骨髄バンク

骨髄バンク 「血液のもと」を患者へつなぐ

日本骨髄バンクが2016年12月に25周年を迎えます。
血液のもとになる細胞をドナー(提供者)から提供してもらい、移植を必要とする患者へ届ける組織です。
 
酸素を運ぶ赤血球や、ウイルスなど外敵から身を守る白血球、出血を止める血小板などの血液細胞は、骨の中心部の骨髄にある「造血幹細胞」からできます。
 
造血幹細胞の遺伝子が変異して正常な血液細胞ができなくなっている白血病などの患者を治療する主な方法が、ドナーから提供された正常な造血幹細胞を移植することです。
強い放射線抗がん剤などで自分の異常な骨髄細胞をあらかじめ殺したうえで、「白血球の型」といわれるHLAが合うドナーの造血幹細胞を点滴などで移植します。
HLAが合わないと正常な血液細胞ができません。
 
日本では1974年ごろから、骨髄から骨髄液を取って移植する治療が始まり、HLAが合う人を探すために地域や病院単位のネットワーク「骨髄バンク」ができました。
その後、白血病で子どもを亡くした母親らの活動によって、全国の骨髄バンクを統合する形で91年に、後に「日本骨髄バンク」となる「骨髄移植推進財団」ができました。
 
バンクでは、骨髄移植を必要とする患者とドナーを登録しています。
ドナーになるには、日本赤十字社献血ルームや保健所などで、採血を受けます。
18歳以上54歳以下の健康な人で、男性は45キロ以上、女性は40キロ以上という体重制限があります。
提供回数は2回までです。
 
医師から依頼があると、バンクは患者とHLAの型が合う登録者をデータベースで採します。
HLA型が合う登録者が見つかると、バンクから連絡がきます。
その後健康診断などを経て正式にドナーになります。
ドナーにはコーディネーターが連絡をとり、医師とともに検査や説明をします。
骨髄液採取時の事故によるドナーヘの補償や、採取後の健康のフォローもバンクの仕事です。
 
骨髄液は全身麻酔で腰の骨に針を刺して採ります。
その後の貧血を軽くするため、採取のI~3週間前に、自分の血液を400~800ミリリットル採血して冷蔵保管しておきます。
 
2011年からは、血液中の造血幹細胞を利用する(末梢血幹細胞」の移植も始まりました。
血液中の造血幹細胞は少ないので、まず3~4日間かけて「G-CSF」という薬を注射し、幹細胞を増やします。
その後、腕から血液を採り、幹細胞を選んでから残りの血液を体に戻します。
薬の注射から血液の採取まで、1週間ほど入院する場合が多いです。
  
「骨髄採取」か「末梢血採取」かは、患者の状態やドナーの希望によって選びます。
    
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少子高齢化で新しいドナーの登録は年々減少傾向にあります。

日本骨髄バンクよると、ドナーは16年9月末現在で、46万5255人です。
新しいドナーは毎年2万~3万人登録されますが、年齢制限や、生活習慣病など健康上の理由で毎年約2万人が引退しています。
15年末時点の登録者で最も多い年齢は40代。
高齢化や健康上の問題で提供が難しくなる人も多く、毎年引退する人数は年々増えています。
 
また、HLA型が合うドナー候補者が見つかっても、実際に患者に移植される例は半分にとどまります。
ドナー候補者が妊娠中だったり、健康状態がよくなかったり、仕事の都合がつかなかったり、などの理由で提供に至らないことが多いのです。
 
骨髄バンクは、若い人への呼びかけや、登録したまま長く採取に至らないドナーに、意思を持ち続けてもらう努力も必要となります。 


骨髄バンクは(2016年)4月から、ドナー登録者にiPS細胞を備蓄する京都大学の研究へ協力を呼びかけています。
HLA型によっては多くの人に使えるiPS細胞が作れる可能性があるそうです。
骨髄バンクに集まったドナーの思いやりの気持ちが、最新の研究にも生かされています。 

 
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参考・引用
朝日新聞・朝刊 2016.11.12