「スローカロリー」

食後血糖値おだやかに 糖をゆっくり吸収「スローカロリー」

「スローカロリー」という言葉があります。
糖質の吸収をゆっくりにすることで健康を目指す取り組みです。
   
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ごはんや麺、砂糖などの糖類を口にすると、消化されてできたブドウ糖が血液に取り込まれ、血糖値が急速に上がる。

最近の研究では、この食後血糖値が通常の人より高い人は、空腹時高血糖の人や通常の人より心血管病や脳卒中などで死亡するリスクが2~3割高かった。
 
血糖上昇を抑制する食事で心臓病などのリスクを低下できる可能性がある。
今年(2015年)2月に、糖質の吸収の速度と肥満や糖尿病の予防効果などを研究していく「スローカロリー研究会」ができた。

ふだんの食事でも、糖質が多い主食より先に食物繊維の多い野菜料理を食べると、糖質の吸収を穏やかにする効果が期待できる。
研究会ではさらに、糖質の種類によって体内での吸収速度に差があることを利用する取り組みも進める。
 
例えば、約30年前から製造されている糖「パラチノース」(三井製糖)。
分解後の成分やカロリーは砂糖と同じだが、腸内での分解に時間がかかるため、血糖上昇が穏やかな特徴がある。
この性質が再評価され、2011年から「スローカロリーシュガー」として販売が始まった。
   
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一方、パラチノースなどの一部の糖では、上昇した血糖値が、砂糖と比べて緩やかに下降することが分かっている。
この特性を長時間の運動に利用する取り組みも始まっている。

これまで、繊維が多く血糖値上昇が長続きする玄米おにぎりなどを運動選手に食べさせ、血中のブドウ糖を長時間確保するよう工夫する取り組みもある。
しかし、下痢しやすいなどのデメリットもある。
そのため栄養サポートにパラチノースを使っているプロサッカー選手らもいる。
選手からは「ガス欠にならない」との声があがっているという。
 
市販品でも、ランナーや自転車選手などの持久競技向けに、パラチノース入りの「スポーツようかんプラス」(井村屋)も、昨年(2014年)発売された。
 
消化吸収がおだやかで緩やかな血糖値上昇が続く「トレハロース」を持久競技に活用できないか調べている専門家もいる。
30~35キロを走ったような体の状態でトレハロースをとる実験では、水やブドウ糖を補給するより運動能力が保たれたという。
 
ただ、運動後のエネルギー回復には速やかに血糖値が上がったほうがいいともされスローカロリーのスポーツへの応用には研究や科学的根拠がまだまだ必要だ。

普段の食事で工夫するなら・・・
●食べる順番を変える
1.サラダなど食物繊維の多い野菜料理
(糖質の多い、いも、かぼちゃ、とうもろこしなどは後に)
2.たんぱく質中心のメインのおかず
3.ごはん、パン、めん類など糖質中心の主食
●よくかんでゆっくり食べる
●ミネラルの多い黒糖やきび砂糖なども血糖値を上げづらくする


参考サイト
スローカロリー研究会のサイト(http://slowcalorie.jp)では「食物繊維の多い食事にする」など実践方法を紹介。
糖尿病、メタボなどとの関連も研究し、成果を発表していくという。 
トレハロースを製造販売する林原(岡山県)のサイト(http://treha.jp)では血糖変化の穏やかさなどの特徴が説明されている。

出典
朝日新聞・朝刊 2015.8.29(一部改変)


<私的コメント>
糖尿病には食後高血糖がよくないことは以前から知られていました。
また、糖尿病に関する本の多くには最初に「GI」の概念についての説明があります。
今回の記事は、主としてスポーツ医学の面から解説されています。
持久走などには血糖の下降が遅い食事、運動後には血糖の上昇が速い食事という食事の工夫。
そういった概念は、糖尿病のことばかりが頭の中にある私にとっては新鮮な記事でした。