カプセル内視鏡

カプセル内視鏡 のんで撮影 病変探る

大腸がん検査 負担軽く
超小型の「カプセル内視鏡」を採用する医療機関が増えている。
口からのみ込むと消化管内を移動しながら写真を撮影する仕組みで、ミリ単位の病変まで高精細に観察できるようになった。
心理的、身体的な負担が小さいのが特長だ。
課題は残るが、大腸がんなど患者が受診をためらう場合もある検査で、一翼を担うことが期待されている。

カプセルを使った小腸検査の流れは、まず受検者は下剤で腸管内を十分に洗浄。
検査当日は腹部にセンサーを取り付け、カプセルを水でのみ込む。
小腸用は直径11ミリ、長さ26ミリ。
ここに小型カメラやバッテリーなどを内蔵する。

5~6時間で体外
カプセルは小腸の蠕動(ぜんどう)運動で移動しながら、1秒間に2枚、あるいは6枚を撮影。
画像は無線でセンサーから腰などに取り付けた「データホルダ」に送られ、蓄積される。
 
その間、必ずしも病院にいる必要はない。
カプセルは使い捨てで、平均5~6時間で体外へ排せつされる。
ホルダを提出し、医師が読影ソフトで画像にただれや潰瘍などがないかを見極める。
 
東大病院は2007年に採用。
どの消化管からの出血か不明で、胃カメラや大腸検査で異常が見つからない患者が主な対象で、約800例の実績がある。
その約半分で病変が見つかったという。
 
長さ6~7メートルに及ぶ小腸は口や肛門から比較的遠い位置にあり、通常の内視鏡検査は難しい。
このためカプセル開発は小腸用が先行した。
イスラエルのギブン・イメージング社(現コヴィディエン社)が1990年代半ばに、オリンパスが00年代半ばにそれぞれ開発。
日本では07~08年にいずれも保険適用された。
 
バッテリーの駆動時間は当初の2倍の16時間に延び、くまなく観察できるようになった。
画質の改良も進み、絨毛の1本1本がくっきり見えるほどになった。
利用する医療機関は現在、約300施設に上るという。
 
大腸検査用も普及しつつある。
09年には「第2世代」が登場。
カメラの視野角が180度近くに広がり、体内を動く速度に合わせ撮影頻度も自動調節できるように。
約5割だった6ミリ以上のポリープの発見率は、9割まで向上したという。

2次検査を促す
特に大腸がん検診で期待される。
国立がん研究センター中央病院では、1次検査の便潜血反応で陽性なら2次検査に進むのが原則だが、2次受診率は約6割にとどまる。
尻から通常の内視鏡を入れる2次検査を「恥ずかしい、つらそう」と敬遠する人が多い。
 
カプセルならそうした負担が小さい。
1次、2次の間の「1.5次検査」に位置づけ、「がんの疑いがより強まった」と2次検査を勧める有力な材料にもなる。
 
課題もある。
まだ組織の切除・回収はできず、生検や治療には使えない。
腸管内をきれいにするため検査前に大量の下剤を飲む必要もあり、少量で効果的な洗浄法の研究が進んでいる。
 
大腸用は癒着などが原因で通常の内視鏡検査ができない場合に保険適用が限られ、それ以外は自費診療になる。
さらなる普及のため、範囲拡大を求める臨床医は少なくない。

   ◇  ◇

画像読み解く技師を育成
医師が腸管内をリアルタイムで観察する通常の内視鏡検査と違い、カプセル検査では撮影後に画像を見て病変の有無を確かめる「読影」という作業が必要だ。
 
画像を見るには、小腸用で約30分、分量が2倍の大腸用では約1時間かかる。
診療終了後の読影で作業が深夜に及ぶこともある。
 
このため日本カプセル内視鏡学会は2013年春、医師より先に“下読み”する「読影支援技師」養成を始めた。
臨床検査技師や看護師などが研修で技術を習得、これまで小腸で276人、大腸で38人認定した。
 
出典
日経新聞・朝刊 2015.11.1


<カプセル内視鏡・関連サイト>
飲むだけの小腸内視鏡検査
http://www.givenimaging.com/jp/Patients/Pages/Capsule-Endoscopy.aspx
(図入りで判りやすく解説)

小腸カプセル内視鏡について
http://omori.jrc.or.jp/departments/tabid/287/Default.aspx
(カプセル内視鏡と小腸内視鏡の実際の映像が比較されています。やはり画質面ではかなり劣るようです)

大腸がん「のんで」発見 カプセル内視鏡、今年から保険適用
http://apital.asahi.com/article/gan/2014051900010.html
(新聞記事の紹介です)