日常の転倒リスクを避ける

小さな段差や配線…日常の転倒リスクを避けるには

転んでけがをする人が一向に減らない。
高齢者では骨折して寝たきりになる恐れが高まる。
「大丈夫」と思っている30~40代でも思わぬけがを招いて日常生活に支障を来す。
筋肉や感覚など加齢に伴う衰えだけでなく、滑りやすい床や部屋を横切る電気配線など生活環境にも様々な問題が潜んでいる。
転倒の予防にもっと意識を高める必要がある。

老化が最大要因
転倒する最大の要因は老化だ。
筋肉の力が衰え関節が動く範囲も狭まる。
同時に反射神経も鈍くなって転びやすくなる。

様々な年代の実験協力者を募り、歩く姿を記録した研究がある。
蓄積したデータの解析から、高齢になるほど、また転んだ経験のある人ほど、一歩一歩の歩き方にばらつきが大きいことが分かってきた。
歩幅の大小とそのばらつきや、浮かせた足が着地する時間とそのばらつきを計測すれば、その人の転倒する危険性が高いのか低いのかについて、高い精度で評価できる。

「転ばない」を主な目的にするデイサービス施設も登場した。(アシックス)
単に肉体的な機能向上を目指すのではなく、注意能力にも配慮したプログラムも導入されている。

はじめに、身体測定の1項目として5メートルの歩行の様子を撮影し速さを測定する。
普通に歩く場合に加え、100から1ずつ引き算をした数を声に出して歩いてもらう。
転びやすい人は数を言ってからでないと歩けない。
転倒の危険度を見分ける有効な方法だ。

肩と股関節の可動域の大きさや片足で立ちバランスのとれる時間、立ち座りを5回繰り返す時間なども測定し、10段階で評価する。
3カ月ごとに身体測定を繰り返し、目標に到達していない項目に応じたプログラムを組み立てる。
要介護者を対象にした事前の試行で、訓練を重ねればつえを使って外出でき、転倒も防げるようになる効果を確認した。
アシックスは同様の施設を全国に広げていく考えだ。

交通事故死超える
厚生労働省の「13年人口動態統計」によれば、転倒・転落で亡くなった人は全国で7766人と、近年減少している交通事故死の6060人を上回る。
転倒・転落で死亡する人の大半は高齢者だ。
07年にまとめた試算では、転倒に伴う医療・介護費用は年間7300億円に達した。
高齢化が進んでいるためさらに増えているとみられる。
 
今春、日本転倒予防学会も発足した。
高齢者が転倒する場所の約6割は家の中で、身近なところに転ぶ原因が多くある。
同学会は「転ばない暮らし方ガイド」を監修し、滑りやすい敷物を固定するなどの注意を喚起している。
 
保健や医療、福祉・介護だけでなく工学や法律、経済、教育など幅広い分野の専門家の知恵を結集して転倒事故を減らしていくことが、同学会の願いだ。

関連サイト
救急搬送の視点から高齢者の事故防止を訴える
 東京消防庁の「STOP!高齢者の『ころぶ』事故」
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/stop/old_02.pdf)

家の中の転ばないチェツクリスト
・雑誌やリモコン、ゴミ袋など床の上の小物
・通るのに邪魔になる家具や家電
・じゅうたんやマットなどの敷物
 (端のめくれ、たるみなど)
・電気製品のコード、電話線
・足元など見えづらい場所の照明、スイッチの位置
・楽な姿勢で出し入れできる収納
・滑りにくい履物
・階段や風呂場などの手すリ
・洗い場や浴槽などの滑りにくいマット


転倒事故の発生場所
住宅など居住場所56.7%
道路・交通施設33.7%
店舗・遊戯施設5.5
会社・公共施設1.2
公園・遊園地・運動場1.2
医療施設0.4

(注)東京消防庁の2013年データ。 救急搬送した65歳以上の高齢者が対象

出典
日経新聞・長官015.11.2



<その他の関連サイト>
高齢者の転倒防ぐ社会築け 寝たきりのリスク高く
専門家に習い効果アップ
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO89085410Z00C15A7NZBP01/?n_cid=SPTMG002



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長野・小布施 2015.9.20