温泉の効用

温泉で健康 もっと知ろう 高血圧や糖尿病にも効果

国が適応症拡大/予防の期待も
温泉の効能といえば肩こり、腰痛の緩和が代表例だが、最近は軽度の高血圧や糖尿病への効果なども確認されている。
こうした知識を普及させる取り組みも始まっており、正しく理解すれば温泉の楽しみ方の幅が広がりそうだ。

温泉成分が基準値を満たす療養泉に共通する「一般的適応症」は、従来の2倍の12分類に。
軽い高血圧、胃もたれの改善、糖尿病への効果などが追加された。
例えば糖尿病では、患者の血糖値が下がる効果が確認された。

温泉の作用は3種類に分けられる。
1つ目は物理学的作用。
体が温まって血の巡りが良くなり、筋肉痛・関節痛なども和らぐという広く知られた効果だ。
 
2つ目が成分による化学的作用で、適応症拡大はこの解明が進だためだ。
温泉から出る硫化水素ガスなどが皮膚から吸収され、血管を広げて血圧を下げる。
温熱効果も加わって軽い高血圧であれば改善される可能性もあるという。
 
泉質別でみると、弱アルカリ泉は成分と皮脂の脂肪酸が反応し、皮膚表面にせっけんが出来て肌がきれいになる。
酸性泉は殺菌作用が強く、アトピー性皮膚炎を改善するとされる。
 
3つ目は生物学的作用と呼ばれる。
気分転換が図られ、リラックスできるという趣旨だが、研究者の関心が高いテーマ。
一般的適応症に追加された「自律神経不安定症やストレスによる諸症状(睡眠障害うつ状態など)」もこれだ。
 
もちろん過度の期待は禁物だ。
温泉療養はあくまで西洋医学の補助手段と考えたい。
健康増進に食生活の改善や適度な運動が必要なことは言うまでもない。
 
ところで温泉には予防効果もあるのだろうか。
温泉入浴が高血圧や高脂血症うつ病など5つの病気の予防につながる可能性があるとする報告書をまとめた。

毎日の温泉入浴を長年続けている人と、そうした習慣がない人などを比較した結果、男性の高脂血症なら「炭酸水素塩泉への長年の入浴」など、予防の可能性があるパターンが分かったという報告もある。
 
温泉の効果は短期間の滞在では得られにくい。
とはいえ食事や名所だけでなく、温泉そのものの理解を深めた上での行き先選びも試してみてはいかがだろうか。

出典
日経新聞・夕刊 2015.12.17