腰痛軽減策

腰痛軽減策は安静にあらず 体動かして筋力アップが有効

国民病ともいわれる腰痛。
原因はさまざまだが、はっきりしない慢性腰痛もある。
かつては、安静にするのがよいとされたが、体を動かし、筋力をつけることが、痛みの軽減や再発予防に効果的なことがわかってきた。

原因様々、骨折予防を
高齢者に多い腰痛の原因が骨粗鬆症による骨折だ。
骨がもろくなってひびが入ったり、変形してつぶれたりする。俗に「圧迫骨折」と呼ばれる。

突然、激痛に襲われることもあれば、次第に痛くなることもある。
経過とともに痛みがよくなることはまずない。
X線検査で、骨のひびがわからないこともあるという。
 
治療では、コルセットやギプスをつけて固定し、骨の形成を助ける薬を使う。
良くならない場合は少量のセメント注入で骨を補強する手術などを検討する。
骨は変形したまま固まり、前かがみの姿勢になりがちだ。
変形が強いと、バランスを取りづらくなり、杖や押し車が必要になる人もいる。
 
骨折になる前の対応が大切となる。
特に閉経後の女性は骨を維持するため、カルシウム摂取や日光浴、運動を心がける。
定期的に骨密度を測り、骨粗鬆症の疑いがあれば専門医を受診する。
 
加齢に伴い脊髄を囲む背骨の関節や椎間板(が変形して起きる「脊柱管狭窄症」も、腰痛の原因になる。
変形が強くなり、神経が圧迫され血流が悪くなる。
足にしびれが出るのが特徴だ。
 
治療では、腰への負担を減らすコルセットを着用して痛み止めや血流をよくする薬を使う。
痛みで生活に支障が出る場合は、骨を削ったり固定したりして、神経の圧迫を和らげる手術を検討する。
 
腰痛は、骨への細菌感染やがんで起こることもあり、ただちに治療する必要がある。
体重が減ったり微熱が続いたりする場合は要注意。
病院に行きたがらない高齢者もいるが、原因の見極めが大切。
危険信号を見逃さないように受診したい。

無理なく続けて効果
痛みが3カ月以上続く慢性腰痛は原因がはっきりしないことが多い。
日本整形外科学会と日本腰痛学会が2012年にまとめた診療指針では、慢性腰痛には薬物と運動療法を推奨する。
ただ、痛み止めの非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、消化管の出血や腎臓障害の副作用が出る場合があるので、注意して使いたい。
 
腰をひっぱる牽引療法は、指針では腰痛全般に対して「有効であるエビデンス(証拠)は不足」とされた。
電気神経刺激療法については「有効か無効かは一定の結論に至ってない」とした。
 
運動療法は筋肉を強化して腰への負担を減らす。
継続することで慢性的な痛みを和らげ、再発予防にも効果がある。
 
安静第一と思い込んでいる人は考えを変えよう。
不安から腰を動かさないでいると、むしろ腰痛が治りにくくなってしまうという。
 
背骨と背骨に挟まれた椎間板の中央には、ゼリー状の髄核がある。
前かがみの状態が続くと、髄核が後ろに移動する。
これを「借金がある状態」と呼ぶ。
「借金」を重ねると、椎間板が傷ついたり、椎間板から髄核が飛び出すヘルニアになったりする可能性がある。
そのため、後ろにずれた髄核を定期的に元に戻してやる必要があるという。
 
松平さんが提唱するのが、立った状態で、息を吐きながら、腰を3秒間後ろにそらす「これだけ体操」だ。
1、2回を1日数回やるのが目安だという。
 
一方、ふだんから正しい姿勢に気をつけ、毎日の「腰みがき体操」もよい。
継続が肝心。
痛みが強くならない範囲で、無理なく続けよう。


出典
朝日新聞 2016.3.1(一部改変)