健康寿命って何?

健康寿命って何? 支障なく日常を過ごせる期間

日本人の平均寿命が延び続けている。 
1世紀を生きるセンテナリアン(百寿者)は、昨年9月時点で約6万5700人で、46年連続で過去最多を更新している。
長生きすることに加えて、その生活の質も問われている。

人には必ず寿命がある。
 
厚生労働省の7月の発表では2016年、日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳となり、過去最高を更新した。
 
そんななか「健康寿命」という、寿命とは違った新たな指標に関心が集まっている。
 
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活に支障がなく暮らせる「健康な期間」をいう。
3年に1回実施される国民生活基礎調査の大規模調査での質問、「現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」への回答「ある」「ない」をもとに、年齢や人口などを考慮し、算出される。
 
厚労省はこれまで2年分の健康寿命を発表している。
それによると、平均寿命と健康寿命の間には10年前後の差がある。
この「不健康な期間」をいかに短縮していくかが重要だ。
 
2010年と13年を比較すると健康寿命は女性が0.59年、男性が0.11年延びた。
同時に「不健康な期間」は女性が0.28年、男性が0.11年短くなっている。

個人が健康でいること、健康寿命を少しでも延ばすことに意識が高まっている。
健康寿命が短いと、治療や介護を要する期間が長くなり、肉体的、精神的、経済的な負担が
大きくなる。
調査方法などに様々な意見もあるが、厚労省健康寿命の考え方を広め、自治体や企業での推進も促してきた。

総務省によると、昨年9月時点の65歳以上の高齢者は推計で3461万人、総人口に占める割合は
27.3%。
しかし、いま高齢者の定義を見直そうという新たな動きも出ている。
日本老年学会と日本老年医学会は今年1月、これまで一般的に65歳以上としてきた高齢者を「75歳以上」に引き上げる提言をした。
現代の日本の高齢者は、食生活や医療の向上などにより、医学的にも若返っているという理由からだ。
 
長寿の時代。
健康寿命という観点から、改めて健康と生き方を考える必要がありそうだ。


参考
平均寿命と健康寿命の差(2013年)
男性
平均寿命 80.21
健康寿命 71.19
差   9.02

女性
平均寿命 86.61
健康寿命 74.21
差   12.40


Q&A 「健康」とは
持病と付き合い、生活は自立 運動が大事 / 社会と関わって
Q 高齢者にとっての「健康」とは、どのようなことを指すのか。
生活習慣病などの慢性疾患があっても、要介護状態にならず、自由に外出でき、自立した生活が送れる状態と考えていい。
若い世代は、健診で何の異常も見つからないことが健康の目安になるが、高齢になると、全く異常がないという人は、きわめてまれだ。
持病や不調とうまく付き合いながら、生活の質を保つことが、高齢者にとっての健康の目安といえる。
 
Q 健康で長生きをする人には、どのような傾向や特微がみられか。
A 身体面、精神面、社会性の三つのカテゴリー別にみることができる。
身体面では歩行速度が、よい指標になる。
米国の研究者らによる3万4千人を対象にした2011年の調査研究では、歩行速度が速ければ速いほど、長生きをする傾向があるという結果が出ている。
また、精神面では、認知機能が落ちていないことや、うつ状態でないことも重要だ。
社会性では、仕事をしている、地域活動をしているなど、なんらかの社会的役割があることも関わってくる。
この三つのカテゴリーは、相互に影響し合っており、その上で「健康」が維持されていることがポイントだ。
 
Q 健康長寿を手に入れるために、自らができることは何だろうか。
A 全身の筋肉が衰えないよう、運動や食事に気をつけることが大切だ。
筋肉が衰えると歩く速度が落ちるし、転倒によるケガや骨折につながったり、免疫力が低下し感染症にかかりやすくなったりする。
また、疲れやすくなるため、活動範囲や活動量が減り、脳も活性化しにくくなるという悪循環が生まれる。
この悪循環に陥った状態を「フレイル」と呼ぶ。
要介護の前段階を意味する言葉だ。
まずはフレイルにならないことが、健康長寿への第一歩といえるだろう。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2017.8.15