。
 
リンパ管を通るのは、余分な脂肪やたんばく質など、分子の大きな「粗大ゴミ」を含んだ水分。
これらの水分は流れていくうちにリンパ節と呼ばれる器官を何度も通過する。
リンパ節には細菌などの有害物質をさえぎるフィルターの働きもあり、体内の浄化に一役かっている。
 
体内で排出される水分のうち、このリンパ管を通っていくのは全体の1割ほど。
残る9割の水分は、もう一つの排水管である静脈を通って心臓に戻っていく。
このため、むくみ対策などには、静脈の流れをよくすることがとても重要になる。

リンパ管も静脈も、心臓がポンプとして勢いよく働いている動脈に比べると流れはゆるやかだ。
主として、周りの筋肉や臓器から圧迫されることで一方向に流れが生まれている。
だが筋肉などの動きが少なければ滞ってくるのが悩みどころだ。
 
特に人間は二足歩行するようになった結果、足から心臓まで重力に逆らって「排水」を持ち上げなければならない。
心臓から引き上げる力も働くが、それにも限界があるのでしばしば代謝が悪くなり、むくみも生じる。
 
特に筋肉が比較的少ない攻性や高齢者の間で、「夕方になると足がむくむ」などの悩みを抱える人が多い。

それでは、リンパの流れをよくするにはどうしたらよいのか。
日ごろ、パソコンに向かって長時間座ったり、立ち仕事を続けたりしている人も、次のようなことを心がければ効果があるようだ。
 
第1に、座って仕事をしている場合でも、少し筋肉を動かすように意識すること。
足首を動かすだけでもふくらはぎの筋肉を使い、リンパの流れを促進できる。

腹式呼吸も有効
ふくらはぎは、足のリンパ管の大事なポンプになっているので特に意識して動かしたい。ゆっくり力を入れ、その後、脱力する程度の動きでも刺激になる。
トイレに行く時などに少し足を高く上げて歩くのもいい。
 
次に、ゆっくり腹式の深呼吸を繰り返すのも、おなかのリンパ管を刺激するので試してみたい。
いすに深く座り、息を大きく吸い込んでおなかを膨らませる。
次に、おなかの筋肉を働かせて息を吐き出す。
 
第3に、少しでも機会があれば横になる。昼休みなどに10分でも横になると、ずいぶん効果がある。
横になって寝るのが難しければ、いすに座った状態で手前に何か台を置き、足を投げ出すという手もある。
重力の影響が小さくなりリンパが流れやすくなる。
 
健康な状態なら、こうした軽い動きを心がけることで流れはずいぶんよくなる。
もし深刻なむくみの症状などが残るようなら、心臓や肝臓などに何か病気が隠れている恐れもあるので、医師の診断を受けるようにしたい。
むくみ予防であれば、医師から専用のストッキングやハイソックスをはくことを勧められるかもしれない。
足の外側から圧力を加え、下半身にたまるのを防ぐ。
 
リンパの流れを促進する方法として、最近は専門のマッサージ(リンパドレナージ)が話題になり、入門書も増えてきている。
乳がんなどの手術で、がんの転移に伴って付近のリンパ節を切除すると、むくみが出るため、そうした場合にマッサージを施す。
 
だが、一般のマッサージとやり方が違う点も多く、実際、専門家にマッサージしてもらう体験をしないと、自分ではうまくできない場合もある。
まずよく歩いて筋肉を動かすなど、健康な生活を維持することを第一に考えたい。


リンパの流れを促進するひと工夫
①ふくらはぎの筋肉を動かす
 椅子に座り、かかとを床につけたまま、つま先の上げ下げをする
②腹式の深呼吸をする
 お腹を大きく膨らませ、奥のリンパ管を刺戟する
③ひざを大きく挙げて歩く
 長く座り続ける場合は、トイレに行く時などに大きな動作で歩いてみる
④時々、手や腕を動かす
 両手を軽く上げ、力を抜いてぶらぶらする
⑤少しでも体を横にする
 昼休みなどにあおむけになる。
 座布団などで足を少し上にすると効果が大きい


マッサージ、力入れないで
筋肉をもみほぐすマッサージは手に力を入れることも多いが、皮膚のすぐ下を通っているリンパ替を刺激するリンパマッサージの場合、力はいらない。
手をあてたら、リンパ液が移動するようにゆっくり皮膚の下をずらすイメージで動かす。オイルやクリームは、手が滑るので使わない。
 
リンパは足などの末端から、足のつけ根にある鼠径部(そけいぶ)、腹、胸などのリンパ節を通り、最後は首の付け根のあたりから静脈に合流する。
末端の流れをよくしてもその先が滞っていたら行き詰まるため、マッサージは原則、ゴール手前の首の付け根から始め、最後に末端の流れを促進する。

参考
 日経新聞・朝刊  2014.7.5