人工乳房再建

増える人工乳房再建 「しずく形」も公的保険適用

乳がんで失った乳房を新しく作り直す「乳房再建」。
本物に近いしずく形の人工乳房(インプラント)が2014年1月に公的医療保険に適用されて以降、再建手術を受ける患者が増えてきた。
一方、受けられる施設が都市部に偏在していたり、別の手術が同時に受けにくくなったりと新たな課題も浮かんできた。
 
自然な形 取り戻す
13年にアイルランドの製薬企業「アラガン」のシリコーンインプラント(おわん形)と皮膚を拡張する機器「エキスパンダー」を使う再建手術が保険適用となった。
実質負担は高額医療費の払戻制度を使えば、十数万円ですむことになった。
 
実施施設は都市偏在
乳房再建にはインプラント手術のほか、自身の背中や腹の筋肉、脂肪組織を乳房に移植する手術がある。
費用はそれぞれ保険適用(3割負担)でほぼ同じ30万~60万円で、長所・短所がある。感染症のリスクのほか、放射線治療後のインプラントは難しい。
 
医療機関インプラントで公的医療保険を使うには「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」の認定が必要になる。
13年末の認定施設は287カ所だったが、昨年末は482カ所に増えた。
 
学会によると、13年(7月~12月)の保険適用のインプラント(おわん形)の手術件数は241件だったが、「しずく形」の適用が始まった14年は4254件と17倍に増えた。
しずく形に加え、患者の費用負担が減ったことが大きい。
 
一方新たな課題も出てきた。
学会の推計によると、手術の大半は都市部で実施されており、うち東京に約3割が集中する。
地方は形成外科医が少なく、その医師の間でも、向き不向きがある。

しずく形の保険適用で、別の問題も出てきた。
再建した乳房と片方の健康な乳房(対側)のサイズのバランスが取れない場合、対側を豊胸したり小さくしたりする形成手術(保険外、60万~85万円)が行われる。
インプラント手術が自費の場合、1回の手術で同時に受けられたが、保険適用後は「混合診療」になるため、同時に受けることができなくなった。
 
そのため、希望する患者には別の日程で再度入院してもらって対側の手術をすることになり、患者の負担が増えた。
がん研有明病院は昨年末、そうした現状を厚生労働省に説明。
1回で実施できないか相談したが、「正常な乳房に手を加えることは美容の域を出ない」と認められなかったという。

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出典
朝日新聞・朝刊 2016.1.19


<私的コメント>
乳房を失う哀しみは女性にしか分かりません。
男性医師としての私は、こういった患者さんに接する時には「命と引き換えなのだから・・・」とか「外から分からないようにちょっと工夫すれば・・・」と、つい話してしまいそうになります。
励ますつもりが相手を傷つけてしまう。
こういったことはいろんな場面で経験して来ましたが、医師として気づかない場合の方が数多くあるのかも知れません。


<乳房再建・関連サイト>
乳房再建
http://www.v-next.jp/contents_11.htm

乳房再建の方法|乳房再建をお考えの方へ|がん研有明病院
http://www.jfcr.or.jp/hospital/department/clinic/general/plastic_surgery/breast/003.html



乳房再建|乳腺専門医師が詳しく解説
http://www.saiken.info/index6.html