肝炎ウイルスの感染を知るにはまず検査を

肝炎ウイルス 感染知らぬ78万人、まず検査を

・肝がんや肝硬変の原因になる肝炎ウイルスに持続感染しているのに自分では感染を知らない人が、全国に約78万人いるという推計を厚生労働省の研究班が先月(2014.7)、報告した。

・推計によると、感染を知らない持続感染者は2000年時点で240万~300万人もいた。
05年時点で約171万人、11年時点で約78万人と、大きく減っている。

・この間、肝炎ウイルス検査を受ける人が増えた。
02年度から旧老人保健法に基づいて40歳以上の住民を対象に肝炎ウイルス検診が実施されるなど、国が対策を進めた。
02~12年度に公費による検査を受けたのは1300万人以上。
いまでは、保健所や自治体が委託した医療機関で無料で受けられる態勢が整っている。

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・肝炎ウイルスの持続感染者はもともと数が多い。
B型は主に出生時の母子感染で、C型は血液のウイルス検査が未発達だった頃に輸血など血液を通した感染で、それぞれ広まった。
毎年約3万人が亡くなる肝がんの原因の9割はB型かC型の肝炎ウイルスとされる。早く気づいて治療すれば重い病気になる人を減らせるため、検査が重視されてきた。

・それでもまだ約78万人が感染を知らずにいる。
職場の健康診断で肝炎ウイルス検査の実施率が低いのが問題。
職場で検査を実施する企業を増やすべきだ。
ある調査によると、職場での肝炎ウイルス検査実施率は十数%程度にとどまる、という。

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・ただ、問題は検査だけでない。
検査で持続感染者とわかったのに、医療機関を継続的に受診していない人が全国で少なくとも53万人いると推計された。
多ければ120万人だという。

・治療に結びつかないのは、さまざまな要因がある。
慢性肝炎になっていても自覚症状がほとんどないため、患者は治療の必要性を感じにくい。
また、肝機能検査の数値に異常がなければ大丈夫と思われがちだが、B型肝炎ウイルスの場合は、検査値が正常範囲でも肝がんになる可能性がある。

・これからは、検査と継続的治療の2本柱が必要。
治療薬の効果も良くなり、医療費助成もある。
将来がんにならないために、継続的に治療を受ける必要がある。

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出典  朝日新聞・夕刊 2014.8.18 (一部改変)
版権  朝日新聞社