緑内障 早期発見がかぎ

緑内障 早期発見がかぎ

適切な点眼を 2剤同時にさせる新薬も
緑内障は病気が進むまで気づきにくく、進行を抑えるための治療が一生続く。
早く見つけて根気よく付き合うことが欠かせない。
日本緑内障学会は40歳を過ぎたら検診を受けるよう呼びかけている。

愛媛県に住む女性(35)は、20代の頃に結膜炎で眼科にかかった際に精密検査を勧められ、愛媛大病院(愛媛県東温市)を受診。
そこで緑内障と診断された。
10年近く治療を続けており、今は三つの薬を毎日点眼している。
 
そのうち一つは、2種類の薬が一度にさせる「コソプト配合点眼液」(一般名・ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩)。
配合点眼液は2018年1月に改訂された、日本緑内障学会の診療ガイドラインに盛り込まれた。
他にも大塚製薬の「ミケルナ」などがある。
 
点眼薬は一つをさすと、数分の間を空けて、別のものをさす。
配合点眼液なら2剤を一度にさせる。
女性は「目が見えないと困るので、薬はちゃんとさします。朝の時間がない時に四つの薬が三つで済むのは助かります」と話す。
 
緑内障は、眼球内部の圧力「眼圧」で、目の奥にある視神経が傷つけられ、次第に視野が欠けていく病気だ。
眼球の中の「房水」という液体がうまく排出されず、眼圧が異常に高くなって起きる場合もあるが、眼圧が正常の範囲内で発症することも多い。
 
国内には約465万人の患者がおり、40歳以上の20人に1人とされる。
子どもや若者でも発症する場合もある。日本人の失明原因の4分の1以上を占める。
 
治療は眼圧を下げて、視神経の損傷が進むのを防ぐ。
ただ、一度欠けた視野は戻らない。
病気の進行を遅らせて、視野がさらに欠けるのを防ぐ。
眼圧を下げる薬には、プロスタグランジン関連薬、交感神経β受容体遮断薬など作用によりいくつもの種類がある。
薬で眼圧が下がらないときは、手術して房水を排出しやすくすることもある。
 
患者によっては、複数の点眼薬をさすのが煩わしく、途中でやめてしまう人も少なくない。
4剤以上の目薬を長い間併用することは、現実的には難しいかもしれない。
 
薬を適切に使えるかも重要だ。
ある調査では、緑内障患者は一般の人に比べ、うまく目に点眼薬をさせない人の割合が高かった。
視野が欠けたことなどが原因とみられる。
視野が戻らないため、効果を感じにくいことも、治療の継続を難しくしている。
 
点眼補助具を使うことや家族に点眼してもらうことも一つの解決法だ。
きちんと点眼すれば、多くの場合進行を抑えることができる。
緑内障治療は患者さんにやってもらうことがすべてと言っても過言ではない。

視野欠ける前でも把握可能
緑内障の進行を防ぐのに重要なのが早く見つけることだ。
症状を自覚するのが難しいことから、専門家は40歳を過ぎたら定期的に調べるように勧めている。
 
診察では、眼圧の測定や視野の検査、眼底の観察などで病気の状態を見極める。
中でも近年、「光干渉断層計」(OCT)を活用することで、早期に発見できるようになってきた。
改訂診療ガイドラインにもその意義が解説された。
 
緑内障では視神経の損傷が始まった直後は視野は欠けない。
OCTは視野欠損は起きていないが、神経の損傷は始まっている初期の状態が把握できる。
定期的にOCT検査を受けることで、損傷の進行するスピードをつかみ、治療するか様子を見ても大丈夫かを判断するデータに活用できる。
 
一方で、診療ガイドラインでは、国内にまだ治療を受けていない患者が多数いることが指摘されている。
超高齢社会を前に、緑内障と付き合っていく人は今後ますます増える。
末期になると救うことが難しく、治療を続けることが難しい。
患者さんが早期に検査を受け、治療を続けられるかどうかが最大のかぎになる。

参考・引用一部改変
朝日新聞・朝刊 2019.3.13