目指せ元気な100歳

今や全国に6万人 目指せ元気な100歳

平均寿命で世界一を達成した日本。
人類の永遠のテーマである不老長寿は難しいが、100歳以上の「百寿者」は全国で6万人を超え、夢ではなくなりつつある。
自立した生活を続けながら長生きするのは誰もが願うことだ。

■足腰鍛える/食べ過ぎない
厚生労働省の高齢者に関する調査で、2015年は100歳以上の百寿者が6万1568人になった。
統計を取り始めた1963年はわずか153人だった。
日本人の平均寿命も延びている。
14年は女性86.83歳、男性80.50歳と過去最高を更新した。
ただ、健康上の問題で日常生活が制限されない「健康寿命」は13年で女性が74.21歳、男性が71.19歳だ。
平均寿命との差を、いかに縮めるかが課題になっている。

<私的コメント>
健康寿命」が結構短く、平均寿命との差が大きいことに驚きます。
 
ひとくちに百寿者といってもさまざまだが、日常生活や身体的な特徴に共通点があれば知りたいところだ。
その点については、長生きで自立度が高い人は慢性炎症の程度が低い、と指摘する専門家がいる。
慢性炎症とは体内でゆるやかに進行する炎症のこと。
風邪を引いたりケガをしたりした際に起こる熱や腫れ、痛みとは区別される。

炎症は体に備わる重要な仕組みだが慢性炎症はさまざまな病気を引き起こす。
動脈硬化や糖尿病に関係していると考えられる。
年齢とともに増えるがんやアルツハイマー病との関連も指摘されているという。
肥満の人は慢性炎症になりやすい。
中年の頃から腹八分目を心がけている百寿者が多い。
食べ過ぎないで、適度に体を動かすことが大切となる。

百寿者が病気にかからないというわけではない。
百寿者の97%に何らかの病歴があった。
ただ、糖尿病やがんなどにかかっている人の割合は少なかった。

そもそも高齢者は「慢性的な病気と付き合いながら、自立した生活を送れれば健康といえる」と指摘する専門家もいる。
健康の定義自体も世代によって異なるという。

40~50代はがんや心臓病、糖尿病などの病気にかからないことが健康といえる。
一方、60代からは「病気になることは当たり前」だ。
腰痛や高血圧、白内障や難聴など、命に直結するわけではないが生活の質(QOL)の低下につながる病気を発症しやすい。

<私的コメント>
「60代からは病気になることは当たり前」。
これからの日常診療で患者さんとの会話で、この言葉を使わせてもらいます。

高齢者が健康を保つためにはフレイルにならないことが重要。
フレイルは日本老年医学会が提唱した考え方で、筋力や心身の活力が低下した状態だ。
高齢者の多くがフレイルの段階を経て、介護が必要になる。
ある調査では、65歳以上の11%がフレイルにあてはまる。

フレイルにならないために大切なのが頭を使い、体を動かすことだ。
足腰を鍛えれば転倒のリスクを減らせる。
栄養不足や偏りも筋肉の萎縮を起こすため、肉を含めてバランスの取れた食事をしっかり取ることも大切となる。
自立した高齢者はしっかりかんで食べる傾向があるとの報告も出されている。

高齢者に多い認知症は防げるのか。

残念ながら肌の手入れなどで皮膚の老化を遅らせることはできても、止めたり若返らせたりできないのと同様に加齢に伴う認知機能の低下は避けられない。

発症を完全に防げなくても、適度な運動やなるべく会話をすること、ポリフェノールなどが多く含まれる野菜・果物を取ることが勧められる。
反対に、喫煙や肥満、高血圧などの生活習慣病、睡眠不足などは避けたい。
また、情報の目利き力も養うべきで、健康食品などは科学的根拠に基づいて判断するよう注意したい。

前向きな心持ち 長寿の鍵
心の持ち方や性格に関しては「百寿者は外向・開放的で誠実な人が多い」ともいわれる。
人と付き合うのが好きで、物事をきちんとこなす。
新しいことに興味をもち、頭が柔らかく、好奇心も強い。
こうした100歳像が浮かび上がる。
医師の指導・助言を守っている人も多い。

<私的コメント>
禁煙を勧めても実行しない患者さんは論外です。

年を取ると、足腰が痛んで耳が遠くなり、外出を控えがちになる。
たとえ外出できなくても詩を詠んだり歌を歌ったりと、自分で楽しみ方を工夫するとよい。
そうすると、自然と前向きで、幸せな気持ちになってくるという。

穏やかな気持ちでいることが一番。
いつ死んでもよいなどと楽天的に構えて生活を送ることも大切だ。

<私的コメント>
これは「悟り」を開かなければ無理です。


百寿者はこんな人が多い
・3食きちんと食べる
・ほぼ毎日野菜を食べる
・果物が好き
・食べ過ぎず、好き嫌いなく
・散歩などの運動習慣がある
・自分の身の回りのことをする
・好奇心が旺盛
・物事をよい方にとらえる
・決まった時間に起床する
・たぱこは吸わない
・人と付き合うことが好き

出典
日経新聞・朝刊 2016.1.3(一部改変)