おなかが張る

ストレスも原因 薬での治療も

胃腸の不調を扱う医療機関では「おなかが張る」という症状を訴える患者さんを診ることがよくあるという。
がんなど深刻な病気の場合は少ないものの、原因がわからず、長引く症状に、改善策が出てきている。
 
おなかが張る症状「腹部膨満感」の主な原因として考えられてきたのは、
①胃や腸にガスがたまる
②おなかに液体がたまる腹水
③腹部の腫瘍(しゅよう)
などだ。
 
このようなはっきりした体の異変がなくても、胃腸の機能的な問題で「おなかが張る」とか「もたれる」と感じる人もいる。
かつて原因がはっきりしない場合は「気のせい」と言われることもあった。
おなかが張るという症状があっても原因がわからず、困って大学病院を訪れる患者もいる。
 
今では、ストレスなどによって機能障害が起きる仕組みがわかってきた。
胃の場合は「機能性ディスペプシア」と呼ばれる。
たとえば、食事の途中でおなかがいっぱいになる早期飽満感などが特徴。
腸の場合は「過敏性腸症候群」がある。
これらの病気では、近年、薬を含めた治療が進んでいる。

この15年間ほどで胃腸の病気が大きく変わってきた。
大きな要因は胃の中にいる細菌、ヘリコバクター・ピロリの除菌が進んだこと。
以前は胃潰瘍や十二指腸潰瘍で「おなかが痛い」という患者が多かったが、除菌の普及で胃潰瘍などが減り、腸や食道の病気が目立つようになった。
そのなかに「おなかが張る」「おなかがスッキリしない」という訴えがある。
 
多いのはガスが原因になるケース。
おなかをたたくと「ポンポン」という太鼓のような音がする。
この場合は食事などと一緒に空気をのみ込む呑気(どんき)症などが考えられる。
胃ではなくて腸の不調が原因の場合もある。
気をつけたいのは高齢者の便秘。
便秘でガスがたまり苦しくなり、下剤でうまく治らないと浣腸が必要になる。
 
腹水が原因というのは、それほど多くないが、重い病気で治療が必要になる。
肝臓病やがんなどが考えられる。
腹水の量が少ないと外見からはわからないが、医療機関での超音波検査などで診断がつく。

多くはないが、腹部の腫瘍が大きくなっていることもある。
大腸がんや女性の卵巣嚢腫などの可能性があり、この場合は、専門家による治療が必要だ。
おなかが張る人の中には、規則正しい生活習慣への改善が有効な人もいる。
胃腸の働きには朝晩のリズムがあるので、うまく整えたい。


<「おなかが張るのが気になるときは」・まとめ>
① ⬜︎ おなかが張っている
② ⬜︎ 仰向けに寝ておなかをたたくと「ポンポン」と太鼓のような音がする
③ ⬜︎ げっぷがよく出る
④ ⬜︎ 炭酸飲料をよく飲む
⑤ ⬜︎ 食事の途中でおなかがいっぱいになる
⑥ ⬜︎ 便秘気味の状態が続いている
⑦ ⬜︎ 仰向けに寝て体を左右に傾けるとおなかの張りが左右に動く


① 原因は胃や腸にガスがたまっている場合が多いですが、腹水や腫瘍など様々な原因が考えられます。
② ガスが多くたまると音でわかります。
③④ 胃に空気がたまるとげっぶが出やすく、炭酸飲料でおなかが張ることもあります。
⑤ 機能性の胃腸の病気の可能性があります。
⑥ 便秘でガスがたまり苦しくなることがあります。
⑦ 腹水がたまっている可能性があり医療機関の受診を勧めます。


<関連サイト>
IBSネット」
http://ibsnet.jp
  
出典
朝日新聞・夕刊 2015.12.14(一部改変)