肺塞栓症に2つの新薬

食事制限なし・併用薬の幅広がる

足の静脈にできた血の塊がはがれて肺の血管が詰まり、呼吸困難などを起こす「肺塞栓症」に、昨年から新しい治療薬が登場した。
従来の薬と比べ、食事制限が不要になり、一緒に飲んではいけない薬も減った。
ただ、価格が高く、効果の持続時間が短い面もある。

食事制限なし 併用薬の幅広がる
従来の治療では、ヘパリンの点滴後は「ワルファリン」を飲むのが一般的。
ワルファリンは、服用中に納豆を食べてはいけない。
海藻やシソなども少量に抑える。
薬の作用を弱めるビタミンKを含んでいるためだ。
だが、新しい薬では食事を制限する必要はない。
 
肺塞栓症は足などの静脈内に血の塊ができ、血流に乗って肺の動脈を詰まらせる病気。
主な症状は息苦しさや胸の痛みで、突然死するケースもある。
長時間座り続けていると起きることがあり、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれる。国内の発症者は、年間約7900人との報告がある。

<私的コメント>
最近では「エコノミークラス」という語感に問題があるため「ロングフライト症候群」と呼ばれることが多くなっています。

治療には血液を固まりにくくする薬が使われる。
リクシアナに加え、今年9月には「リバーロキサバン」(製品名・イグザレルト)も使えるようになった。
どちらも錠剤で、脳卒中を予防する薬として承認されていたが、使える病気の対象が広がった。
イグザレルトは、事前のヘパリン点滴も不要だ。
 
作用にビタミンKが関わっておらず、ワルファリンのような食事制限はない。
また、血栓をできにくくする別の薬など、併用する際に注意が必要な薬がいくつかの分野であるものの、約30分野あるワルファリンに比べると少ない。
 
ワルファリンは、医師が効き目を見ながら飲む量を調整するため、十分な注意が求められる。
新しい薬は食事や薬の併用といった問題が少なく、患者にも医師にも安心感がある、とある専門医は語る。
 
高価格、効き方に特徴
二つの新しい薬は、よいことばかりとは言えない。
 
まず価格が高い。
リクシアナは最大用量で1錠約750円、イグザレルトは同約550円。
ワルファリンは1錠9円前後だ。
新しい2薬は基本的に1日1錠だが、症状によっては長期間飲み続けるため、経済的な負担は大きくなる。
 
また、ワルファリンは、薬が効いているかどうかを判定する指標があり、血液検査で確認することができる。
月に1回程度、採血をして測定する。
服用が長期化している人の中には、この数値を見て安心感を得ている人もいる、と指摘する専門医もいる。
新しい薬はまだ、こうした指標がないため、血栓の状態などの臨床症状を注意深く観察しなければならない。
 
効き方にも違いがある。
ワルファリンは効果が出始めるのに1日前後かかり、効果は2~3日ほど続くとされ、「ゆっくり効き、ゆっくり効果がなくなる」のが特徴。
新しい2薬は数時間で効果が出る一方、持続するのは半日程度。
飲み忘れに注意が必要だという。
 
副作用にも気を付けなければならない。
ワルファリンよりわずかに少ないとされるが、脳出血などを引き起こすことがある。

要するに、どの薬がよいとは一概には言えない。
それぞれの薬の特徴を理解して、医師に相談しながらライフスタイルにあった薬を選びたい。

出典
朝日新聞・朝刊 2015.12.22(一部改変)