胃酸逆流治療に新たな選択肢

胃酸逆流治療に選択肢 2月に新薬登場

胃から食道に胃酸が逆流し、胸焼けなどの症状が出る胃食道逆流症。
症状が長引くと、日常生活に支障が出かねない。
今年(2015年)2月に新薬が登場し、治りにくかった重症の患者は治療の選択肢が広がっている。
 
胸焼け、生活に支障
胃から食道に胃酸が逆流して食道に炎症が起きているのが逆流性食道炎
一方、はっきりした食道炎がなくても胸焼けなどの症状が出る人がいる。
食道炎がひどくても症状が軽い人もいる。
そのため、逆流性食道炎と、食道炎がなくても逆流で起きる胸焼けなどの症状をまとめて「胃食道逆流症」と呼ぶことが多い。
 
この病気は胸焼けと、酸の逆流がのど・口まで及ぶ感じがする「呑酸(どんさん)」が主な症状。
せきや胸の痛みを訴える人もいる。
胸痛が起きて心臓にかかわる検査をしても異常がない場合には、胃食道逆流症の可能性もある。
 
このような症状があれば、内視鏡検査で食道などの状態を調べて診断する。
食道がんなど他の病気と区別する必要もある。
 
胃酸の逆流が起きる主な原因は、
(1)食道と胃の境目を閉じている下部食道括約筋が緩む
(2)胃酸が過剰に分泌される
(3)食道が刺激に過敏になる――など。
 
このため、治療では、プロトンポンプ阻害薬という胃酸分泌を抑える薬がよく使われる。
 
胃食道逆流症は日本人で増えてきている。
大規模な実態調査ではないものの、健診などで内視鏡検査を受けた人の中で食道炎がある人の割合を調べた報告では1990年代から増加傾向にある。
「40~60代では、十数%」とみている。
 
増加の理由として、胃の粘膜にすみつく細菌ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染者の減少が挙げられている。
ピロリ菌の感染者は、菌によって胃酸の分泌が抑えられるためだ。
また、食生活の欧米化も要因と考えられており、高脂肪食は胃酸逆流を起こしやすくするという。


即効・持続性が特徴
胃食道逆流症は、薬によって1週間で胸焼けが治まる人もいれば、なかなか治らない人もいる。

新薬が登場して、従来のプロトンポンプ阻害薬が効かなかった重症の患者でも症状が改
善する人も出てきている。
この新薬は2月から日本で販売されている逆流性食道炎などの治療薬「ボノプラザン」だ。
以前から使われている阻害薬には、
①肝臓の代謝酵素の影響で胃酸分泌を抑える効果に個人差がある
②薬を飲み始めて最大の効果が出るまでに3~5日かかる
③夜間に胃酸を十分に抑えられない場合がある
などの課題があるという。
 
新薬には、効果の個人差が少なく、効き目が早く、夜間まで効果が続く特徴が
あるとされる。
逆流性食道炎の患者計約400人を対象に日本で実施された臨床試験では、薬を使って8週間後までの治癒率は新薬が99%で、既存のプロトンポンプ阻害薬の95.5%に劣らない効果が確認された。
 
重症患者で夜間に胃酸の逆流が起き、目が覚めてさらに逆流する悪循環になる人がいた。重症患者には必要な選択肢。
ただ、新薬なので副作用などは長期的に見ていく必要がある。

出典
朝日新聞・朝刊 2015.9.22